義理の母への贈り物は悩ましいものです。一歩間違えば、“嫁姑戦争”につながりかねません。読売新聞の運営する掲示板サイト「発言小町」には、「嫁から菊の花束」というタイトルで息子夫婦からの贈り物に怒り心頭の女性から投稿が寄せられました。
投稿した「りんこ」さんは、男の子2人を女手ひとつで育てたシングルマザー。今は、2人とも成人。1人は結婚して昨年春に待望の初孫も誕生しました。ただ、コロナ禍でなかなか会うことができず、年末年始の帰省を楽しみにしていたところ、息子さんから「今年は嫁の実家で不幸があったし、トラブル続きでいつ連絡が来るかわからない。嫁も育児ノイローゼ気味だから帰省できない」と連絡が入ったそう。
「のんきにSNSとは恥を知れ」
渋々承知したものの、その後、「お嫁さん」のSNSで「(喪中で)年賀状での挨拶が出来ないから……」とかわいらしい服を着せた孫の写真がアップされているのを発見。つい電話して「そちらの事情を鑑みて帰省しないのを許したのに、のんきにSNSとは恥を知れ!!」とお嫁さんに文句を言ってしまったというのです。

途中で息子さんが電話に代わって出るなどし、2人から「そのうち時間を作って必ず帰省するから」「母さんも誕生日だったよね。今回のお詫びを兼ねたプレゼントを贈るから」などとなだめられ、気持ちをおさめて電話を切ったそう。ところが、後日届いたプレゼントは白と黄色の菊の花束。「こんな最低な嫁がいますか!? この怒りをどうすればいいでしょうか?」と憤懣やるかたない思いで「発言小町」に書き込みました。
この投稿には280件を超す反響(レス)がありました。
「菊の花束は酷い」「意味わかってる?」
白い菊の花と聞くと、仏壇などに供える花というイメージがあります。
「菊の花束は酷い」というのは「カメリア」さん。「送られてきた菊の花束にお怒りになるのは当然です。まるでドラマの嫁姑戦争をそのまま再現したかのような、正直信じられません。どういうつもりの菊なのか、私なら本人に喧嘩上等とばかりに問い詰めているでしょう」とつづります。
「お玉さん」は、「お孫さんに会えなかったのは誠に残念ですが、再びコロナ感染拡大の今、同じ思いをした祖父母は全国にいくらでもいます。その花のセレクト、もしや手配は息子さんだったかもしれませんね。息子さんご夫婦。菊が慶事にふさわしくないとご存じないのではありませんか」と言います。
一方で、トピ主さんに冷静さを求めつつ、菊の花の最新事情を伝えるコメントも。
「『揉め事の原因は全て嫁にある!』と興奮していたら、収まるものも収まらないですよ」といさめるのは、「沙羅双樹」さん。「欠礼のお知らせを兼ねてSNSでだけご挨拶、なんてよくあるお話ですし、『のんきにSNSとは恥を知れ!』なんて声を荒らげるほどのことでもないです。菊の花束も、今では菊の別名の「マム(クリサンセマムの略称)」で花屋に並んでいますし、華やかな品種なら人に贈るものとしても認められつつあります」と指摘します。
「菊はいま流行っているんですよ。お正月だから和の雰囲気のある花を、と思ったのかもしれませんね。菊には鎮静効果がありますから、清らかな香りをかいで、怒りすぎちゃったことを思い直してみてはいかが」(「nene」さん)という書き込みもありました。
花を贈るときのタブーは?

花を贈るときに気をつけたいことについて、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんに聞きました。西出さんは「マナーは相手や状況によって変わってくるもので、これが正しい、あれはまちがっている、と決まった答えがあるわけではありません。相手だったらどう思うかを考え、行動することに尽きます」と話します。
花を贈るときに気をつけたいポイントは4つ。
<1> 花言葉を調べておく
<2> 相手の好みを尊重する
<3> 渡す場所などの状況を把握する(自宅に送るのか、手渡しなのかなど、その状況に応じて、大きさや香り、葉っぱ、土、とげなどへの配慮が必要)
<4> わからないことは花屋さんに相談する
など、ほんのひと手間をかけることで、行き違いを防ぐことができるそうです。
「今回のケースは、息子さんが、自分の母親はどんなことを気にする人かを把握し、それに配慮することが大切だったと感じます。自身の奥さんのことを『なんて非常識な』『最低な』と思われないためにも、とくにお母さんが好きなお花でもない限り、このタイミングでの菊の花束は避けたほうがよかったかもしれませんね。菊の花というと、供花を連想なさる方もいらっしゃいます。スーパーなどでも仏花として束になっているのをよく見かけます。一方で、孫を連れて帰省できないという話とSNSの話は別問題。マナーはお互い様です。親の側でも、相手のことを思いやる気持ちは必要だと思います」と西出さんは話します。
発言小町に投稿した「りんこ」さんは、その後、「菊はスプレーマムと、大きなものと合わせて束にされていました」と投稿しており、仏花ではなかった様子。さまざまな人の意見を受けて、自分の心境を「私はとても寂しかったのだと実感しました」と振り返っています。そして「今慌てて詫びをしようにも、きっと私からの連絡など嫌悪しかないでしょうね……息子にだけ、一言二言で伝えようと思います」とも。
西出さんは、「ご自身と向き合い、寂しかったという素直な気持ちを表現し、お詫びをしようとする姿勢は、素晴らしいですね。息子さんやお嫁さんに、ぜひその正直なお気持ちを伝えられたら すてき です。きっと円満に今後の関係にプラスになることでしょう。贈り物は双方がハッピーな気持ちになるために贈るもの。今回の件で今まで知り得なかった相手のことがわかりました。誰にでも知らないことや勘違いやミスなどはあります。そういう時には、お詫びと感謝を伝え合うことで美しい人間関係が構築されていきますね」と話しています。
(読売新聞メディア局 永原香代子)
【紹介したトピ】
▽嫁から菊の花束