第15回よみうり子育て応援団大賞決定!地域の子育て支援団体を表彰

読売新聞社が、地域の子育て支援活動を応援しようと2007年に創設した「よみうり子育て応援団大賞」は2021年10月、第15回の受賞団体を決定しました。「大賞」などを受賞した4団体を紹介します。

【大賞】NPO法人 子育て応援かざぐるま(札幌市)

「リスがいた!」。札幌市中央区の円山原始林に、子どもたちの声が響く。10月初旬、2、3歳児11人が森を抜け、約1キロ先の動物園を目指した。段差をよじ登り、坂道を駆け降りる。

幼稚園入園前の子どもを対象に毎週、開く「トコトコくらぶ」は、四季折々の自然とのふれあいを通じて、自立心や社会性など生きる力を育てようと2010年から始まった。代表理事の山田智子さん(61)は「半年前は森の斜面に立つことさえ難しかった子も体幹が鍛えられ、走り回っています」とほほ笑む。

自然を生かした取り組みのほか、子育て広場の運営や産前産後の家族サポートなど、スタッフ21人で様々な親子支援を展開する「かざぐるま」は今年、設立35年を迎えた。時代や地域のニーズに合わせ、役割を拡大させながらの歩みでもあった。

当初の活動は、女性の社会参加を後押ししようと、子どもの一時保育や訪問保育が中心だった。1990年代後半になると、核家族化などから相談相手もなく、子育ての不安や悩みを打ち明ける母親が目立つようになった。元幼稚園教諭の山田さんは「子どもへの接し方は助言できても、つらさを抱える母親に、どう向き合えばいいのかわからなかった」と振り返る。

親支援について専門家の話を聞いたり、勉強会に参加したりして学ぶ過程で、親子が気軽に集える広場の重要性を知った。札幌大谷大短期大学部との広場運営などで経験を積み、2009年に「子育て拠点てんてん」を円山公園近くに開設した。

周辺には転勤族が多く、利用する母親は「実家のような安心感がある」と言う。スタッフにはかつての利用者もおり、埼玉県出身の山本愛梨さん(37)は「雪の中での遊ばせ方もここで教えてもらった。少しでも恩返しができれば」と話す。

近年は団体の枠を超え、支援者の育成にも力を入れる。各地の広場や自治体の育児教室などが中止となったコロナ禍では、子育てのノウハウをまとめた100本以上の動画や冊子を作成し、活用を呼びかけた。

「現場で親子の声を聞き、何か支援できるのではないかと動き続けてきた。もっと協力者を増やしていきたい」。山田さんたちの願いは、北の大地に根付いた支援の輪を、さらに広げていくことだ。

【奨励賞】一般社団法人 こどもとおとなのあそびとたいわ(埼玉県上尾市)

絵の具、ビー玉、粘土、木の枝……。棚にぎっしりと並んだ素材から好きなものを選んで、子どもたちが思い思いに作品をつくる。代表理事の一人、樽井花子さん(44)の自宅1階にあるアトリエでは、小学生らを対象に週3回、「アートアソビのへや」を開く。

絵の描き方など技術的な指導は行わず、子ども自身がどう過ごすかを決める。長男(6)と訪れた女性(43)は「手が汚れるのも嫌がらず、本当に楽しそう」と目を細める。

2018年から活動を始め、小学生の子どもを育てる母親4人らで運営する。取り組みのもう一つの柱は「哲学対話」の実践だ。「おばけっているの?」「うそは絶対に悪いこと?」。正解のない問いについて自由に話し合う場を、定期的にオンラインや対面で設けている。

大切にしているのは「表現する自由」と「考える自由」。子どもたちが「将来のため」と言われながら勉強や習い事に追われる中、樽井さんは「ここは何かの役に立つことを目的にしない場所」と説明する。

アトリエに来た子どもには、月1回無料で利用できる缶バッジをプレゼントする。「地域に子どもが安心して遊べる場所が減っている。一人でも多くの子の居場所になりたい」

【奨励賞】NPO法人 子どもセンターぬっく(大阪市北区)

