「コーダ あいのうた」障害のある家族へ、届け絆の賛歌

タイトル「コーダ あいのうた」の「コーダ」をアルファベットで表記すると「CODA」。これには二つの意味がある。一つは、音楽で楽曲や楽章の終わりを示す記号。もう一つは、「耳の聞こえない親を持つ子供」の英語表記の頭文字を合わせた言葉――。

後者の「コーダ」である少女が、音楽の才能を開花させ、夢に向けて飛躍するみずみずしい青春物語だ。でも、耳の聞こえない両親に育てられたことが、物語に何の影響が?それが大アリなのだ。

片田舎の港町に住む高校生ルビー(エミリア・ジョーンズ)は、4人家族の中で一人だけ耳が聞こえる。彼女は家業の漁業を営む父フランク(トロイ・コッツァー)、兄レオ(ダニエル・デュラント)を手伝ってきた。

新学期、ルビーは憧れのクラスメートと同じ合唱クラブに入ることを決める。そこで、顧問の教師が、彼女のたぐいまれな歌の才能に気づき、地元を離れ、名門バークリー音楽大へ進学することを勧める。

ところが、父も母ジャッキー(マーリー・マトリン)も、「がらっぱち」な性格で、まだまだ子供なルビーの才能なんか信じられない。どこか英国映画「リトル・ダンサー」を思わせる展開だ。そして、家族にとって、彼女は他の健聴者とつながるための重要な「通訳」でもあるのだ。だからルビーも、受験への踏ん切りがつかない。

映画「コーダ あいのうた」
(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS.

彼女の葛藤と、はちきれんばかりの夢への思いが活写される。その構図は青春映画として目新しくないが、演じるジョーンズの、幼さを含んだ表情と伸びやかな表現力が、作品にみずみずしい力を与え、引きつけてやまない。主役の魅力は、かくも重要なのだ。

一体、耳の聞こえない家族にどうやって、彼女の歌のすばらしさを伝えるのだろう。合唱クラブのコンサートで披露した歌が、出席した家族に伝わり、その才能を確信させるシーンにはぐっとくる。彼らには、そうやって歌が届いていたなんて。

本作は仏映画「エール!」のリメイク。シアン・ヘダー監督は「CODA」の子供たちに取材し、家族役の3人には、実際に耳に障害がある俳優を配している。昨年の米サンダンス映画祭で最高賞を含む4冠に輝いた。

だがもちろん、それらは参考情報にすぎない。本作に素直に感動できるのは、リスペクトに満ちているからだ。音楽への、障害がある人への、若い感性への、そして、家族の絆への。それこそが、本作を忘れがたいものにしている。

読売新聞文化部 浅川貴道)

「コーダ あいのうた」(米)1時間52分。TOHOシネマズ日比谷など。公開中。

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