映画「マトリックス レザレクションズ」仮想世界で再び戦う

興奮と、戸惑い。ひと言で言えばそうなる。映像も物語も革新的だったウォシャウスキー兄弟の「マトリックス」3部作。その続編は、かつての興奮がよみがえるような期待通りのアクションと映像だった。一方で、新たな展開というより、3部作のパロディーのようにも思えた。

今回の新たな仮想世界では、主人公ネオ(キアヌ・リーブス)は「マトリックス」というゲームを生んだゲームデザイナーだ。現実にどこか違和感を持っている。そこにモーフィアスという男(ヤーヤ・アブドゥルマティーン2世)が現れ、この現実は人工知能が生んだ仮想世界だと告げる。真の世界ではネオは人々を解放する救世主と信じられていた。ネオはかつて自分を覚醒させたトリニティー(キャリーアン・モス)が仮想世界にとらわれていると知り、彼女を救おうとする。そして仲間と共に仮想世界で超人となり、人工知能が生む様々な敵と戦う。

クンフーとVFXの融合。「バレットタイム」と呼ばれる特殊な撮影法によるスローモーション。3部作で斬新だったアクションや映像は、今回も見事だった。無重力のように体を回転させ、宙を跳び、壁や柱を壊しながら延々と続く格闘。華麗なクンフー。すさまじい数の敵を猛スピードで倒していくかっこよさ。ネオとトリニティーがバイクで夜の町を走る場面では、次々とぶつかってくる車をネオがはじき返し、転倒させる。すさまじい迫力だった。

映画「マトリックス レザレクションズ」
(C)2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

一方で3部作の映像が繰り返し登場し、それらを前提に1作目をなぞったような話には、パロディー的なユーモアも感じられる。そもそもトリニティーに夫と子供がいるという設定が笑いを誘う。彼女から家庭を奪って覚醒させようとするネオは、まるで不倫に誘う男のようだ。2人がドキドキしながらカフェで会う場面など実におかしい。

シリーズが荒唐無稽なのに真実味を感じさせるのは、仮想世界と真の世界との対立が、本質存在と事実存在という西洋哲学上の対立概念に根ざしているからだろう。会社も家庭も国家も「仮想」ではないかという現代人の気分も反映している。性別も例外ではない。監督のラナ・ウォシャウスキーは女性だが、3部作を「兄弟」の兄として監督した頃は男性だった。今は弟も性別変更し、2人は姉妹となった。

第1作が公開された20世紀末と比べ、今は現実の仮想化が進み、現実と仮想の境界は曖昧になりつつある。パロディーとして描くことは、むしろ正解なのかもしれない。

(読売新聞編集委員 小梶勝男)

マトリックス レザレクションズ(米)2時間28分。新宿ピカデリーなど。公開中。

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