田代万里生 ライフワークとしていきたい「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」

小さい頃、どちらかが先に死んだら、残ったほうが弔辞を書こうと約束した2人の幼なじみ、トーマスとアルヴィン――。彼らの友情を描いたミュージカル「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」が2年ぶりに上演されます(12月13~25日、東京・よみうり大手町ホール)。

この作品は音楽・作詞ニール・バートラムと脚本ブライアン・ヒルの手によって、2006年カナダで初演。09年に米ブロードウェーで上演された後、韓国など世界各地で上演されています。日本では19年に初演され、小説家のトーマスと本屋を営むアルヴィンを、平方元基さんと田代万里生さんが交互に演じたことでも話題になりました。今回は、現実的なトーマスを平方さん、子どものように天真らんまんなアルヴィンを田代さんが固定で演じます。公演初日を前に、日本のミュージカル界をリードする田代さんに作品への意気込みなどを聞きました。

ストーリー
人気小説家のトーマス(平方)は、幼なじみのアルヴィン(田代)の突然の死に際し、弔辞を読むために故郷へ帰って来る。しかし、アルヴィンへ手向ける言葉が思い浮かばない。すると死んだはずのアルヴィンが目の前に現れ、トーマスを自らの心の奥深くへと導いていく。そこには延々と続く本棚があり、トーマスの思い出と積み重ねた人生の本当の物語を書いた原稿や本が存在していた。アルヴィンは、その中から弔辞にふさわしい2人の物語を選び、トーマスの手助けを始める。しかし、トーマスはそれを拒み、助けを借りずに弔辞を書くと言い張るが……。

――2年前の初演の時は交互で演じ分けをされました。

初演の時はトーマスとアルヴィンを演じ分けるというテーマもあったので、特にアルヴィンはかなり振り切った役作りをしました。トーマスを強引に振り回していくという点ですね。今回は、僕の中ではもっと自然に、トーマスに受け取ってもらえるような感じをもう少し増やしたいなと思っています。

――今回は配役が固定されているということで、取り組み方は変わりますか。

前回は初演ということで、立ち稽古しながらセリフがブラッシュアップされたり、歌詞が変わったりなどがありました。一方、今回は台本の読み合わせから新しい発見やアイデアが沢山生まれました。そうした点を演出の(文学座の)高橋(正徳)さんとディスカッションしながら、オリジナル原語の英語と照らし合わせて、ささいなセリフを変えさせていただいています。ですので、初演よりも、お客さんに分かりやすくクリアになった箇所もあるし、分かりやすくしていたセリフを英語に寄せて、いろんな捉え方ができる日本語訳にした箇所もあります。

――登場人物は2人だけで、公演時間110分。出ずっぱりなので、大変ですね。

普通、110分引っ込まずに舞台に出ていたら疲れますね(笑)。でも音楽の力をいただいてかなり浮遊感があるんです。すてきなナンバーがたくさんあるので、幕が開いたらノンストップ。暴走列車じゃないけど、降りるまではもう運命共同体だねって元基と話しています。疲れるというよりは、爽快感の方があります。

――アルヴィンに共感するところは?

僕も5年間、書店でアルバイトをしていたので、アルヴィンが感じている本屋での居心地の良さはよくわかっているつもりです。本屋は静かで、ガチャガチャしていない。僕もガチャガチャしているのあんまり好きじゃないので(笑)。

落ち着いている中で育ち、地元に留まり、家族とトーマスぐらいしか付き合いがないアルヴィンだけど、「自由な魂を持っている」と台本にあるように、いろんな本を読んでいることによって、彼は頭の中でいろんなところに旅をしていて、とってもユニークな発想を持っているっていうところに共感します。

僕もクラシックだけを勉強している時は、楽譜と向き合っていろいろな作曲家の歴史を学んだりして、どんどん想像を膨らませていたんです。僕にとっての音楽の旅が、アルヴィンにとっては人生の物語(ストーリー)の旅という意味では、とても共感できます。

――平方さんとは久しぶりの共演ですね。

元基は、再演までの間に、最近では「マドモアゼル・モーツァルト」に出演していましたし、「メリリー・ウィー・ロール・アロング」では主演をつとめるなど、大きな舞台を経験してきたので、演出の高橋さんとのディスカッションも前回よりも積極的に意見を出し、新しいトーマス像を試行錯誤しています。とても心強い存在です。

――お二人が共演すると何かケミストリーを醸し出していると思うのですが、共演する心地よさってありますか。

ありますね。元基はすごく嘘を付けない人なので(笑)、平気なふりをしていても本心が不安だったら不安な顔になっちゃう。もし僕のことを信用していない時はそういう顔になるんだろうと思いますが、いつも信用してくれている顔をしています。いつもこっちが出したカードに反応してくれる。そういう意味では彼との二人芝居はとてもやりやすいし、良いコンビだなと自分では思っています。

リラックスするのは水中?

