誕生石に追加の「モルガナイト」「スフェーン」「スピネル」とは?

4月はダイヤモンド、5月はエメラルド、7月はルビー、9月はサファイア――。女性なら誰もが知っている誕生石。2021年12月、全国宝石卸商協同組合(東京都千代田区)は、誕生石を63年ぶりに増やすことを発表しました。宝石業界ではコロナ禍で売り上げが低迷していますが、改定により売り上げが数倍に伸びた宝石もあり、盛り上がりを見せています。誕生石について探りました。

63年ぶり改定の理由

新型コロナウイルスなどの影響で宝飾品の売り上げは大幅に減っています。同組合の常任理事で誕生石委員会委員長の望月英樹さんは、「コロナ禍で外出する機会が減り、ジュエリーで着飾る必要もなくなってしまった」とため息をもらします。

市場調査を行う矢野経済研究所(東京都中野区)によると、バブル期のピークだった約30年前には、3兆円を超えていた国内の宝飾品の市場は、リーマン・ショックなどの影響で1兆円を割り込み、2020年は約8000億円にまで落ち込んでいます。

そこで宝石業界を盛り上げるため、望月さんを中心に立案・企画したのが誕生石の改定でした。

組合は1958年(昭和33年)にアメリカの宝石業界が定めた誕生石をベースに、日本独自に19石を誕生石として定めました。

望月さんらは、新しく追加する誕生石について、〈1〉硬さ〈2〉流通量〈3〉誕生月にふさわしい理由――の三つを基準とし、30石を選定。そこから約2年かけ、一般社団法人日本ジュエリー協会(JJA)などとも協議を重ねたうえで、10石を追加することにしました。

4月の日本にぴったりな宝石「モルガナイト」

今回追加された誕生石を一部紹介します。

2月:クリソベリル・キャッツ・アイ

鉱物名クリソベリル(金緑石)のキャッツ・アイ効果を持つ宝石。和名では「猫目石」として非常に有名です。日本で2月22日を「猫の日」、またヨーロッパの多くの国が2月17日を「World Cat Day(世界猫の日)」としています。猫に関連していることと、数あるキャッツ・アイの中でもクリソベルは特に美しい目の模様がでるため、「目が出る(芽が出る)」として、2月の誕生石としました。

3月:アイオライト

名前は、ギリシャ語のios(紫色)とlithos(石)に由来しています。強い3色の多色性があり、方向により青紫色、灰黄色、淡青色がみられます。菫青石きんせいせき(コーディエライト)の青色の変種であるアイオライトは鉱物などの硬さを示すモース硬度も7−7.5と高く、とてもきれいな宝石です。コーディエライトの名前の由来である地質学者ピエール・ルイ・アントワーヌ・コーディエの誕生月が3月であることから、3月の誕生石となりました。

誕生石が63年ぶりに改定。上段:左から2月クリソベリル・キャッツ・アイ、3月アイオライト、3月ブラッドストーン、4月モルガナイト、6月アレキサンドライト、7月スフェーン、8月スピネル、9月クンツァイト、12月ジルコン、12月タンザナイト(全国宝石卸商協同組合より)
上段:左から2月クリソベリル・キャッツ・アイ、3月アイオライト、3月ブラッドストーン、4月モルガナイト、6月アレキサンドライト
下段:左から7月スフェーン、8月スピネル、9月クンツァイト、12月ジルコン、12月タンザナイト(全国宝石卸商協同組合より)
4月:モルガナイト

ピンク色から淡紫色の色合いを持つ宝石です。ペグマタイト鉱床で産出され、無傷で大粒の石が産出されています。1911年にアメリカのモルガン財閥の創始者であるジョン・ピアポント・モルガンにちなんで名付けられました。彼の誕生月が4月であることと、日本を代表する桜の花の色合いを持ち合わせていることから、4月の誕生石となりました。

7月:スフェーン

結晶の形がくさび状になるためギリシャ語の「くさび」を意味するスフェノス(sphenos)に由来し、和名ではくさび石と呼ばれています。屈折率が高く、多色性も強いためカットされると非常に魅力的。特に緑色のスフェーンは鮮やかで美しいです。1787年にマーク・オーガスト・ピクテによって新種の鉱物として初めて認識され、彼の誕生月であることと、輝きが強く日本の夏の森のような色合いを持つことから、7月の誕生石となりました。

8月:スピネル

ルビーやサファイアと外観が似ており、産出場所も同じため古くから混同されてきました。結晶の先端がとがっていることから、トゲを意味するラテン語に由来し、和名でも尖晶せんしょう石と呼ばれています。色は赤色、ピンク色、紫色、青色などがあり、近年人気の宝石です。

歴史の浅い宝石も仲間入り

新たに追加された宝石

誕生石が追加されたにもかかわらず、1月はガーネットしかない理由について、望月さんは「残念ながら、宝石の発見者・命名者に1月生まれがいなかったことと、妥当な宝石がなかったため。ただ、ガーネットは近年ではカラーバリエーションの多さでも知られていて、とても人気な石」と説明しています。

12月の誕生石として新たに追加された「タンザナイト」は1967年に東アフリカのタンザニアで発見された歴史の浅い宝石です。4月のモルガナイトも約100年前に発見されており、今回の改定で、あまり知られていない宝石にスポットライトがあたることが期待されます。

望月さんによると、今回の改定により、例えばモルガナイトの売り上げは以前の5倍に伸びたといいます。「自分の誕生石を知らない女性はいないのではないでしょうか。誕生石の選択肢が増えたのはコロナ禍の中でも明るいニュースだと思います。宝石にまつわるエピソードも面白いものがたくさんあるので、改定をきっかけに、宝石に興味を持っていただけたらうれしいです」と話しています。(読売新聞メディア局 渡辺友理)

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