エッセイスト・平野恵理子 山で暮らす飼い猫「ドレミ」にインタビューしました

これから、飼い猫ドレミとの暮らしについて書かせていただきます。こんなお伝えの仕方はどうかしら、とインタビュー形式で進めることにしました。質問も答えも、すべてわたくしが書いております。

イラストレーター、エッセイスト・平野恵理子さんと飼い猫のドレミちゃん「わたしの方が好きすぎて、つい必要以上に抱っこしたりなでたり声をかけたりしちゃうんです」(山梨県北杜市で) ◎岩佐譲撮影

――ドレミさんは何歳?

ドレミ(以下ド) 五つの女の子。

――お二方は、どのようにして一緒に住むようになったのでしょうか?

ヒラノ(以下ヒ) 知人の紹介で、ドレミを保護していた方から譲り受けました。

ド みなしごだったの。

――何歳のときに?

ヒ うちに来たときは生後3か月くらいでした。

――最初から仲良し?

ヒ なかなかお互いなれなくて。どうしたらいいのか分からずに、2週間くらいは途方に暮れていました。

ド だって突然知らないところに連れてこられて、それまで全然知らなかった人と二人っきりで住むなんて、そんなにすぐになれることはできません。

――今はもう仲良し?

ド それはわたしがお答えすることではない。

ヒ 仲良しと思いますよ。もしかしたらわたしの片思いかもしれませんが。

ド もう少し放っておいてくれるといいんだけど。わたしに構い過ぎなの。

ヒ すみません。

――ところで、最初一緒に住んでいたところから、お引っ越しをされましたね。

ヒ そうなんです。横浜に1年住んでから、八ヶ岳南麓に越しました。もう4年になります。

ド ちょうど一つの時に山の方へ来たの。

――ドレミさん、山の暮らしはどうですか?

ド 虫がいっぱいでね、面白いよ。見つけたら、おっかけたり捕まえたり、食べたりするの。

ヒ 自然が濃厚なこの地は、猫にとっても快適なのではないかと思います。窓の外をよく見ています。

ド よその猫が庭に来ると、ギギーって怒っちゃうけど。

ヒ 尻尾をボトルブラシのように太くして怒るので、ハラハラしちゃいます。

――じゃあ猫のお友達はいないのかな?

ド いない。まあ飼い主が友達でもあるかな?

ヒ あらうれしい。ドレミちゃん、そんなふうに思ってくれてたの?

――ヒラノさん、感激ですね。

ヒ はい。猫とわたしで親一人子一人、っていう暮らしですから。

隣でスヤスヤ 幸せ実感

「ドレミ」との毎日の暮らしについて、お伝えしますね。

――最近楽しいのは?

ド 抱っこでお外に出ること。

ヒ 「お外」という言葉を覚えて、朝夕5分だけでも連れ出さないと許してもらえません。

――どこへ行くの?

ド 庭やおうちの周り。

ヒ 最近は歩いて2分ほどのゴミ捨て場に抱っこしたまま行くこともあります。

――お外のなにがいい?

ド 空気の匂いとかね、風とか光とかが好き。

ヒ 外に出ると、鼻をずっとヒクヒクさせています。

――一人では行かない?

ヒ 猫だけでは出さないようにしています。

ド 何度か脱走したけどね。へへへ。でもすぐに連れ戻されちゃった。

ヒ 家の周りの草むらを疾走したり木に登ったりと、もうヒヤヒヤでした。

――お外のほかにはなにが好きなのかな?

ド 一人でね、屋根裏のお部屋で寝てるのが好き。

ヒ 気に入りの古い椅子があって、午後はそこで長い時間寝ています。

ド 誰にも構われずにゆっくりできていいんだ。

ヒ 誰にもって、わたしのことでしょ?

――なぜ屋根裏がいい?

ド 冬になるとあったかいしね、窓からの眺めもいいし。高い柵の上から下のお部屋を見下ろすのも好きなの。

ヒ 高いところにある細い柵をヒョイヒョイ歩いたり、角を曲がったり、見ているこちらは慌てますが。

ド 柵の上を歩くのなんて、得意中の得意よ。

――おうちの中で、ほかに気に入っている場所は?

ド お窓はどれも好き。気に入っているのは、和室の庭向きのお窓と、台所のシンク上のお窓。どちらも庭がよく見える、重要なパトロールポイントなの。

――飼い主さんのそばはどうですか?

ド お仕事が始まると、わたしは机の脇に置いてある丸いベッドに寝るの。誰かさんは、お仕事しながら寝ているわたしのことをよく触ってきますけど。

「仕事中に猫をなでられるのは生きる喜び、活力のみなもと。すわったままなでられるように、机と同じ高さに猫ベッドを設置しているんです」(山梨県北杜市で) ◎岩佐譲撮影

――ヒラノさんに聞きましょうか。猫と暮らして幸せを感じるのはどんなときですか?

ヒ 夜お布団で寝ている時に、すぐ隣でスヤスヤ眠っているのがわかると、なにより幸せを感じます。

ド あんまりナデナデされた時にはスイって出て行っちゃうけど。

ヒ このごろはそんなにしないじゃない。

ド まあこれからは寒いので、なでられたからってなかなかお布団から出られませんけどね。

――仲良しだかなんだかよくわからないお二方ですね。では次回もお楽しみに。(イラストレーター)

おやつ 催促される喜び

食生活についての話です。

――ドレミさんが一番好きな食べ物はなんですか?

