映画「TOVE/トーベ」 ムーミン作者 自由を渇望

世界中で愛されているムーミン。作者トーベ・ヤンソン(1914~2001年)は、身近な人々をモデルに不思議な生きものたちを創造した。フィンランドで、同性同士の恋愛が法律によって禁じられていた時代、女性との愛に生きたことでも知られる。その前半生に光を当てた伝記映画だ。

1944年、第2次世界大戦下のヘルシンキ。ソ連軍の爆撃が続く中、トーベ(アルマ・ポウスティ)は「ムーミントロール」の絵を描きためていた。「芸術ではない」と切り捨てる彫刻家の父に反発しつつ、画家を目指す彼女にとっても手すさびにすぎない。議員でジャーナリストのアトス(シャンティ・ローニー)という恋人がいながら、舞台演出家ヴィヴィカ(クリスタ・コソネン)が放つ奔放な魅力にひかれていく。

自由であること、ありのままを受け入れること。ムーミンの物語は、メルヘンを通して人間の理想的な在りようを暗示する。だが、フィンランド出身のザイダ・バリルート監督は、ムーミンを生んだ30代のトーベを、いつも「渇き」を抱えた人として描き出す。真の芸術家になる。父に認められたい。恋人を独占したい。渇望にとらわれた姿は、後の国民的作家というより、傷ついた一人の女性だ。

戯れにつづった物語が彼女を救ったのかもしれない。印象的に差し挟まれたダンスシーンが、そう強く実感させる。踊ることを好んだトーベ。一心に床を踏みならす横顔に、満たされない魂が揺らいで見えた。

(読売新聞文化部 山田恵美)

映画「TOVE/トーベ」(フィンランド、スウェーデン)1時間43分。新宿武蔵野館など。公開中。

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