母子手帳だけではカバーできない低出生体重児のママ、救ったLBHとは?

小さく生まれた低出生体重児の成長を記録できる専用の小冊子「リトルベビーハンドブック(LBH)」を活用する動きが広がっている。「子どもの成長に合った冊子がほしい」という保護者の思いが行政を動かし、各地で作成が進んでいる。

発行されている11自治体のリトルベビーハンドブック
すでに発行されている11自治体のリトルベビーハンドブック(板東さん提供)

この子のペースで

「母子手帳(母子健康手帳)に記録すると、予定日より早く産んでしまったことを申し訳なく感じてしまう」「LBHがあったら、この子のペースでいいんだと立ち返ることができる」

低出生体重児の親のグループ「栃木県リトルベビーサークル」が10月、LBHの作成を求めて栃木県に送った文書にはこんな言葉が並ぶ。

代表の小林恵さん自身も2018年、長男(3)を体重500グラム未満で出産した。同じような境遇の保護者に寄り添いたいとサークルを設立し、LBHの作成を目指して活動をしている。

栃木県リトルベビーサークル代表の小林恵さん
母子手帳やリトルベビーハンドブックへの思いをまとめた書類を手にする小林恵さん(提供写真)

小林さんは「低出生体重児は、NICU(新生児集中治療室)などで入院が必要な場合が多く、疾患の治療が続くこともある。LBHに記録をまとめてあれば、病院での説明もしやすくなる」と指摘。文書を受け取った栃木県こども政策課の星野典子さんは「率直な保護者の声を聞けた。情報収集を進め、ハンドブックの必要性を検討したい」とする。

成長曲線0グラムから

栃木県など各自治体が参考にしているのが、静岡県の取り組みだ。地元の育児サークルが独自に作ったLBHを参考に、県の事業としてLBHを作成し、18年から配布している。

母子手帳では、「あやすとよく笑いますか」など「はい・いいえ」の二択で尋ねる質問が多い。発達が遅れがちな低出生体重児の場合、回答が「いいえ」ばかりになり、「焦りを感じ落ち込む原因になった」という声もある。LBHでは、成長の記録は二択ではなく、「できた日」などを記入し、少しずつでも成長を実感できるようにした。

また、母子手帳では身長40センチ、体重1000グラムからしか記入できない成長曲線のグラフも、20センチ、0グラムから記入できる。低出生体重児の親や成長した子どもたちからのメッセージも盛り込んである。

11自治体が作成

国際母子手帳委員会事務局長で、各地のLBHの作成を支援している板東あけみさんによると、静岡県のほか、21年3月までに福岡や岐阜、広島、佐賀、愛知県など10自治体(名古屋市など5市も含む)で作られたという。

山梨県も昨年、子育て支援サークルの代表から要望を受けてLBHの作成を決めた。福島県でも今月、第1回の検討会を開催した。

板東さんは「低出生体重児の多くは、予定より早く生まれる場合が多く、母親は混乱して落ち込んでいる。そのときにLBHを読み、自分が住む地域で元気に育っている子がいる、話を聞ける保護者がいると知ることは、子育てに前向きに取り組むきっかけにもなる」と話す。

静岡県のリトルベビーハンドブック
静岡県のリトルベビーハンドブックでは、子どもの発達の記録は「見つけた日」「できた日」を記録する。子どもの小さな成長も実感できる

先行する静岡県では、LBHの作成をきっかけに、当事者や行政、医療関係者らの連携が進んだ。保健師の研修で当事者サークルのメンバーが講師となって、健診や訪問の際にどういう対応や声掛けがあるといいかを学ぶなど、新たな動きも出ている。

静岡県こども家庭課の梅原紀子さんは「LBHを作って配布するだけでなく、地域で活用し、低出生体重児や支援が必要な子と親が、地域で育ちやすい、育てやすい環境を整えていきたい」と話している。(読売新聞生活部 木引美穂)

低出生体重児 生まれた時の体重が2500グラム未満の赤ちゃん。厚生労働省の人口動態統計によると、低出生体重児が全出生数に占める割合は、1985年は5.5%(約7万8000人)だったが、2020年には9.2%(約7万7000人)に増えた。医療技術の進歩による救命率の向上などが背景にあるという。
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