新型コロナウイルスの感染予防で手洗いをする機会が増え、吸水力のあるタオル生地のハンカチを持ち歩いている人も多いはず。毎日使うものなので、新年を迎える準備やお歳暮などの贈答品にも適しています。IKEUCHI ORGANIC(本社・愛媛県今治市)の京都ストアで働くタオルソムリエ・益田晴子さんに自宅のお手入れで、ふわふわに仕上げるポイントなどを聞きました。
今では身近な雑貨となったタオルですが、手ぬぐい文化だった日本では、実はタオルの歴史は浅いんです。タオルが日本に入ってきたのは1872年(明治5年)と言われ、大阪税関の諸輸入品目の中にある記録が最初の公式なものだそうです。
2019年の国内タオルの生産量は約1万1000トン。一方、中国製やベトナムなど東南アジア製が多くを占める輸入タオルの数量は同年で約7万2000トンと、国内生産量の6倍超です。かつては多くのタオル生産地がありましたが、今では今治タオルと泉州タオルが半々ずつシェアを占めています。代表的な二つのタオルを紹介します。
【泉州タオル】
日本のタオル産業の発祥は大阪南部・泉州。薄手で、生産コストを抑えているので実用的なタオルを得意としています。タオルを織る工程の最後に漂白、水洗いをする「後晒し製法」で作られています。港が近く輸出入が盛んだったため、タオル製造が発展しました。
【今治タオル】
今治とその近郊で作られているタオルの総称です。吸水性や脱毛率など一定の基準を満たした商品を「今治タオル認定商品」と呼びます。現在、約100のメーカーがあります。「先染め」という製法で、すでに染色してある糸を使い、織り方でデザインを表現する「ジャガード織り」が多く、高級感があります。
タオルの製造工程では水が多く必要になります。今治のあたりは、高縄山系や石鎚山系を流れる軟らかい伏流水が豊富。かつて染色後は自然乾燥する必要があるため、温暖少雨な土地がタオル生産に適していたと言われています。
ふわふわに仕上げるポイントは?
どんな種類のタオルであっても、正しい洗い方や干し方をしないと、吸水力が落ちたり、ゴワゴワにもなります。逆に洗い方で自分の好きな風合いが作れます。ふわふわに仕上げる洗い方のコツを教えます。

【たっぷりの水で】
タオルは水を吸うために作られています。洗濯機は重量で注水量を決めるので、注水された水のほとんどをタオルが吸ってしまうことがあります。
手動で変えられる場合は、水量を多めに。全自動なら、一度タオルをびしょびしょに濡らし、これ以上水を吸わない状態にしてから洗濯機に入れましょう。「タオル専用」コースのついている洗濯機もあります。
【洗濯せっけんで洗う】
洗濯洗剤の中でも、せっけん油脂由来の洗濯せっけんをお勧めします。もともと綿の持っている油分が、タオルのしなやかさ、やわらかさ、ふくらみにつながっています。そこにせっけんの油脂を添加すると、綿本来の油分に近づき、ふっくら、しなやかになります。合成洗剤は、においも汚れもよく取れますが、綿の油分も根こそぎ取ってしまうので適していません。
【柔軟剤は使わないで】
柔軟剤は、手触りがスムーズになり、香りも良いので好きな人もいると思います。ただタオルを洗うために使うと、皮脂が付着したままの繊維をコーティング(撥水加工)してしまい、吸水力が落ちたり、繊維が抜けやすくなってしまうため、早めにへたりが来る原因となります。
よく「購入直後は水を吸わない」と言われますが、それは「柔軟仕上げ」がされているタオルです。使用して洗っていくうちに「柔軟仕上げ」が落ち、吸水力が上がっていきます。
【乾かしすぎないで】
タオルは髪の毛と同じだと思ってください。綿は油分だけでなく水分も持っていいます。完全に水分を取ってしまわないほうが良いのです。タオル専門店では店内の湿度を50~60%に保つようにしています。ふわふわが好きな人は乾かしすぎに注意です。太陽の下でカチカチに乾かしたものが好きな人は、好みに合わせた乾かし方を。
タオルの替え時について聞かれることがありますが、「気持ちいい」と思えている間は替えなくていいです。ゴワゴワ感やガシガシ感が好きなら、ぜひ使い続けてください。生まれてすぐにくるまれるのがタオル、亡くなった後に体を拭くのもタオル。あなた好みのタオルをぜひ育ててみてください。
毎日洗うのが大変なら、小さめのタオルを使う
タオルを長く使っていると、気になってくるのが黒ずみです。黒ずみの原因の多くは皮脂。タオルをぬれたまま、風通しの悪いところに置かないようにしてください。
毎日洗うことを勧めていますが、大きなバスタオルを毎日洗うのは大変です。こうした悩みを持つ人は、「1枚でもしっかり体が拭けるような吸水性の良い小さめのタオルに見直してみる」ことを提案します。
(聞き手・メディア局編集部 渡辺友理)