映画「スウィート・シング」 子供たちの「幸福」な逃避行

美しい歌声を持つ15歳の少女ビリー(ラナ・ロックウェル)と、11歳の弟ニコ(ニコ・ロックウェル)は、親を愛している。でも父アダム(ウィル・パットン)も、母イヴ(カリン・パーソンズ)も自分のことでいっぱいで子供たちを傷つける。大切なものを見失った大人たちに心がぺしゃんこにされる前に逃げ出さねば。姉弟は友人マリク(ジャバリ・ワトキンス)と3人で旅立つ。

悲しい現実から飛び出して走り出した子供たちの危なっかしくてでも幸福な時間をつかまえた本作は、忘れていたいとおしい記憶を喚起するイメージで出来ている。遊ぶように働き、働くように遊ぶ子供たち。味気ない世界がふいに色づいて見えるような感覚――。そうした時間が、スーパー16ミリで撮影した映像の独特の質感や古典的な切り替え技法、モノクロ+部分カラーの仕立てと相まって心に響く。どこか懐かしい感覚を味わう喜びを与えてくれる。子供の時間が永遠でないように、映画が終わればそれを手放さねばならないが、脳裏には鮮やかに焼き付く。

スウィート・シング

監督は、1992年の「イン・ザ・スープ」で米インディーズ映画界の雄として脚光を浴びたアレクサンダー・ロックウェルで、日本での新作公開は四半世紀ぶり。姉弟を演じる才能豊かな2人は、監督と妻のパーソンズの子供たち。父役の名優パットンも監督の親友。映画作家ロックウェルにとって大切なものを高純度で真空パックしたような珠玉の映画だ。

(読売新聞文化部 恩田泰子)

「スウィート・シング」1時間31分。ヒューマントラストシネマ渋谷など。公開中。

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読売新聞文化部の映画担当記者が、国内外の新作映画の見どころを紹介します。
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