映画「彼女が好きなものは」同性愛者の苦悩に向き合う

浅原ナオトの小説が原作。書名は、映画のタイトルの後に「ホモであって僕ではない」と続く。ゲイ男子と、そうとは知らず彼を好きになった腐女子の物語だが、軽いラブコメではない。同性愛者の痛みと、その痛みを感じようとする者の必死のもがき。二つの痛烈な感情を青春映画のフレームの中で浮かび上がらせた秀作だ。

高校生の純(神尾楓珠ふうじゅ)は、母や友達にはゲイであることを隠しているが、年上で妻子のある誠(今井翼)と交際している。ボーイズラブのマンガをひそかに愛読する「隠れ腐女子」の同級生、紗枝(山田杏奈)が純に恋をした。紗枝に告白された純は一筋の望みを抱く。女の子とつきあえば、ゆくゆくは結婚し、父親にだってなれるかも。つまり、「普通」になるチャンスだ、と。

映画「彼女が好きなものは」
(c)2021「彼女が好きなものは」製作委員会

みんなと違う自分と闘ってきた純。抵抗し、あきらめ、「普通じゃない」己とつきあっている。そんな胸の内を知り、紗枝はぼう然とする。彼氏が、今までファンタジーとして消費してきた同性愛者だったとは。初めて生身の苦悩を目にした彼女が混乱の末に絞り出した、「理解できなくても想像したい。他人事にしたくない」というセリフがしみる。影響され、ほかの生徒たちも偏見に満ちた色眼鏡をそっと外していくのがいい。

一筋縄ではいかない、世界の複雑さと向き合う2人の、涙でグシャグシャになった顔が何とみずみずしいことか。10代の頃にこんな映画と出会いたかった。

(読売新聞文化部 山田恵美)

彼女が好きなものは(バンダイナムコアーツ、アニモプロデュース)草野翔吾監督。2時間1分。TOHOシネマズ日比谷など。公開中。

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読売新聞文化部の映画担当記者が、国内外の新作映画の見どころを紹介します。
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