映画「ジャネット」「ジャンヌ」聖女の定型壊す2作

聖女ジャンヌ・ダルクは、日本人も知る、西欧キリスト教世界の重要なアイコンだ。映画界でも彼女を描いた作品が作り続けられてきた。今回、これらの峰々に加わる「ジャネット」「ジャンヌ」は、特異な光を放つ2作品として記憶されるのではないか。観客は「なんだこれは?」と考え込み、結局印象に残るだろう。

両作とも、フランスの作家シャルル・ペギーの戯曲を基に、カンヌ国際映画祭でグランプリを2度受賞したブリュノ・デュモン監督が手がけた。

15世紀フランス。英仏の百年戦争のさなか、羊飼いの少女ジャネットが、神の声を聞き、祖国のため立ち上がる、という大筋は知られたとおり。「ジャネット」はその幼年時代を、「ジャンヌ」は、名をジャンヌ・ダルクと変えた彼女が、異端審問にかけられ火刑となるまでを描く。

映画「ジャネット」「ジャンヌ」同時公開
「ジャネット」 (c) 3B Productions

「ジャネット」は特異なミュージカル。神の恩恵や神秘が、メタルやプログレッシブロック的な音楽に乗って、歌い上げられる。それどころか、ジャネット(リーズ・ルプラ・プリュドム)たちは、音楽に合わせてヘッドバンギングまでする(!)。

振り付けはシルク・ドゥ・ソレイユも手がけた名振付家フィリップ・ドゥクフレだが、ぎこちなく隙だらけの動きが付けられている。また、デュモン監督の作風でもあるが、主演プリュドムを始め、登場人物はみな演技経験なしの素人が起用され、セリフのやりとりにもどこか締まりがない。

これは、一体なんだ……。だがすぐに、それこそが監督の狙いと気づく。片田舎に生を受けた一介の少女が、奇跡を得て救世主となる。そこには、私たちが定型化して思い込んでいる「映画的」なドラマなどなかったのではないか。そう思うと、作品が突如現代的な意味を帯び始める。

「ジャンヌ」は、作品のトーンは「ジャネット」を引き継ぐが、ミュージカルではない。白眉は異端審問のシーンだ。裁判の前に延々と、ジャンヌを裁く者たちの「偉さ」が語られる。このばかばかしさ。裁判が始まると、ジャンヌは、その偉い男たちを喝破していくのだ。演技経験のなさが、逆に恐ろしいほどの生々しさにつながる。そして、その後の処刑の寂しさにも息をのむ。

キリスト教の神秘への感性など、日本的文化の下に生きる我々には理解が及ばない部分もあるだろう。だが、デュモン監督の挑発的な映画作りは十分堪能できる。こんなジャンヌ・ダルクもありだろう。

(読売新聞文化部 浅川貴道)

「ジャネット」は1時間52分、「ジャンヌ」は2時間18分。渋谷・ユーロスペース。公開中。

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読売新聞文化部の映画担当記者が、国内外の新作映画の見どころを紹介します。
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