「因数って何?」。弁護士事務所の一角で、女の子が数学の問題集と格闘している。家庭に居場所がない主に10代後半の少女を対象にしたシェルター「ぬっくハウス」の退所者だ。今は一人暮らしをし、高校卒業程度認定試験に向けて勉強する。理事長で弁護士の森本志磨子さん(49)が時折、解き方を教える。

ハウスは大阪府内の弁護士らが2016年に運営を始めた。20年にはシェルターの退所者らが共同で生活する自立援助ホーム「Re―Co(りこ)」も開設。様々な事情で家に帰れない少女たちはSNSで寝泊まりする場所を探すうちに、性犯罪に巻き込まれることも少なくない。森本さんは「安心して心身を休める場が必要」と話す。

電話相談も行っており、年間100件以上に対応する。継続的に支援が必要な相談者や各施設の入所者には担当の弁護士が付き、生活全般や学業、就労などをサポートする。

これまでは目の前の子どもの対応に追われ、情報発信には手が回らなかった。受賞を機に、ホームページをスマートフォン対応にするなど発信にも力を入れる予定だ。「この場所を必要とする子に、しっかりと情報を届けていきたい」と意気込む。

【選考委員特別賞】NPO法人 ファザーリング・ジャパン(東京都千代田区)

よい父親ではなく、笑顔の父親を増やそう――。代表理事の安藤哲也さん(59)が2006年、父親の育児参加を支えようと設立。会員は全国で約290人に増え、出産前の「プレパパ」期から思春期の子どもと向き合うまで、直面する課題ごとに15を超える事業に取り組む。

10年の育児介護休業法改正によって男性の育休取得が進められたことで、年間1000回もの講演依頼を受け、国や自治体、企業と連携する事業が増えた。また、18地域に支部やNPO法人が発足し、大きな広がりを見せる。

コロナ禍で対面のイベント開催が困難になる中、今年6月には総合子育てポータルサイトなどを開始。安藤さんは「当面は男性の育休取得率アップをめざし、究極の目標は『父親支援』の活動が不要になること」と話す。

講評

選考委員長・子安増生さん(京都大名誉教授)

大賞受賞団体は一世代を超える長期間にわたって着実に活躍し、特別賞受賞団体も父親の子育てを真っ先に事業化し息長く活動してきた。奨励賞2団体は活動の質がユニークな点が評価された。独自性と多様性のある多くの団体に巡り合えた。

大日向雅美さん(恵泉女学園大学長)

地域のニーズに即して地道に活動し、なくてはならない地歩を固めた団体が大賞に。一方、社会のニーズを先取りし、動きを全国に広げた団体が特別賞に。活動にかけた年月の重みを思いながら選考できたことは、大きな喜びであった。

山縣文治さん(関西大教授)

子どもは「育てられる存在」であると同時に「育つ存在」でもある。これまでは育てられる存在に視点を置く団体の表彰が多かったが、今回は育つ存在ととらえる2団体が奨励賞を受賞。次の時代を開く大人に育っていくきっかけになれば幸いだ。

吉永みち子さん(ノンフィクション作家)

柔軟に対応しながら存在し続ける大賞受賞団体は、町の底力だ。一方、支援の内容も年々多岐にわたり、究極の形で子どもを守る「ぬっく」と、“役に立たない場”を目指す「あそびとたいわ」。厳しい社会の中で鍛えられた力強さも感じた。

◇◇◇

【選考委員座談会】 受賞団体の活動「子どもの未来守る」

選考委員4人に座談会形式(オンライン)で、これまでの「よみうり子育て応援団大賞」で印象に残ったことや育児を取り巻く環境の変化などについて、語ってもらいました。

――15回を振り返って。

子安 受賞団体には、行政機関などからの認知度が格段に向上し、活動の展望が開けたと喜んでいただけた。すでに亡くなられた、初代選考委員長の小林登さんと選考委員だった頼近美津子さんには道筋をつけていただき、感謝しています。

