スピルバーグが挑むミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」

1957年に初演された米ブロードウェー・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」を、スティーブン・スピルバーグ監督が新たに映画化した。50年代後半、ニューヨークのスラム街。ポーランド系移民の不良グループ「ジェッツ」元リーダーのトニー(アンセル・エルゴート)は、敵対するプエルトリコ系「シャークス」リーダーの妹マリア(レイチェル・ゼグラー)と許されない恋に落ちる。

ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス両監督が手がけた映画「ウエスト・サイド物語」(61年)は、アカデミー賞10冠に輝いた名作。だが、約60年たち、ミュージカルを映画にするための演出や撮影技術は進化した。映画を知り尽くした巨匠による“最新版”を味わえるのは幸せだ。

本作は「ストリート」が陰の主役。歌、ダンスシーンの多くはスタジオの外で展開する。筆頭がプエルトリコの男女の群舞「アメリカ」。シャークスリーダー、ベルナルドや恋人アニータ(アリアナ・デボーズ)らが、人波をかき分け数ブロックを疾風のごとく駆け抜ける。

映画「ウエスト・サイド・ストーリー」
(c) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

スピルバーグ作品に欠かせない、撮影監督ヤヌス・カミンスキーによる流麗なカメラワークが、躍動する肢体を臨場感たっぷりに映す。その絶頂は、大人も子供も飛び出し、興奮のるつぼと化した交差点を俯瞰ふかんするショット。スクリーンから迫り来るダイナミズムに歓声を上げたくなる。

移民の歴史を反映させたドラマも深化した。新住民のシャークスは、差別と闘い成功を夢見る。ジェッツは、貧しい移民3世としてただ暮らすほかない。脚本を手がけた劇作家トニー・クシュナーは、両者の違いを鮮明にしつつ、生い立ちや境遇を掘り下げ、彼らに「人生」を与えた。トニーは、ケンカ相手に傷を負わせて服役し、刑務所を出たばかり。ベルナルドは有望なボクサー――というように。

ジェッツリーダーのリフ(マイク・ファイスト)は、カリスマ性を持つ一方でもろさものぞかせ、離れていく幼なじみトニーの心をつなぎ留めようともがく。シャークスとの決闘の場、死の間際にトニーだけを見つめる。泣き笑いのような表情のクローズアップと最期のセリフ。ファイストの繊細な演技で、胸を打つ名シーンになっている。

しかし、時を経た最大の変化は、米映画界が多様性を獲得したことだろう。シャークスには、顔をメイクで塗った白人ではなく、全てプエルトリコ系の俳優が起用された。いまようやく、この物語が描く“真実”にハリウッドが追いついた。

(読売新聞文化部 山田恵美)

ウエスト・サイド・ストーリー (米)2時間37分。TOHOシネマズ日比谷など。11日から。

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