心療内科を受診するタイミングはいつ?「心の風邪は早めの対処を」

働く人のメンタルヘルスを良好に保つことが大切と言われていますが、心の不調に陥ったとき、カウンセラーや精神科医など専門家に相談するというと、なぜかハードルが高いと感じてしまうケースも少なくないようです。読売新聞の運営する掲示板サイト「発言小町」には、「心療内科への受診は大げさだろうか」と悩む女性からの投稿がありました。この問題、どう考えればいいのか、専門家に聞きました。

不安な女性の思考のもつれを解く
イラストはイメージです

トピ主の「わてな」さんは、50代のパート女性。大学生の息子のことで悩んでいて、考えただけで胸が苦しくなり、仕事中や買い物中など、ふとした時に涙が出てきてしまうと言います。カウンセラーや心療内科への受診を夫に相談しましたが、わかってもらえなかったそう。食欲もあり、睡眠も普通、スマートフォンで好きなものを見たり聞いたりしている時は心が紛れ、一日中落ち込んでいるわけでもないこともあって「こんな状態で心療内科に行くのは大げさですか? 受診されたことのある方、どういったタイミングで行かれたのでしょうか?」と発言小町で問いかけました。

この投稿に、約30件の反響(レス)が寄せられました。

仕事・家族・失恋…原因はさまざま

「普通に行きましたよ」と答えたのは、「やえ」さん。自身の体験を「仕事中に涙が止まらなかったり、髪が逆立つような感覚、少しでも寝付くと金縛りなどが頻繁に起こり、業務に差し支えるため心療内科を受診しました。ストレスからくる自律神経機能の低下でした。休職しながら薬を出してもらって、半年位かかりましたが、すっかりよくなりました」とつづります。

「病院へ行くのにご主人の許可いりますか?」と書いたのは、「50代既婚」さん。やはり心療内科を受診したことがあるそうで、「あとから考えたら結局、赤の他人(=女性医師)に夫の愚痴を聞いてもらっただけ、恥をさらしたな、と思ったりもします。でも、その後、夫に心療内科を受診したと伝えたところ、彼も少し驚き、『そんなに悩んでたのか……』と真剣に考えてくれた点は良かったです」と振り返ります。

「今は鋼メンタル」さんの場合、自分の不調に気づいたのは、夕食づくりのときだったそうです。「サラダを作るつもりで冷蔵庫からレタスを出しましたが、気がついたら、冷蔵庫の前で座り込んでレタスを握り潰して床にばらいていました。我に返って、あ、もうダメだ。と」。当時は仕事の重圧に押しつぶされそうになっていて、「あんなことも調べなきゃ、これも問い合わせなきゃ…」と夜中に枕元でスマホを使って調べ物していて夜が明けることもあったそう。夫に「やばいから病院行ってくるわ」と伝え、翌日病院の予約を取り、適応障害と診断され、2週間の休職の診断書と薬をもらったそうです。

「きのこ」さんの場合、「失恋で眠れず食べれずになってどんどんやせてきたので、これはヤバイと思って」受診したそうです。「予約して、初診で1時間ぐらいかかるテストを受け、テスト結果を見ながら少し問診して、お薬出しておしまいって感じ。もっといろいろ聞かれるのかなと思ったんですけどそうでもなく、でも当時は話すエネルギーもなかったのでかえってそれがよかったです」と言います。その後、結婚。「もし今行く機会があったとしてもわざわざ夫に許可は求めないですね。事後報告するかもしれませんが。どの医者に行く時もそんな感じですし」とアドバイスします。

心の病も、早期発見と治療が有効

風邪を引いたら近所の医者にかかるのに、カウンセラーや心療内科というと、最初の一歩を踏み出すことに抵抗を感じるということ自体に疑問を投げかける書き込みも多くありました。「がんばらない めんどくさくない 人間関係を築くコツ」(ナツメ社)の著者でもある精神科医の尾林誉史さんに受診のタイミングや家族に相談すべきかどうかを聞いてみました。

「早期発見と治療が有効なのは、心の病にも言えることなんですよ」と尾林さんは話します。「波で考えるとわかりやすいかもしれません。自分でもコントロールできないほど、気持ちが落ち込んで底が見えない状態になってしまっているのに、それを放置してしまうと、今度は元の状態に戻ってくるのにも時間がかかります。早い段階で、カウンセリングなど適切な方法で医療者がかかわることができれば回復も早いです」と話します。

具体的に受診の目安で考えてほしいのは、「ご自身が〈何か普段と違うな〉と違和感をもっているかどうかです」と尾林さん。睡眠障害や頭痛・めまいなどほかの症状が出ていなくても構わないそうです。「投稿された方のケースのように、1日に何度も涙ぐんでしまうなど〈つらい〉と感じられている場合は、やはり専門家に相談されたほうがいいですね。おなかが痛いと言って、診察を求めるのと同じ。医師に『これは病気じゃないですよ』と言われれば安心しますよね。それくらい、気軽に考えてもらった方がいいですね」と強調します。

では、心療内科受診を理解しようとしない家族の場合、どうしたらいいのでしょうか。尾林さんは「最初はご家族に黙って受診しても良いと思います。ただ、通院を続けるなら、どこかの時点で、ご家族に一緒に来てもらうのがいいですね。主治医が第三者として家族同士の理解を促すこともありますから」と話します。

尾林さんが顧問を務めているオンラインカウンセリングサービス「Unlace(アンレース)」が全国の働く男女1075人を対象に今年9月に実施したアンケート調査では、「職場に行きたくない」「不安があり眠れない」と感じるほど、心理的な不調を感じた経験がある人が72.8%いましたが、カウンセリングルームや医療機関(精神科や心療内科)など専門機関を「現在受診している」は17.5%、「直近3か月以内に受診していた」は11.6%。仕事や職場での悩みを誰かに相談することについて、58.5%が「抵抗がある」(とてもある18.2%、少しある40.3%)と回答しました。身近に相談相手もなく、専門機関の受診もためらってしまう様子がうかがえます。

尾林さんは「場所と時間を選ばずに、悩みを相談できるのがオンラインカウンセリングの良さです。悩みを抱えた時の選択肢にはなると思います。サイトの中では、気付きにくい自分自身の不安診断『不安尺度診断』も公表しているので活用してもらえればいいですね」と話します。「メンタル壊れそう……」と思ったときほど、家族を含め距離の近い人には相談したくないものなのかもしれませんが、いろいろな形で、悩みを打ち明けられる場があることは知っておきたいですね。

(読売新聞メディア局 永原香代子)

【紹介したトピ】
心療内科を受診したことのある方

尾林誉史さん
尾林誉史(おばやし・たかふみ)
精神科医・産業医

「VISION PARTNER メンタルクリニック四谷」(東京都新宿区)院長。株式会社リクルートを退職後、弘前大学医学部に学士編入し、東京都立松沢病院にて臨床初期研修を経て、現職。東京大学医学部附属病院精神神経科に所属し、16社の企業で産業医およびカウンセリング業務を務めている。「VISION PARTNER メンタルクリニック四谷」はhttps://vision-partner.jp/。オンラインカウンセリングサービス「Unlace」はhttps://www.unlace.net/

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