大日向 賞を創設すると聞いた時に、「奨励賞を作ってほしい」とお願いしたことを思い出します。完成した形の団体を顕彰する大賞はもちろん大切ですが、私たちと共に育ってくれるような団体も応援したかった。受賞した団体には共通点があります。それぞれの地域の特性をしっかり反映し、生活に密着した活動を地道に実践していること。当事者ならではの課題に向き合っていました。

山縣 大賞を受賞後に、国から大きな表彰を受けた団体があります。全国的にはまだまだ知られていない存在でした。新しいところを発掘できたことに、喜びを感じています。大学生らでつくる団体を奨励賞などに選んだことが2回あります。当時は継続性に不安を感じたが、今も活動は続いています。もっと信頼しないといけない、と反省を込めて思います。

――社会のニーズを反映し、応募団体の活動は年々幅が広がりました。子育て支援のあり方はどう変わったのでしょうか。

子安 男女共同参画社会基本法が1999年に施行され、2007年頃から育児をする父親を「イクメン」と表現するようになりました。一方、DV(配偶者らからの暴力)や児童虐待への取り組みも重要な課題となりました。変化は家庭内の問題だけではありません。高齢化と過疎化が進行する地域、子どもの貧困、外国籍の子どもなど、これまであまり光が当たってこなかった問題にも対応する団体が増えました。

吉永 標準的な支援は、子どもが豊かな時間を過ごせるように、親も人生を楽しめるようにサポートすることだったと思いますが、今では子どもの命、未来を守るという形に変化してきています。特にコロナ禍では格差が激しくなり、給食がないと飢えてしまうような子もいる。そのような状況に一生懸命に取り組む様々な活動が生まれていることは、うれしい。

――各地で奮闘する子育て支援団体にメッセージを。

子安 私の人生訓の一つ「いいことも悪いことも長続きしない」を贈りたい。今いいと思っていても悪くなるかもしれないから備えましょう。悪いことも続かないので、くよくよせずに明日は晴れるだろう、くらいの気持ちを持ってほしい。

大日向 コロナ禍で当たり前の暮らしや人とつながることが、どれだけ大切かということがわかりました。共生やつながりを目標に各地で取り組んでいる方々は、活動が必要とされているという自信を持って続けてほしい。

山縣 活動は競争ではない。他に学びながらあまり気負わずに継続を重視してほしい。参加人数などの実績が評価されがちだが、少数でも生きづらさを感じているような親子に着目する団体が増えればありがたい。

吉永 子育て支援で一番大事なのは、支援している人が暗い顔をしないこと。明るい顔で接してこそ、活動もうまく回っていくと思います。状況は厳しいけれど、頑張り過ぎず、活動を楽しむという視点を忘れないでほしい。

2007年創設から延べ3400団体応募

よみうり子育て応援団大賞は、読売新聞社が2007年、地域の子育て支援活動を応援しようと創設しました。毎年、活動実績を顕彰する「大賞」(賞金200万円)1団体と、歴史が浅くても活動の独自性や将来性を重視する「奨励賞」(同100万円)2団体を選び、選考委員特別賞(同20万円)も1~2団体に贈ってきました。15回までの応募総数は延べ3400団体に上ります。

大賞受賞団体が主催するイベントに講師を派遣し、奨励賞受賞団体には大日向さん、山縣さんが訪問。活動についてアドバイスもしてきました。

読売子育て応援団歴代大賞受賞団体 大手小町 読売新聞

初回に大賞を受賞したNPO法人ハートフレンド(大阪市東住吉区)では、全国から見学や講演依頼が相次ぎ新たなつながりが生まれ、地域でも応援してくれる人が増えたといいます。代表理事の徳谷章子さん(66)は「活動の幅が広がり、成長することができた。これからも賞を励みに、子どもも大人も笑顔になれるように頑張りたい」と話します。

子育て応援団大賞は15回をもって終了し、今後は後継の子育て応援企画として、読売新聞のウェブサイト「OTEKOMACHI(大手小町)」で、様々な分野の専門家が、子育て中のママやパパにエールを送るコラムを掲載します。

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