フリーアナ・石井亮次…娘2人に飼い主「試験」

我が家のアイドル、雑種の「ルル」(メス)。2019年1月1日が誕生日で、3歳になりました。実は、この誕生日は勝手に定めたもの。捨て犬なので、いつ生まれたのか、本人(本犬?)が話さない限り誰にも分かりません。

「石井くん、犬、飼わないの?」。ある時、僕が司会を務める情報番組「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」のレギュラーだった、ジャーナリスト・山路徹さんにそう聞かれたことが全ての始まりでした。山路さんは、犬猫の保護活動に携わっています。僕は「いやいや、うちはマンションだから無理です」と答えたものの、長女と次女に尋ねると「飼いたい!」と目を輝かせたのです。

犬の寿命は約15年といわれ、飼い主にはペットがその命を終えるまで適切に飼う責任が伴います。「15年間、ちゃんと世話できるんか? 朝も起きへんのに、散歩なんか連れて行けるんか?」。僕は、娘たちに覚悟を問いただしました。

そして、娘たちに実施したのが「適性試験」です。朝6時に散歩に行けるように身支度を整えられるか、そしてそれを1週間続けられるかを試しました。

すると、当時小学5年生だった長女も、小学1年生だった次女も自主的に起床したのには驚きました。「パパー、準備できたー」。まだ寝ぼけ眼な僕の横に、きちんと着替えて、リードのようなひもまで持った娘たちが立っています。2人はそれを1週間こなし、試験に合格しました。

石井さんと愛犬のルル
「石井家の『三女』として暮らすルル。一生嫁入りはしない娘です」(名古屋市で) ◎林陽一撮影

山路さんに犬を飼育したい意思を伝えると、まもなくして「香川県の山中で、生後1か月ぐらいの子犬5匹が保護された」と写真が送られてきました。僕は大阪生まれ、大阪育ちですが、本籍地は香川。不思議な縁を感じました。

合議制で決めるのが石井家のルールです。どの子犬がいいか5匹が写った写真を見ながら話し合い、1人2票ずつ投票。その結果、真ん中にいた真っ白い、フワフワした子犬に決めました。それがルルです。

そして、忘れもしません、19年3月3日に住まいのある名古屋から車を走らせ、ワクワクしながら横浜まで引き取りに行きました。ルルは香川から飛行機で運ばれ、山路さんが活動する横浜の保護施設に身を寄せていました。

3月3日、桃の節句、ルルはメス。これまた運命的なものを感じます。こうしてルルは石井家の「三女」になりました。

ルル命名 家族投票で 

「ルル」を飼うにあたって、飼い主にふさわしいか娘2人に「適性試験」を実施しました。それと並行して、犬を飼うことによる良い点、大変な点を家族4人で出し合い、飼うかどうかを決めました。重要なことは話し合うのが石井家のルールです。

その時の記録を見返すと、犬を飼うことの良さはこう書いてあります。日常が楽しくなる、生き物の尊さや命の大切さがわかる、姉妹の絆が深まる、5人家族になる、犬の保護ができる(ルルは捨て犬でした)、散歩をするので外に出るようになる、運動になる、寂しくない、癒やされる――。

石井亮次さんと愛犬のルル
「以前ルルが壁紙をかんでボロボロになり、リフォームすることに。まさかの出費でした!」(名古屋市で) ◎林陽一撮影

犬を飼うと大変なことは、こんな感じです。トイレのしつけが大変、部屋が臭くなるかもしれない、毎日散歩に連れて行かなければならない、餌代がかかる、動物病院代がかかる、ペットホテル代がかかる、エアコン代がかかる――。

おいおい、お金のことばっかり気にして、ケチな家族みたいやないかい(笑)! そうツッコミたくなりますが、確かに犬のほうが猫より飼育費用がかかるといわれています。こんなふうにつらつらと並べましたが、実際にルルを迎えると、プラス面が多いと感じる今日この頃です。

そして、メモは「犬が15年生きたら、長女は26歳、次女は22歳、ママは54歳、パパは57歳。世話をする覚悟はちゃんとあるのか、みんなで話し合おう」と結ばれています。娘たちは動物が好きで、ペットショップでかわいいなと思いながら犬や猫を眺めていたことはありますが、我が家でペットを飼うのは初めて。なので、きちんと共通認識を持つことが大切でした。

名付ける時も話し合いのルールを発動し、合議制で決定しました。まず、ひとり二つずつ、計八つの名前を出し合いました。それで、ひとり複数票持ち、自分が提案した名前以外でいいと思うものに投票しました。

投票の結果は「ルル」が9票、「モモ」が7票、「アイ」が5票、「ピノ」が3票。こうして、次女(当時小学1年生)発案の「ルル」になりました。次女いわく、ルルにしたのは「かわいいから」ということです。僕は「アイ」を提案しましたが、ルルという名前は呼びやすくて、なかなか気に入っています。

周りからは「風邪薬みたいな名前だね」とよく言われます。その時、僕は、出勤時に見送ってくれるルル、家族が帰ってくる度に真っ先に出迎えてくれるルル、娘が泣くと頬をなめて慰めてくれるルルを思い浮かべながら、決まってこう返答します。「風邪薬というか、我が家の心の薬、安定剤になっているよ」ってね。

番組と犬 切ない思い出

「ルル」は、僕にとっては初めて飼う犬。小学生の時は、リスを飼っていました。漫画「忍者ハットリくん」のキャラクター「ケムマキ ケムゾウ」から「リスマキ」と命名。カーペットの下にヒマワリの種をへそくりみたいに隠して、かわいかったです。

