左利きに配慮した商品がSNSで高評価

「左利きは10人に1人」と言われる。右利きが多数の社会で、左利きは肩身の狭い思いをしてきた。利き手に関係なく使いやすい商品が開発されるなど、配慮が広がってきた。最近の左利き事情を調べてみた。

コーンフレーク袋に工夫

「シスコーンBIG」の袋の写真。利き手に応じて注ぎやすくする目印が付いている
「シスコーンBIG」の袋には、利き手に応じて注ぎやすくする目印が付いている

「左利きの人にも優しかった」――。昨年、ツイッターでこんな賛辞が飛び交っていたのは、日清シスコの袋入りコーンフレーク「シスコーンBIG」。利き手がどちらでも、パッケージの表面を見て中身を器に注げるよう改良されている。袋の四隅に目印を付け、左利きなら右手で右上の青丸、左手で左下の青丸を持つよう促している。

中心ターゲットは子どもで、ブランドマネジャーの石田晃三さんは「利き手に関係なく、子どもが自分で朝食を用意する成功体験をしてもらうために考案した」と話す。

2018年の発売時はさほど注目されなかったが、感謝のツイートがきっかけで話題になった。石田さんは「特定の人に不便が生じないような商品を届けることは一層重要になってくる」と語る。

利き手は世界的にも右利きが多数。日本では古くから、左利きは右利きに変えられていた。しかし、最近は一つの個性として左利きのまま育てることも多い。筆記具大手のゼブラが16年に行った調査では、右利きに変えた経験がある人は50代は18%だったが、20代は13%にとどまる。

ペン習字、左利き用の教材を開発

筆記でも左利きへの配慮がみられる。「日本ペン習字研究会(日ペン)」を運営する学文社は昨年、ボールペン習字の通信講座のために左利き用の教材を開発した。

「日ペン」の従来の教材(右)は手本の文字が左側にあるが、左利き用教材は手本を右側に配置
「日ペン」の従来の教材(右)は手本の文字が左側にあるが、左利き用教材は手本を右側に配置

ぺージ中の手本の文字を右側に配置し、左手でペンを持っても手本が隠れないようにした。テキストを開く方向も右開き。左利きで書きづらい「ゆ」「の」「あ」など丸みがある文字の練習用のシートも用意した。

脳内科医の加藤俊徳さんは、幼少期に利き手を変える弊害を訴える。自身も左利きで、4歳の時に右手で習字を習ったところ、うまく言葉が出なくなったという。「乳幼児期に利き手を決める強い要因は遺伝。無理な変更は子どもに混乱を来す」と指摘する。

変更で左右の認知に支障が出たり、 吃音きつおんになったりする恐れもあるという。加藤さんは「利き手の変更を考える場合、脳の言語をつかさどる部分がある程度発達した10歳過ぎからが望ましい」と話す。

左右どちらにつけるかを設定するスマートウォッチ
左右どちらにつけるかを設定するスマートウォッチ

利き手に縛られない使い方が可能なのがスマートウォッチだ。時計は通常、利き手に関係なく左手首につけるが、左右どちらにつけても便利なように設定できる製品もある。駅の自動改札機はICカード接触部分が右側にあるため、電子決済ができるスマートウォッチを使いやすいよう、右手首につける人もいる。

左利きへの理解を深める活動を続ける「日本左利き協会」の大路直哉さんは「時代とともに左利きの個性が認められるようになってきた。人には様々な個性があり、多様な社会を実現することを利き手から考えてみては」と話す。

障害で片方しか使えない人も

利き手の問題ではなく、体の障害で片方の手しか使えない人もいる。東日本ではエスカレーターの右側を空ける慣習が定着しているが、左半身にマヒなどの障害がある人は右側に立たざるを得ない。

横浜市の石川敏一さん(77)は40歳で脳卒中になり、左半身が不自由だ。以前、東京都内の駅でエスカレーターの右側に立っていた時、後ろから来た人に「邪魔だ」と言われ、無理やり追い越された経験がある。

エスカレーターでの事故を防ぐため、埼玉県は昨年10月、立ち止まって利用するよう努力義務を課した条例を施行した。石川さんは「一歩前進だが、全国的に広がらないと危険なままだ」と話す。

実験でエスカレーターの両側に足跡の目印を付けると、歩く人が減る効果が見られた(東京都港区の六本木ヒルズで、新田さん提供)
実験でエスカレーターの両側に足跡の目印を付けると、歩く人が減る効果が見られた(東京都港区の六本木ヒルズで、新田さん提供)

文京学院大教授(マーケティング)の新田都志子さんが、2019年にエスカレーターの階段に足跡をつける実験を行ったところ、足跡の上で立ち止まる人が増え、歩く人が半減したという。新田さんは「両側に乗ったほうが多くの人を効率的に輸送できる。自分のことだけではなく、みんなの便利を考えてほしい」と話している。

私は右利きだが、左利きを特に意識するのが趣味のテニス。左利きの人のボールは回転が異なるので戸惑う。スポーツでは少数派ゆえに有利な左利きがうらやましかったが、普段の苦労に気づいた。(読売新聞生活部 福島憲佑)

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