ランニング中に走り方を助言する靴・・・進化する「ウェアラブル端末」

睡眠診断をしてくれるパジャマがある。東京大学発の新興企業ゼノマ(東京)が5月に発売した「イースキン・スリープ・Tシャツ」だ。

腹部のポケット内に柔軟性のある電子回路を埋め込んだワッペン生地が縫い付けられており、5センチ大の小型機器を装着すると、心拍や体の動き、パジャマ内の温度などを計測できる。その値を連動するスマートフォンのアプリで解析し、睡眠の質を100点満点で評価し、改善に向けてアドバイスする。

神戸市の会社役員、小林大祐さん(51)は9月に購入した。「眠りが浅く、日中にだるさを感じることも増えた。眠りを改善したいと思った」という。11月16日の得点は60点。仕事の状況などで日々変動はあるが、「早寝早起きを心掛けるなど、よい睡眠を取ろうという意識付けになっている」と話す。

ゼノマのパジャマは、青いポケット内に小型機器を装着して寝ると、翌朝、スマホに睡眠スコアなどが表示される(東京都大田区のゼノマ本社で)

ゼノマで広報を担当する龍山美佐子さんは「着るだけで簡単に睡眠の状況を把握できる。健康意識の高い働き盛りの30、40代に好評」とする。セレクトショップのアーバンリサーチも、同じセンサーを用いたオリジナルデザインのパジャマを販売している。

アーバンリサーチの「デジタルヘルスケアパジャマ」。センサーはポケットの中にある(提供写真)

身に着けることができるデジタル機器「ウェアラブル端末」。時計や眼鏡を連想するが、柔軟性や伸縮性を持つセンサーなどが普及し服への応用も広がっている。衣料用生地の高機能化は目覚ましく、センサー機能などを備えた様々なスマートテキスタイルも開発されている。矢野経済研究所が昨年8月に発表した調査では、2020年の国内のスマートテキスタイル市場は、19年比72%増の4億8700万円。30年は20年比約47倍の226億8100万円に成長すると見込む。

ミツフジ(京都)の「hamon(ハモン)」は、電気を通す銀メッキ繊維を使ったシャツ。心拍数などの生体情報を取得・分析してリスクを可視化し、スマホで確認できる。京都府は昨年5月、新型コロナウイルスに感染した宿泊療養者の体調変化の管理や、看護師らへの二次感染防止目的にハモンを採用した。

ミツフジのハモン(提供写真)

炎天下の作業現場で働く人たちの体調管理などに用いられるケースも増加。現場監督者らが遠隔監視することもでき、事故の未然回避などにも役立つという。

靴が走り方を助言

アシックス(神戸)と新興企業のオルフェ(東京)は、ランニング中に適切な走り方などを助言してくれる「エボライド オルフェ」を開発した。靴のクッション部分に内蔵したセンサーが歩幅や足首の角度などのデータを取得。スマホの専用アプリで即時に分析し、その人にあった走り方を音声で伝え、改善点や練習方法などを示す。まさに「コーチになる靴」だ。

アシックスとオルフェが共同開発したスニーカー(提供写真)

スマートウェアは、少子高齢社会を支える役割も期待される。繊維商社の豊島(名古屋)は今年1月、地域の課題解決を目指す「着るスマートタウンkurumi(クルミ)構想」を始めた。

第1弾として、自治体などの健康や福祉施策でのスマートウェア利用を促す。1月には福島県いわき市と連携協定を締結。保育園児のうつぶせ寝の見守りや市民の体作り事業で用いる。同社の和泉ちひろさんは「効果の見える化で施策への理解が高まり、安心、安全、健康な社会を実現できる」と話す。

用途が多様化し、装う場も広がりつつある「着る」ウェアラブル端末。ファッション批評家で、京都精華大准教授の蘆田裕史さんは「現状では、まだ特定の機能を求める人たちのものにとどまっている状況」と指摘する。そのうえで、「たとえば気温に応じて温度調整をしてくれて、見た目も意識したジャケットのような、誰もが価値を見いだせるものが登場すれば、一気に普及するのかもしれない」と分析する。(読売新聞生活部 斎藤圭史)

Keywords 関連キーワードから探す