映画「梅切らぬバカ」 自閉症の子の自立、悩む母

障害のある子と生きる親の不安は年を重ねるほど募る。自分がいなくなったら、この子はどうなるのか。加賀まりこが演じる本作の主人公も悩める母親の一人。50歳になる自閉症の息子と年老いた母の、切なく、味わい深い物語だ。

歯に きぬ着せぬアドバイスが人気の占い師・珠子(加賀)は、家に客を迎えつつ、一人息子の忠男(塚地武雅)と暮らす。こだわりが強く、生活全般の世話が必要な忠男。客の悩みはスパッと解決できても、息子の将来にまつわる迷いは深まるばかり。珠子は、自立への第一歩として、忠男をグループホームへ送り出す。

映画「梅切らぬバカ」
(C)2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

行動の予測がつかない忠男を、ホームの近隣住民は“厄介者”とみなし、施設ごと追い出そうと動く。集団で責め立てる描写は少し類型的にも見えるが、私たちの内に潜む暴力性や、危うさを映し出してもいる。だから、胸がチクリと痛む。矢面に立って、膝をつき合わせ辛抱強く語りかけるのが珠子だ。人は生きているだけで誰かを妨げるもの。それでも存在を認めてほしい、と。

珠子の家にある古い梅の木は、太い枝が通路にグイッと張り出し、歩く人を邪魔する。当初は反発していた隣家の夫婦も、幼い息子を通して忠男を知り、親しみを抱くようになる。わかり合えれば、多少の迷惑にも目をつぶれる。並んだ二つの家をめぐる変化が、最後にささやかな希望をもたらす。情愛に満ちた加賀、塚地の繊細な演技も素晴らしい。和島香太郎監督。

(読売新聞文化部 山田恵美)

「梅切らぬバカ」1時間17分。シネスイッチ銀座など。公開中。

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