ド えーとね、おやつ。

ヒ おやつばっかり食べるんです。

――どんなおやつが好きなの?

ド やわらかいトロトロしているおやつがあってね、とくにささみやホタテ味が好き。あと、猫用カマボコやカツオ節風も。

ヒ 好きなおやつは毎日食べ続けても飽きないようです。

――ごはんは飽きるの?

ド おいしく食べてたごはんもね、同じのが続くと飽きちゃう。

ヒ これは好きみたいだな、と思ってまとめて買うと途端に食べなくなって、がっかりさせられます。

「たまにお茶わんがすっかり空っぽになっていると、とてもうれしくなります。とはいえ、それと同じものを出してもひと口しか食べないこともあるので困りものですが」(山梨県北杜市で) ◎岩佐譲撮影

――どんなごはんを食べてるのかな?

ド ごはんは朝と晩の2回。カリカリとレトルトパウチと両方もらってます。

ヒ 食が細くて残してばかりで、張り合いがないんです。

ド 毎朝お茶わん洗うとき、私が残したのを捨てながらブツブツ言ってるよね。

ヒ ブツブツ言いたくもなります。

――手づくりごはんは?

ヒ ささみを茹でてほぐしたり、お刺し身も茹でて細かくしたり。でもそれもすぐに飽きて食べなくなるので、このごろはひと月に1度くらいだけです。

ド 食通だからさ。

ヒ 誰が?

――さて、ドレミさん、おやつはヒラノさんのお膝で食べるのだとか?

ド そうなの。なぜかそんな習慣になっていてね。

ヒ おやつのときだけはすっ飛んできて膝に乗るので、うれしいんです。

ド だってお膝に乗らないとおやつもらえないんだもん。量も決まってるし。

――お膝に乗って、おやつちょうだいってするの?

ド うん、まずいっぱいイイコイイコしてもらう。それから、トントンっておやつの瓶をタップするの。

ヒ おやつを握っているわたしのこぶしもトントンするので、少しずつ出して、何度もトントンしてもらいます。

――ヒラノさんたら。

ド ねー、やっぱりそう思うでしょう? わざとわたしにおかわりのトントンさせるのよ。

ヒ そのくらいケチしないでやってよ。ドレちゃんにトントンしてもらうの好きなんだから。

――まあまあ、そんなことでもめないで。ドレミさん、これからはなるべくごはんをたくさん食べて、元気で過ごしてくださいね。

ド はい、そうします。

――ありがとうございました。(イラストレーター)

愛おしさ 日々上昇

――ドレミちゃんと暮らすようになってから、何が変わりましたか?

ヒ 話し相手ができたことですね。

ド 何を話しかけられてるのか、ほとんどわかりませんけど。

「こんなにもかいがいしく、喜びをもって猫の世話をできるのかと、自分でも意外でした。飼い始めるまでは、責任をもって毎日の世話をできるのだろうか、と不安だったので」(山梨県北杜市で) ◎岩佐譲撮影

――他にはありますか?

ヒ 猫を飼っている友人と「猫話」をできることも喜びです。また、猫の本や猫グッズなどにも興味が増している気がします。

ド いろんな本買ってきて読んでるもんね。

ヒ 猫を題材にした小説や随筆がこんなにあるんだと、改めて知った思いです。

――猫グッズは?

ド 猫の日めくりでしょ? 毎朝キャーキャー言ってて、焼きもち焼けるの。

ヒ 毎朝猫ちゃんの写真を見るのが楽しみで。

――ドレミちゃんと一緒に暮らして思いがけなかったことは?

ヒ 驚いたのは、猫の仕草の豊富さと愛らしさです。伸びにあくびに爪とぎに。かわいらしくもエレガントな動きに毎日のようにびっくりさせられています。愛おしく思う気持ちも日々上昇するばかりです。

ド もっと言って!

――困ったことは?

ヒ 猫に留守番をさせるのが不憫で。というよりも自分が寂しくて早く家に帰りたいんですね。あんなに好きだった旅行も、もはや行きたいとも思わなくて。

ド お留守番はね、たしかにちょっとイヤかな。

ヒ わたしが家にいて放っておいてもらうのがいちばんなんでしょ?

ド そうそう。

――日々気をつけていることはありますか?

ヒ 猫と自分の健康です。目指せ共白髪なので。

ド お医者さんで年に1度お注射してもらうときはおとなしくしてるよ。

ヒ 外ヅラのいい猫で。

――最近のニュースは何かありますか?

ヒ 今日、仕事をしていたら、初めて自分から膝に乗ってきたんです。これは大ニュースでした。

――ドレミさん、どういう心境の変化ですか?

ド ちょっと甘えたかったのかな。このごろお仕事ばっかりしていてイイコイイコがおろそかになってる気がして。リクエストね。

ヒ っていうことは、これからもナデナデは控えめにしてればお膝に来てくれるのかしら。

――そんな虫のいいこと言っていていいんですか?

ド ねえ、どうかと思いますよ。お膝はたまにね。

――これからもお二方で末永く幸せな日々を。どうもありがとうございました。

 (このコラムは、読売新聞で11月に掲載されたものをまとめて再掲載しています。)

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平野 恵理子(ひらの・えりこ)
イラストレーター、エッセイスト

1961年、静岡県生まれ。暮らしや旅、歳時記に関する作品を多く手がける。著書に「わたしはドレミ」(亜紀書房)、「五十八歳、山の家で猫と暮らす」(同)など。本紙夕刊「モード」面で、コラム「平野恵理子の身辺雑貨」を連載中。

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