【2021衆院選 くらしの課題】子育て支援はどうなってる?

衆院選の投開票が31日に迫っている。次の政権はどんな視点で選べばいいのだろうか。くらしに関わる課題や論点、対策について、各分野で専門家2人に聞いた。上は子育てについて。

支援サービス 改善急務

淑徳大学短期大学部教授(子ども家庭福祉) 佐藤まゆみさん

核家族化が進んだことによって家族の構成人数が減り、地域とのつながりも薄れている。今は、家庭内で誰か一人が倒れただけでも、子育てはたちまち危機に直面する。ひとり親家庭や障害がある子どもを育てる家庭ばかりでなく、福祉サービスの支援対象になっていなくても、様々な困難に直面している家庭もあるだろう。

家族の姿も多様化している。未婚や内縁関係で子育てする家庭、里親や養子縁組家庭、再婚などで新しくできた家庭、国際結婚などで文化や言語の違う家庭もある。

そうした親子にとって、現在の子ども家庭福祉施策は、利用しやすいものになっていない。例えば子育て支援、虐待防止、障害児支援などと専門領域ごとにサービスが縦割りになっていて、その間に支援の切れ目が生じる。サービスが複雑なため、必要としている家庭に支援が届きにくい。

佐藤まゆみ
さとう・まゆみ 1981年、千葉県生まれ。4月から現職。日本子ども家庭福祉学会理事。社会福祉士、保育士。市町村の子ども家庭福祉行政のあり方を研究する。

子どもを産み育てていく過程で、誰もが助けが必要となった時にすぐに手を伸ばせるよう、相談や支援の間口を広げ、専門領域の垣根をなくし、抵抗なく利用できるようにする必要がある。親子になじみのある身近な保育所や子育てひろばなどで、自然にサービスに接し、ちょっとした相談ができるようにすることが大切だ。

手厚い支援を必要とする家庭が利用できるサービスの量も不足している。例えば児童虐待の相談件数のうち、子どもが施設入所などとなるケースは3%ほどしかなく、9割以上は家庭で生活している。しかし、市町村が提供するショートステイや一時預かりなどの施策は、自治体の財源不足や利用者の費用負担があるため十分な利用ができていない。サービスを質、量ともに拡充し、必要とする人に届けるための施策と体制づくりを進める必要がある。

介護保険の導入で介護は社会化され、サービスの利用が当たり前になったが、子育ては私的な責任が強調される。介護のケアマネジャーのような専門職が伴走して必要なサービスの計画を作り、調整する仕組みにもなっていない。

子育て世帯への現金給付は、その目的を明確にする必要がある。政策論争を通し、子育ては社会全体で行うものだという理解が広まることを期待したい。

ひとり親給付 まだ必要

認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事長 赤石千衣子さん

コロナ禍が長引いた結果、最も影響を受けている世帯の一つが母子家庭だ。パートやアルバイトなど非正規雇用の母親が多く、経済的に困窮する家庭は元々少なくない。コロナの影響で職場の勤務シフトを削られるなどで収入がさらに減少している。今、最も求められているのは緊急の家計支援だ。

ひとり親の支援団体などで、全国のシングルマザー539人に昨年7月から継続的にアンケートを実施している。2回目の緊急事態宣言が出ていた今年2月は、東京都内の調査対象の1割近くで、子どもの体重が減ったことが明らかになった。3割超が「お金がなくて米などが買えないときがあった」と答えた。

「住宅費や光熱費などの固定費を支払うと、食費などを削らざるをえない」という声が目立った。食費を切り詰めて、何とか乗り切っている実態が浮き彫りになった。

国は低所得のひとり親世帯への特別給付金を支給しているが、今後も現金給付を一定期間、続けてほしい。休校や休園で給食が食べられず、栄養不足になっている子どももいる。自治体による昼食代などの支援も有効だろう。

長期的には、就労支援にさらに力を入れる必要がある。厚生労働省によると、日本のシングルマザーの就業率は81.8%(2016年度)と、世界的に見て非常に高い。しかし、母子家庭の年間の就労収入は平均200万円と、著しく低い。約半数が非正規雇用だからだ。安定した就労収入を得られるよう、最低賃金の底上げなど、非正規で働く人々の待遇を改善してほしい。職業訓練の給付金を拡大することも一つだろう。

赤石さん
あかいし・ちえこ 1955年、東京都生まれ。シングルマザーの当事者で、20代から前身の団体に参加し、2013年から現職。法制審議会家族法制部会のメンバー。

離婚後の養育費の不払いも大きな問題だ。親には法律上、子どもを扶養する義務があり、特段の事情がない限り、養育費を支払う責任があるが、受け取っている母親は4人に1人だけ。不払い時にはマイナンバーを活用して回収できる仕組みを作ったり、国や自治体が立て替えたりすることも検討してほしい。

我々の団体には、困窮が長引いた結果、「これ以上頑張れない。無理心中するしかないのか」といった相談も寄せられている。個人の頑張りではもう乗り切れない。国はこうした家庭を見捨てず、危機感を持って対処してほしい。

◆メモ 国立社会保障・人口問題研究所によると、国や地方自治体が支出する保育サービスや児童手当などの「家族関係社会支出」が、国内総生産(GDP)に占める割合(2017年度)は日本は1.56%。スウェーデンの3.4%、イギリスの3.24%、フランスの2.88%などと比べ、低い水準にある。

衆院選に向けた各政党の子育て支援に関する公約では、高校3年生までの子どもへの10万円給付や、子ども・子育て予算の倍増などが発表されている。

(聞き手=読売新聞生活部・宮木優美、野口季瑛)

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