キノコの革、信用タグ…「サスネイティブ」たちが選ぶ服って?

国連が掲げる「SDGs(持続可能な開発目標)」への関心が高まる中、ファッション業界でも、地球環境や人権、様々な社会問題の解決に向けた取り組みが活発化している。コロナ禍でファッションは「不要不急」なのか問われた。その意義や役割を見つめ直し、よりよい生活を創りだすために奮闘する企業や人々を追った。

「信用タグ」が付いたTシャツを手にする松井さん

無駄なくした工程 製造責任明らかに

服で服を作る。そんな取り組みが急速に広がっている。

「ガッシャン、ガッシャン」。10月上旬、東レの瀬田工場(大津市)の一室。ベルトコンベヤーには、ユニクロのダウンジャケットが並ぶ。東レが開発した特殊な機械に吸い込まれて数分後、細かく裁断された生地と、ふわふわの羽毛が別々に出てきた。東レ繊維加工技術部課長の藤田和哉さんは「羽毛を傷つけずに取り出せる、海外からも注目されている最新の機械」と誇らしげだ。

東レが開発した機械に並べられたダウン

ユニクロが2019年、東レと協業して始めたダウンジャケットのリサイクルプロジェクト。店舗で回収したダウンから羽毛を取り出し、新たな商品を作り出す。今年8月までに計84万点を回収した。ユニクロは全商品のリサイクルとリユースを目指しており、広報の渡橋淳二さんは「サステナブル(持続可能)を当たり前にしていく」と意気込む。

裁断されたダウン

日本製に特化したブランド「ファクトリエ」は8月、「サステナブルライン」と銘打ったオーガニックコットンのTシャツを発売した。着古したものは回収し、原料に戻してから糸を作り、再びTシャツに生まれ変わらせる。全工程を国内で完結させた。価格は税込み3960円。代表の山田敏夫さんは「事業が普及すればコストはもっと下がる。サステナブルに対するブランドの本気度を示す、未来への投資」と言い切る。

特殊技術で風の流れをコントロールして取り出された羽毛

流行を競うように各社が進める「サステナブル化」。背景には、従来の大量生産と大量消費に支えられた業界システムへの批判が強まり、限界を迎えていることがある。

環境省によると、2020年に国内で供給された衣服は81・9万トン。一方、廃棄されたのは51万トンで、再利用やリサイクルされたのは27・7万トンにとどまる。衣服の製造工程で排出される端材は年間約4万5000トンで、約1・8億着分の生地に相当。衣服の製造から廃棄までに排出される二酸化炭素は年間9500万トンにのぼる。

消費者の購買意識も変化している。繊維商社の豊島(名古屋市)が8月、全国の15~49歳の男女1000人を対象に実施した調査によると、「ファッションについて環境配慮の意識が高まっている」とした人は35%で、前年比5ポイント増加。「高価でも環境・社会によいものを選ぶ」は46%で、同6ポイント増えた。15~19歳の若い世代で高い傾向が見られた。

博報堂の社内チーム「博報堂SDGsプロジェクト」メンバーの小田部巧さんは「サステナブルかどうかは今後、服を購入する際の重要な基準になる。特に(1990年代後半以降に生まれた)Z世代は学校や受験勉強などでSDGsを学んでいる『サスネイティブ』で、当たり前のようにサステナブルなものを選ぶはずだ」と分析する。

「オーガニック食品のように生産者の情報や製造過程を明らかにしていかなければいけない」。ファッションブランド「イコーランド」を運営する松井智則さんは、そう力を込める。

「顔が見える服作り」を掲げる同ブランドを象徴するのが、製品に取り付ける「信用タグ」だ。紡績や縫製、染め、デザインなど、製造に携わった人の自筆サインを印字していて、その長さは15~30センチに及ぶ。「製造者の誇りと責任を示す証し」という。10月からは、誰がどこで作業したのかという生産工程を電子データなどで提供するサービスも始めた。

「製造責任を明らかにして無駄をなくす。業界に関わる人間の小さな心がけの一つ一つが大きな問題の解決につながるはずだ」

環境配慮進む人工レザー 素材にキノコや植物も

環境配慮型の素材開発も活発だ。今秋に行われたパリコレクションでは、米国の企業が開発したキノコ由来の人工レザーが注目を集めた。

革のような見た目と質感を持つのが特徴。人気ブランドの「ステラ・マッカートニー」は黒のバッグに取り入れた。「キノコは地球を守る存在となり得る」とデザイナー。「アディダス」や、アスレチックウェアブランドの「ルルレモン」も来年、同じ人工レザーを使った製品の販売を予定する。

このほかにも、パイナップルやサボテンなどを素材にした人工レザーも登場。動物愛護や化石燃料の使用削減の観点などからも関心が高まっている。(読売新聞生活部 梶彩夏)

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