映画「ディア・エヴァン・ハンセン」切ないうそ、歌に乗せ

人と話すのに恐れを感じる「社交不安症」の高校生エヴァン(ベン・プラット)が主人公。抗うつ薬を手放せず、猫背で、友達のいない彼がついたうそがSNSを通じて膨らみ、周囲や自身を傷つけてしまう。

2017年のトニー賞で、主演男優賞など6冠に輝いたブロードウェー・ミュージカルの映画化。キラキラもワクワクもない。描かれるのは、スマホ一つでつながれる一方で増す孤独、「なりたい自分」を演じる10代の危うさ。現代的で切実な物語が、「グレイテスト・ショーマン」の作詞・作曲家コンビ、ベンジ・パセック&ジャスティン・ポールの哀切なポップスとともに紡がれる。ミュージカル映画に新時代をもたらす1本といっていい。

タイトル(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)は、彼が心理療法としてつづった自分宛ての手紙の冒頭。学校での居場所のなさや、恋するゾーイ(ケイトリン・デヴァー)への思いを吐露した1通が、彼女の兄コナー(コルトン・ライアン)に奪われ、日常が一変する。

一匹おおかみだったコナーが命を絶つ。ポケットにあった手紙を、両親は息子が親友に宛てた遺書だと思い込む。「2人の話を聞かせて」。懇願され、心乱れたエヴァンは友情物語をでっち上げ、学内での追悼式で感動的なスピーチをする。その動画は拡散し、「時の人」となるが――。

映画「ディア・エヴァン・ハンセン」
(c)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

大半を撮影時にライブ収録した音源で構成した歌唱シーンは、臨場感たっぷり。さりげなく見えて、練りに練られている。楽曲がドラマの流れと不可分のものとして必然的に存在し、ミュージカルにありがちな「唐突感」を感じさせないのだ。

例えば、コナーの両親につくうそが歌で語られる。普段は思ったことを口にできないのに、メロディーに乗って言葉が次々とあふれ出す。「野原で寝転び青空を眺めた」「何でも話した」「恋バナだって」「2人は親友だったんだ」と。

全て真っ赤なうそ。けれど心の底から欲してもいた。友と笑いあう自分。誰よりも彼自身がうそを本当のことだと信じたかった。この切なさ、泣かずにはいられない。人前でパニックを起こしながらのスピーチも代表曲「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」で、真実の告白も悲痛な1曲「ワーズ・フェイル」でなされる。

舞台で3年半にわたりエヴァン役を務めたプラットが映画版にも出演。役が乗り移ったようなたたずまいが胸に迫る。エヴァンとコナーの母親をそれぞれ演じたジュリアン・ムーア、エイミー・アダムスも息子への深い愛情がにじむ名演だ。

(読売新聞文化部 山田恵美)

ディア・エヴァン・ハンセン(米) スティーヴン・チョボスキー監督。2時間18分。TOHOシネマズ日比谷など。公開中。

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