出産費用の助成に地域差…ヨーロッパは保険適用も

家族ら周囲の支えが得られず、精神的、経済的な不安を抱える妊婦が珍しくないことが、読売新聞の全国調査から浮き彫りになった。安心して出産や育児ができるように、妊娠期から支援に力を注ぐ自治体の取り組みを伝える。

補助はあるけど…出産費用は「自腹」

「妊婦健診や出産費用の負担をもっと軽くしてほしい」

長女(3)と長男(1)を育てる東京都内の母親(37)は話す。共働きで、この母親は非正規雇用の事務職員として働く。時給制で、長男を妊娠中につわりなどで仕事を休むと、その分給料が減った。

都内の病院で妊婦健診を受けたが、自治体から補助される受診券だけでは賄えず、毎回3000円以上の自己負担が生じた。出産費用も健康保険組合が支給する一時金では足りずに約30万円を自分で払った。「子どもを産みたい人が安心して出産できる社会とはいえない」と訴える。

妊婦健診や出産の費用は保険対象外

妊婦健診や出産の費用は、病院が自由に決められる自由診療にあたる。妊娠や出産は「病気」ではなく、正常な出産は公的医療保険の対象外だからだ。

厚生労働省は安全な出産のため、「妊娠中の健診は14回程度必要」とし、「費用は市区町村が負担する」と基準を示す。国から財政支援はあるが、どの程度助成するかは、自治体によって異なる。そのため、妊婦の自己負担が10万円を超えるケースも多い。

また、出産費用は、健康保険組合や国民健康保険などから「出産育児一時金」として原則42万円が支給される。同省によると、2019年度の正常な出産費用の全国平均額は約46万円で一時金の額を上回る。同省の有識者会議では、出産費用は地域差が大きく、首都圏を中心に一時金だけでは足りない現状が課題として指摘されている。

助成額が全国平均を上回る自治体も

妊婦の経済的負担を軽減しようと取り組む自治体もある。

石川県は県医師会と、県内の医療機関の健診費用を一律にする契約を締結。全市町で、基本的に受診券で妊婦健診の費用が賄える。同省の18年の調査によると、県内の受診券の助成額は平均約13万7000円で、全国平均の10万5734円を大きく上回る。

同県加賀市ではさらに、妊娠16週以降の妊婦に「出産準備手当給付」として胎児1人につき1万円を支給するなど手厚い。昨年9月に第3子を出産した会社員敷村真来さん(44)は「お金の心配がなく、安心して産前産後を過ごせた」と話す。

石川県加賀市が渡している受診券の冊子を紹介する市の女性職員
石川県加賀市が渡している受診券の冊子。基本的に妊婦健診を自己負担なく受けられる(同市提供)

市健康課長の小茂出健さんは「妊娠期から経済的な負担を軽減することで少子化対策になり、定住人口の増加も期待できる」と狙いを語る。

茨城県常陸太田市や新潟県糸魚川市などは、妊婦健診が15回以上必要になった場合でも助成がある。栃木県は、歯科治療を含む妊婦の医療費自己負担が、妊娠届を提出した月から出産の翌月末まで最大で月額500円で済む。北海道北広島市は、妊婦健診の交通費として1回1000円の補助が出る。

公益社団法人「母子保健推進会議」会長の佐藤拓代さんは「ヨーロッパでは妊娠や出産に医療保険が適用され、自己負担が少ない国が多い。日本では妊婦健診の費用を支払えずに未受診の妊婦もおり、経済的負担が課題となっている。支援の拡充が必要だ」と指摘している。(読売新聞生活部 矢子奈穂、木引美穂)

<読売新聞1月28日付朝刊掲載>

■妊娠出産に関する主な相談先■
  • ▷経済的困窮、家事支援、育児支援サービス、悩みや不安など  市町村(子育て世代包括支援センター、母子保健・子育て支援の窓口)
  • ▷思いがけない妊娠など  全国妊娠SOSネットワークに各地の相談窓口を掲載
「経済的困窮で健診は受けない」という若い女性も
  • 読売新聞が昨年11~12月に全国109自治体に実施した調査(有効回答98自治体)では、妊婦への経済的な支援が課題ととらえる声もあった。
  • ある自治体の担当者は「お金がないために妊婦健診を受けないという若年女性が目立つ」と打ち明ける。また、別の自治体の担当者は「コロナ禍の影響を受けて収入が減るなど、経済的に困窮している妊婦が増えている」と話す。
  • 妊婦健診や出産だけでなく、産前産後の家事育児支援などのサービスも基本的に自己負担がある。「産前からの切れ目ない支援は無料か低価格で利用できるとよい。産後の支援サービスの需要も高まるが、国の(財政的な)支援が必要」といった意見もあった。

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