ジュエリーって女性のもの? 展覧会で知るメンズリングの魅力

男性用のリングばかり約400点を集めた展覧会が、東京・六本木の21_21デザインサイトで開かれています。ジュエリーは女性のもの――。そんなふうに思っている人の考えを覆す展示です。

展覧会は、フランスの宝飾ブランド、ヴァン クリーフ&アーペルが支援する「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」が主催。フランスのアンティークディーラーで、2020年に亡くなったイヴ・ガストゥさんの貴重なコレクションを展示しています。パリを代表するギャラリーのオーナーでもあった彼は、オークションやフリーマーケットや、宝石商などから、さまざまな年代、地域の指輪を30年以上にわたり収集してきました。2018年のパリでの初公開を経て、展示は東京に巡回しました。

会場に入ると、「装身具はもっぱら女性のためのものだと聞かされたら、古代から18世紀までの時代を生きた男性たちの多くは驚いたことでしょう」との主催者の言葉が掲げられています。女性が身につけるようになったのは近代のことで、フランス革命の時代から主流になったもの。太古の時代から、男性たちは、所有者の権力や政治的な力を示すために、指輪を身につけてきたそうです。

ヴェネツィア元首の指輪 大手小町 読売新聞
「ヴェネツィア元首(ドージェ)の指輪」 写真:ベンジャミン・チェリー

例えば、17世紀にヴェネツィア元首が身につけていた指輪には、台座を開けるとみつろうを入れておく空洞があり、手紙を封印するシーリングスタンプとしても使えます。これは敵を人知れず暗殺するための毒を隠すことにも使われていたといいます。

ゴールド製でスカル(頭蓋骨)をかたどったカメオがはめ込められた指輪と、スカルの周りに唐草模様が施された合金の指輪は、18世紀後半から19世紀初頭のイギリスのもの。いずれも亡くなった人をしのんで身につける哀悼の指輪で、唐草模様の指輪には、故人の遺髪が入れられています。愛する人の死を悼み、その死を乗り越えるために、こうしたジュエリーが作られたといいます。

英国の哀悼の指輪 メンズリング展 大手小町 読売新聞
「英国の哀悼の指輪」写真:ベンジャミン・チェリー

19世紀末に制作された「オルゴールの指輪」は、当時、楽器を演奏できない人が音楽を聴くための唯一の手段だったオルゴールが組み込まれた希少な指輪です。花のモチーフに隠された歯車を回転させると音が鳴る仕組み。オルゴールは、ジュエリーや腕時計などの宝飾品に取り込まれていったといい、その細やかな造作に職人の高度な技術を感じます。

オルゴールの指輪 「メンズリング」展 読売新聞 大手小町
オルゴールが組み込まれた指輪 写真:ベンジャミン・チェリー

20世紀に入り、男性のファッションが画一化されると、リングは個性を発揮するアイテムに。社会秩序やジェンダーなどへの反乱のシンボルにもなった、バイカーやロッカーらが身につけるリングも並びます。

「メンズリング」に特化したユニークな展覧会 読売新聞 大手小町
芸術家が手がけたもの、大量生産されたものなど幅広いコレクションが並ぶ

指輪に刻まれた歴史、物語

作り手の技術の高さ、装飾の細やかさを堪能できるだけでなく、指輪に刻まれた歴史、所有者の人生や物語、デザインに象徴される時代背景などにまで思いをはせることができる奥深い展示になっています。

(読売新聞メディア局 谷本陽子)

「メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション」
会場:21_21DESIGN SIGHT ギャラリー3
(東京都港区赤坂9丁目7−6 東京ミッドタウン・ミッドタウンガーデン)
会期:2022年3月13日まで
開館:10:00-19:00
入場料:無料
問合せ:0120‐50‐2895 (レコール事務局) 展覧会のホームページ

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