子育てが楽になる、14万人にシェアされた「声かけ変換表」の本

新型コロナの影響で外出自粛や在宅勤務が続いた今年、子どもへの声かけを伝わりやすい言葉に変換することを勧める本が売れています。2020年6月に出版された「発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる!声かけ変換」(あさ出版)で、27刷と版を重ね、計7万部余り。子育ての悩みを解決するヒントは、どんなふうに散りばめられているのでしょうか。著者の大場美鈴さんに聞いてみました。

「でもさ~」→「うんうん、そっかそっかあ~」(否定せずに話を聞く)

「〇年生なら、みんなできてるよ」→「去年よりできるようになったねぇ」(その子自身との比較)

無料でダウンロードできる「声かけ変換表【決定版】」(A4サイズPDF)には、こんな文言が並びます。本の中で紹介される166例の中から、えりすぐりの27例を、一覧表にしたものです。

著者の大場さんは、美術系大学を卒業後、出版社に勤務し退職。現在高校1年、中学2年、小学5年生の3人の子がいます。2014年にフェイスブック上で自身の子育てをもとにした「声かけ変換表」を発信したところ、瞬く間に拡散し、約14万シェアを獲得しました。今回の著書は、その変換表をもとにしたものです。

声かけ変換表
「声かけ変換表」から

――本が完成するまで6年かかったそうですね。昨年からじわじわと版を重ねてきましたが、どう思われますか?

本当は2020年1月に出版予定だったんですが、私の作業が遅れてしまい、6月に出版されました。昨年の春は、コロナ禍で全国一斉に学校が休校になるなど、大変な時期でしたから、家庭の中で子どもとのコミュニケーションに困った方も多かったのでしょう。発達障害のある子の子育てに限らず、いろいろな方に読んでいただけるようになって、お役に立ててよかったなあと思います。

――大場さんは、プロフィルに「うちの子専門家」と書いています。どんな思いをこめられたのですか?

私は親がわが子の一番の専門家だと思っています。だから、「うちの子専門家」。世の中には、叱らない子育ても、叱る子育てもあって、わちゃわちゃした日常の中では、何が正解かわかりません。子どもにはそれぞれ個性があって、ちょっと手のかかる子もいます。私はうちの子たちを育てる中で独学で学びながら発見したことや、こういう言い方よりも、こういう言い方のほうが伝わりやすい、という経験とコツを本にまとめました。だから、自分の子どもをだれよりもよく知るお母さんやお父さんが、その子に合わせてアレンジしてくれたほうがいいし、だれもが“うちの子専門家”になれる、と思っているんです。

擬人化やクイズなどアイデア豊富に

――読売新聞の運営する掲示板サイト「発言小町」にも、「2歳児にイライラ。どう対応していいのか悩んでいます」など、子育ての悩みが多く寄せられています。こうした悩みにはどう答えますか。

歯磨きや片づけ、おむつ替えなどのときに「やるよー、おいで」と声をかけても、なかなか子どもが来てくれない、というお悩みですね。子どもって天邪鬼(あまのじゃく)になるときがあります。うちの子のときによくやったのが、擬人化やクイズ。例えば、歯磨きだったら「ちょっとお口の中、見せて? ……あ~、虫歯菌が『さっき食べたハンバーグでこれからパーティーするから、歯なんて磨かないで』って言っているよ~」なんて声かけすると、あわてて歯磨きしたものです。

――なかなか演技力が必要そうですね。たしかに擬人化やクイズなら、小学生ぐらいまで使えそうですね。

そうなんです。「忘れものばかりでダメね」と叱るよりも「何かを忘れてます。さて、何でしょう?」と問いかけたほうが、子どもも楽しく自分で考えて答えを出します。でも、親の方に心の余裕がないと、なかなかそういう発想ができません。子育てへのプレッシャーから「あれもこれも」と要求し過ぎて、子どものいい情報に目が行かなくなったり、思い詰めて視野が狭まってしまったりすることもあります。そんなときは、親の方がもっと手抜き・息抜きをして、自分にも小さな「できたこと」を見つけてほしいと思います。

――本の中でも「0章」として「心の片づけをする声かけ」を提唱していますね。

「自分はダメな親だ」と思ったときには、「自分は頑張りすぎている親だ」と言い換えてみることをオススメしています。章の順序は、「お子さんのことに入る前に、まず肩の力を抜いて、自分自身の『心の片づけ』から始めてみませんか?」と強調したかったんです。思い詰めずに、自分に寛容になれればしめたもの。子どものことだって、「わがままな子」と短所だけを見つめそうになったら「でも、意志が強いとも言えるね」と長所もセットにして見てみるとか……。「落ち着きがない子」は「行動力がある子」と言い換えることもできますよね。発想の転換で、親子でいいコミュニケーションの循環にのせられるといいなあと思います。

――子育て支援センターなどでは、この変換表を大きく印刷して貼り出しているところもあるそうですね。

活用してくれたらうれしいです。ペアレント・トレーニングはいつから始めても、遅すぎるということはないと思います。褒めるところがない、かわいいと思えない……など子育てにはいろいろな悩みがありますが、褒めラインをぐっと下げて、自分にも子どもにも「毎日よくがんばっているね」と声かけしてあげることから始まると思っています。

――発達障害、グレーゾーンという言葉が以前に比べてよく使われるようになってきた印象がありますが、わが子がそうかもしれない、と思っている人にご自身の経験から何かアドバイスがあれば教えてください。

いきなり専門病院を受診するというのはハードルが高い方もいると思います。近くの小児科医や乳幼児健診の保健師さんやスクールカウンセラーなど、まずは身近なところで気軽に相談してみて、必要に応じて専門医を紹介してもらうのもいいかもしれません。ただ、どこから「障害」なのかは、その子の個性と環境との相性でも変わってきます。時代によっても線引きは変わっていくので、診断のある・なしに関わらず、親は愛情を伝えつつ、その子に合った接し方をするだけです。(読売新聞メディア局 永原香代子)

【紹介したトピ】
2歳児にイライラ。どう対応していいのか悩んでいます。

大場美鈴さん
大場美鈴(おおば・みすず)
うちの子専門家

 1975年生まれ。美術系の大学を卒業後、出版社で医療雑誌の編集デザイナーとして勤務し退社。実父の介護経験を経て結婚。3人の子どもがいる。長男はASD(当時の基準でアスペルガー症候群)の診断を受け、次男、長女はいくつか凸凹の特徴があるグレーゾーン。2013年から「楽々かあさん」として日々の子育てアイデアを発信する個人活動を始めた。

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