妊娠から出産、育児までを継続支援。先進自治体を紹介

家族ら周囲の支えが得られず、精神的、経済的な不安を抱える妊婦が珍しくないことが、読売新聞の全国調査から浮き彫りになった。安心して出産や育児ができるように、妊娠期から支援に力を注ぐ自治体の取り組みを伝える。

精神的、経済的不安を抱える妊婦だけでなく、すべての妊婦のサポートに軸足を置く自治体もある。

助産師が全員を訪問…「安心感がある。ありがたい」

「心配なことはありますか」

1月中旬、山梨県山梨市の妊婦(37)の自宅を訪ねた助産師の広瀬美香さんが、優しく尋ねた。妊婦は「夫は海外赴任中。両親の手を借りるが、6歳の長女と赤ちゃんの世話をできるか……」と話した。広瀬さんは赤ちゃん連れで過ごせる施設などを紹介。「いつでも連絡して」とほほ笑んだ。

山梨県山梨市の委託で、市内の妊婦の自宅を訪ね、健康状態や心配ごとを聞く、助産師の広瀬美香さん(奧)
山梨県山梨市の委託で、市内の妊婦の自宅を訪ね、健康状態や心配ごとを聞く、助産師の広瀬美香さん(奧)=提供写真

妊婦は「この先、何か困ったら相談できるという安心感がある。ありがたい」と話す。同市は2005年から、助産師らが、原則市内のすべての妊婦の自宅を訪問している。妊娠16週以降の妊婦を対象に、健康状態を確認し、不安に耳を傾ける。同市健康増進課長の矢崎貴恵さんは「妊娠期からすべての親と顔の見える関係を築き、『助けを求めていい』と思ってもらうことが重要」と指摘する。全妊婦を訪問することで支援の網の目がより細かくなり、「課題を早期に発見でき、児童虐待防止にもなる」と語る。

同市では、妊娠の届け出は予約制で、必ず保健師が妊婦と面談する。面談時に「結婚予定」と話したある妊婦が、自宅を訪問すると、未婚で一人で出産すると判明し、市の保健師らが出産準備や母子家庭向けの支援を紹介できた例もあったという。

同じ助産師が妊娠から出産、育児を継続支援

兵庫県丹波篠山市は20年8月、同じ助産師が「My助産師」として、妊娠期から出産、育児期まで継続して妊婦に寄り添う事業を始めた。妊娠を届け出た時と妊娠中、産後の計4回、「My助産師」と1対1で、出産や赤ちゃんの世話の仕方について教わり、悩みの相談もできる。

同市保健福祉部長の山下好子さんは「どんな妊婦も前向きに、自信を持って出産に臨めるように支えたい」と話す。

千葉県柏市は17年、妊娠届の提出窓口を10か所から4か所に絞った。提出時に保健師や助産師が全ての妊婦と面談できるようにするためだ。

同市地域保健課専門監の星裕子さんは「専門職の人数には限りがある。窓口が多い利便性より、妊婦の不安をもらさず把握できる体制を重視した」と語る。

妊婦期からの継続支援…全国的には少数

妊娠期から子育て期の切れ目ない施策の実施は、19年に施行された法律で国や自治体の責務と明記された。ただ、具体的な内容は、主に自治体に委ねられる。妊婦全員を対象にした支援の取り組みは、全国的にまだ少ない。

東邦大教授の福島富士子さん(母子保健政策)は「自治体は、妊娠届の提出時やその後の連絡・訪問を通じて妊婦の不安をすくい上げることが重要。妊娠期からの継続的な支援には、医療機関や地域の助産師との連携のほか、妊婦らの悩みに寄り添う相談員の養成も必要だ」と指摘する。(読売新聞生活部 矢子奈穂、木引美穂)

<1月29日付読売新聞朝刊掲載>

届け出時に面談、97自治体
  • 読売新聞が昨年11~12月に計109自治体に実施した調査(有効回答98自治体)では、97自治体が、妊娠届の提出時に保健師などの専門職員が妊婦と面談し、支援の必要性を判断していた。
  • 判断基準は全国統一ではないため、各自治体が支援対象とした妊婦の割合は73%~1%未満とばらつきが目立った。「妊娠を届け出る窓口のすべてには保健師などの専門職がおらず、支援の必要な妊婦を把握しきれていない可能性がある」とした自治体もあった。
  • 「全国統一の基準がないため、他自治体に転居した妊婦が支援対象から漏れる場合がある」「妊娠届のオンライン申請が広がると面談が難しくなる」という声もあった。

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