――9月はミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」でロンドンタイムズ紙の新聞記者・モンローを演じていました。日本初演でしたが、感想を教えてください。

無事に全公演終わってホッとしました。コロナ禍で最後までできるかどうかわからないという世の中だったので、毎回「これが千秋楽かも」と思いながらみんなで演じていました。

――田代さんが今まで演じてきた役の雰囲気とはだいぶ異なり、「くせ者」キャラクターでインパクトが強かったですね。

演出の白井(晃)さんやプロデューサーさんも、当初モンローがこんなに大暴れをする役になる予定はなかったようです。だけど稽古で僕が役作りをしているうちに、あのようなインパクトのある形になっていきました。仕上がってみれば、シングルキャストでやるには結構大変な役にはなっていましたね(笑)。最後までやり遂げられた!という気持ちでいっぱいでした。

――その後もライブなど多くのステージに出演していました。印象深かったのは八ヶ岳高原音楽堂(長野県)での中川晃教さんのライブへのゲスト出演でした。

アッキー(中川晃教)さんとはミュージカル「チェス」でしかご一緒していなくて。コンサートでは本当に数え切れないほど共演させてもらっていますが、2人きりは今回が初めてだったと思います。お互いのオリジナル曲をがっつりデュエットし、俳優というよりはアーティスト同士、歌手同士でコラボレーションしたのは新鮮でした。

――忙しい日々ですが、リラックス方法は?

プールに行くとストレス発散になるんですよ。プールとか温泉だったりサウナだったり、多分水中が好きなんです。プールとか温泉に入ると、すごく解放されて心身ともにリフレッシュします。

また、どんなハードな役柄でも、音楽に身を委ねるとエネルギーをたくさんもらえるので、音楽そのものがストレス発散になり、心と体の栄養にもなっています。

――それではファンの方へメッセージをお願いします。

元基とも事あるごとに連絡とって「早くこれ(「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」)がやりたいね」と言っていたんです。元基も他の現場でいろいろ悩んだり、壁にぶつかったりした時に、「あ〜、早く万里生君のアルヴィンに会いたい」みたいなことを言ってくれていたので、僕ら自身も本当に楽しみにしています。

プロデューサーさんからは、僕と元基のライフワークにしてほしい作品だと言っていただきました。2人ともミュージカル「エリザベート」でオーストリア皇帝・フランツ・ヨーゼフを演じているのですが、この役は若々しい青年から老年の風格ある皇帝まで、年齢の変化が大きくて。この経験を積んでいるから、「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」でも、自分が年齢を重ねても、まだ10年、20年はできると思っているんですよ、勝手に。(笑)

チケットが完売ということで、今回の「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」を見ることができる方は、観劇後にぜひSNSで感想を発信していただけたらうれしいです。反響が大きければ、再々演っていう話もあるかもしれませんので! ぜひ劇場で「今」しか見られない僕らを目に焼き付けてほしいなと思います。

(読売新聞メディア局 杉山智代乃)

田代万里生(たしろ・まりお)
歌手、声楽家(テノール)、俳優

1984年1月11日生まれ。埼玉県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科テノール専攻卒業。3歳からピアノを学び、7歳でヴァイオリン、13歳でトランペットを始め、15歳からテノール歌手の父より本格的に声楽を学ぶ。2003年「欲望という名の電車」で本格的にオペラデビュー。その後09年ミュージカル『マルグリット』でミュージカルデビューを果たし、12年には『ボニー&クライド』で初のタイトルロールを務める。近年の主な出演作に、『ジャック・ザ・リッパー』『マタ・ハリ』『スリル・ミー』『マリー・アントワネット』『Op.110 ベートーヴェン「不滅の恋人」への手紙』『エリザベート』等。第39回菊田一夫演劇賞受賞。22年2月より『ラビット・ホール』出演予定。

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