土井家の味噌汁レシピ 秘められた万能性に光をあてる

味噌みそ汁は出汁だしを取らなくてもいいし、パンを合わせてもいい――。常識を覆すレシピ・エッセー本「お味噌知る。」(世界文化社)を料理研究家の土井善晴さん(64)と長女で料理研究家の光さん(30)が、このほど出版しました。光さんに、味噌汁の“万能性”と、簡単にできる味噌を使った料理を教えてもらいました。

2016年に善晴さんは主食(白米など)に、汁もの一品と、総菜などの一品を添えただけの食事「一汁一菜」を提唱し、「きちんとした食事を作らなければ」という呪縛と格闘していた人たちを解放し、大きな反響を得ました。

今回の本で取り上げるのはその「一汁」の部分。味噌汁に合わせるのはパンでも麺でもおいしいなどと味噌汁の常識を覆す方法を紹介しています。

光さんは、「味の濃い根菜や肉類が入るのであれば出汁に縛られる必要はありません。味噌を溶くだけでも十分おいしい」と話します。

光さんはフランス・リヨンにある料理学校に留学した経験があります。一人暮らしになり、献立を考えたり、料理を作ったりするのが面倒な時には、冷凍食品やインスタント食品、さらにテイクアウトや宅配などに助けを求めることがあったそうです。こうした時でも、健康面を考え、なるべく野菜の味噌汁を作って飲むようにしていたといいます。

「栄養価が高く、でも簡単な料理ってなんだろうと考えたときは、まず味噌汁を作ってみてください。なんておいしいんだと叫びたくなるような、うま味の強い食べ物ではありません。でも飽きないし、アレンジも加えられ、体調が悪いときでもとりあえず口に含むことができます」と味噌汁の万能性を強調します。

本では、味噌汁をメイン料理とする「自立の味噌汁」のレシピを紹介。時間のない時には味噌汁の中に麺やご飯を入れただけで“ワンプレート”の栄養バランスのとれた立派な食事になるといいます。光さんは「コロナ禍で自炊も増えたので、本を読んでいただいて、体を築く食材や健康について考えるきっかけになればうれしい」と話しています。

出汁なしでもおいしい味噌汁を紹介

光さんに、本の中から、簡単に作れる、おすすめの味噌汁と雑煮を教えてもらいました。

卵を入れれば、味噌汁が主菜に。食材には旬があり、その日その日で使う食材の状態は違います。出汁は鰹節かつおぶしからだけ出る汁ではなく、具材がたくさんあれば、それぞれから出てきますし、味噌も毎日変化します。たとえ毎日、同じレシピで作っていても飽きないのが、料理のだいご味です。

◇ ◇ ◇

〈1〉落とし卵といろいろ野菜の味噌汁

土井光さんの好きな卵の入った味噌汁の写真

[材料]卵、玉ねぎ、にんじん、かぼちゃ、アスパラガス、ベーコンなど
[水分]水
[味噌の種類]赤味噌
1人前のお味噌汁は、お椀に1杯分の食べやすく切った具材と、おわんに1杯分の水。これを鍋に入れて中火にかけ、煮立てば、味噌を溶いた後、卵を小鉢に割り、そっと汁に入れて半熟程度に火を通します。卵を入れてからの時間で、ほかの野菜も軟らかく煮えます。かぼちゃなどが煮くずれても失敗ではありません。その方がおいしいくらいです。
お椀によそう時は、半熟の卵はくずさないように最後に上にのせると、きれいに見えます。
〔調理のポイント〕
卵を小鉢に割ってから、煮汁が煮立ったところにそっと流し入れます。卵が汁から飛び出していたら火が入りません。煮汁の中に卵が沈むように整えます。
【落とし卵の作り方】
卵は、別鍋に沸かした湯(3㎝ほど)の煮立ちを止めて、卵をそっと落として火を通すと落とし卵(ポーチドエッグ)ができます。(「お味噌知る。」P.36、37より抜粋)

〈2〉白味噌仕立ての雑煮

白味噌に出汁はNG。お雑煮の写真

お雑煮と言えばおすまし(澄んだ汁)と決まっているようですが、京都をはじめ関西地方では白味噌仕立てに丸餅が入ったお雑煮が多いようです。
[材料]丸餅、大根、にんじん、里芋、白味噌(雑煮味噌)、水(または昆布だし)、青海苔のりなど
[作り方]わが家では白味噌を水で溶くだけです。白味噌のおいしさだけで十分なんですね。白味噌の汁は、だしをとって魚の味が出てしまうとおいしくありません。大根、にんじん、里芋は、別鍋で軟らかくでおき、いただく前にお湯に浸して温めます。お餅は鍋に水から入れて中火にかけて、軟らかく茹でます。同時に、白味噌のお汁も温めます。お椀にお餅と野菜、お汁をよそい、青海苔で彩りました。(「お味噌知る。」P.163より抜粋)

本記事の写真は書籍『お味噌知る。』より引用しています(撮影:ジョー)
(読売新聞メディア局 渡辺友理)

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土井光顔写真
土井 光(どい・ひかる)
料理研究家

料理研究家・土井善晴の長女。白百合女子大でフランス語学を専攻、その後フランス・リヨンにあるL’institut Paul Bocuse(ポール・ボキューズ学院)でフランス料理とレストランマネージを2年半学び卒業。三つ星レストラン「ミッシェル・ゲラール」「トロワグロ」で料理、リヨンの老舗ショコラティエ「ベルナション」でパティシエとして勤務。2018年より「おいしいもの研究所」在籍。料理講習会のフランス語通訳やフランスと日本文化をつなぐイベント参加なども行う。

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