中学生の時に仲間入りしたのが、メス猫の「タラ」。近所で生まれてもらった猫で、結構長生きしました。

犬とはご縁がないわけではありません。CBCテレビ(名古屋市)に入社して3年目の春、東海3県で始まった朝の情報番組「グッデイCBC」のMCを担当することになりました。番組のアシスタントに就任したのが、雑種の保護犬です。名前は視聴者さんから公募し、番組タイトルのグッデイを日本語にした「好日」などから「よしび」と名付けられました。

石井亮次さんと愛犬のルル
「ルルが好きな人の順位は1位が妻、2位が長女、3位が次女。僕は4位(笑)」(名古屋市で) ◎林陽一撮影

最初はマスコット犬のように僕の隣にいましたが、どんどん大きくなって放送中にほえたり、ウロウロしたり……。放送開始から半年たった時、当時のプロデューサーが「よしびは卒業」と決断しました。その時、僕は初めて上司にたてつき「ちょっと待ってください。毎日よしびを楽しみにしている視聴者さんも多いです」と反論しました。

「石井くん、そうじゃない。よしび卒業か、君が卒業かの選択だ」。「お、おぉ……」。僕は、プロデューサーの言葉に何も言い返せませんでした。よしび卒業から半年後、番組は放送終了。放送開始から1年でグッデイCBCはグッバイ、ということです。

僕はよしびをかわいがっていましたが、犬の飼育歴がある視聴者さんには、僕が犬の扱いに慣れていないことがバレていたようです。「石井さん、犬におっかなびっくりだ」。そう指摘されたこともあります。

ルルを飼い始めて、まもなく3年。今は、散歩中に出会ったほかの犬とも自然にふれあえるようになりました。その際「テレビ見たよ」と声をかけてくれる方もいて、ありがたいです。

あれよあれよという間に大きくなったよしびですが、それはルルも同じ。ルルは13キロの中型犬で、我が家のようなマンション(ペット可)ではなく、庭付きの一軒家が似合うサイズ感です。ルルを紹介してくれたジャーナリスト、山路徹さんは「犬は家の大きさに合わせて成長する」なんて話していましたが、“都市伝説”でした(笑)。どのぐらい大きくなるか、はっきり読めないのは雑種犬の面白い点でもあります。

ところで、よしびはその後どうなったか。ペットシッターさんの家で幸せに暮らし、3年ぐらい前に天国へ。今だったら、よしびとどんなふうにふれあえるのかな。

散歩中に人生の決断

我が家の「ルル」は散歩が大好きで、「散歩」という単語もインプットされているほどです。例えば、既に散歩は済んだのに僕が「もう散歩行った?」と家族に尋ねると、ルルはまた出かけられると勘違い。それが気の毒で、「ポンサ」と言うようになりました。ポンサもそろそろ覚えているので、近頃はサッカーチーム名のように「ポンサドーレ」と新たな隠語が登場しています。

散歩は飼い主にとっても貴重な時間です。子育てしていると、夫婦だけの時間は意外に少ない。妻と2人で散歩に行くと、その30~40分間で娘たちの前ではなかなか難しい、機微に触れる話が出来ます。

「ルルが飽きないよう、複数の散歩コースを設定しています」(名古屋市で) ◎林陽一撮影

僕は、長年お世話になったCBCテレビ(名古屋市)を2020年に退社してフリーになりましたが、その相談も散歩の時でした。「人生一度きり。挑戦したらいい」。妻はそう言って、僕の背中を押してくれました。その瞬間にもルルは立ち会っています。フリーになって以降も楽しく過ごせており、まさにルルは幸せを運ぶ白い犬です。

そう考えると、犬は傾聴の達人。反論も他言もせず、そっと寄り添ってくれます。そして、ルルが一番家族の秘密を知っているでしょう。ある日「我が輩は犬である……」なんて話し出したら、家族の秘密や悩みを暴露してしまうかもしれません。

ルルは家族の話を聞くほか、心の隙間を埋めたり、癒やしたり。ルルがいることで、家族が自然にリビングに集まるようになっているのも確かです。

石井家の家訓として「人の嫌がることはしない」「愚痴と自慢は家でだけ」「あいさつは絶対に!」などを掲げていますが、ルルはみんなが嫌がることはしなければ、愚痴や自慢とも無縁です。散歩中にほかの犬が歩いてきたら、伏せをして待っています。これはルルなりのあいさつということで、ルルは家訓もしっかり守っているようですね。

一方、ルルが駆け回るので、我が家の廊下は傷だらけになってしまいました。まさに「傷だらけの廊下(ローラ)」。こんなふうに少し大変なこともありますが、傷の数だけ家族との絆が深まっている……と理解しています。

長女(中学2年生)と次女(小学4年生)はこれから進学、就職、結婚など人生の大きな節目を迎え、悩むこともあるでしょう。そうした時、ルルの存在に救われること、間違いなし。また、将来彼氏を連れてきた際、ルルとも仲良くなれたら、疑いなくいい男!?(笑) そんなリトマス試験紙的な役割にも期待しつつ、ルルの任務はまだまだ続きます。(フリーアナウンサー)(おわり)

(このコラムは、読売新聞で1月、2月に掲載されたものをまとめて再掲載しています。)

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石井 亮次(いしい・りょうじ)
フリーアナウンサー

1977年、大阪府生まれ。2000年にCBCテレビ(名古屋市)に入社し、20年からフリー。TBS系の情報番組「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」のMCを担当。新著「ゴゴスマ石井のなぜか得する話し方 誰からも好かれる会話のコツ」(ダイヤモンド社)が発売中。

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