人気高まる平屋、家族のつながり実感できて子育て世帯も注目

平屋が人気だという。シニア向けの家というイメージを抱いていたが、近年、子育て世帯など若い世代も注目。住宅メーカーは販売を強化する。その魅力と、盛り上がりの背景は。

ほどよい距離感、家族の気配を感じる心地よさ

兵庫県明石市の公務員男性(47)は2018年、延べ床面積81平方メートルの4LDKの平屋を建てた。「沖縄で勤務していた時、平屋住まいの家族がほどよい距離感で暮らしている様子を見て、憧れていた」

妻(42)と小中学生の子ども3人の5人家族。リビングは広く、寝室の面積は最低限にとどめるなど、間取りを工夫。3か所の中庭から光と風を取り込む。「家族の気配を感じ取りながら、心地よく過ごせる」と妻も満足そうだ。

国土交通省の建築着工統計によると、20年度の平屋の着工件数は4万7452件と、12年度の3万1217件より5割増。住宅全体に占める割合も、20年度は11・5%と、12年度の6・9%より約7割増えた。

家事しやすく子育て世帯にも人気、メーカーも新商品投入

なぜ、平屋が人気なのか?

不動産・住宅情報サイト「SUUMO(スーモ)」副編集長の中谷明日香さんによると、階段の昇降がないほか、重心が低く、地震や強風に強いという安心感もあり、シニア層中心に支持されていた。しかし、近年の需要を先導しているのは、30~40代の子育て世帯や夫婦2人世帯だ。

「核家族で育ち、共働きが当たり前。家族のつながりや効率的な家事動線、家で過ごす時間の充実が大事で、そうした思いがかなう」。リビングとウッドデッキをつなげたり、勾配天井を設けたりと、個性的な設計もしやすい。

明石市の公務員宅を設計した「arbol(アルボル)一級建築士事務所」(大阪)の堤庸策さんは「若い世代は、戸建て=2階建てというイメージが薄い」と指摘する。「住まいの原体験が団地やマンションという人は、コンパクトでフラットな空間に親しみや利便性を感じている」

6月に平屋を新築した茨城県筑西市の会社員、佐藤泰彦さん(25)は、家探しで見学した2階建てを、「細切れの間取りが子育てに不向きと感じた」。新居はキッチンや洗面などの水回りが一直線に連なり、「家事も育児も快適。妻の評価も高い」と喜ぶ。

住宅産業も敏感に反応する。平屋の契約者の半数を20~30代が占めるパナソニックホームズ(大阪)は4月、リビングのように外で過ごせる深い軒下やロフトなど、若い世代に人気のプランを盛り込んだ新商品を発売した。

ケイアイスター不動産の関連会社が販売する平屋は安価が魅力だ(水戸市で)

埼玉県本庄市のケイアイスター不動産は昨年、平屋の専門会社を設立。1LDK(約58平方メートル)599万円からと安価で販売する。「シングルマザーや夫婦2人世帯などに訴求したい」

大東建託(東京)は昨年11月、賃貸向け平屋住宅(2LDK、53・66平方メートル)の試行販売を始めた。間取りを柔軟に変えられるのが特徴だ。

家探しをサポートする一般社団法人住まい選びコンシェルジュ協会(神奈川)代表理事の山田剛司さんは「テレワークの浸透などでオンオフの境目が時間的にも空間的にも曖昧になり、家族との距離感もほどよくなっている」と指摘。「住宅メーカーの積極的な動きもあり、平屋人気はますます高まり、幅広く受け入れられていくだろう」とみる。

広い土地 防犯・浸水対策も必要になる

平屋暮らしには注意点もある。

まず、建築には、ある程度の土地の広さが必要になる。ポイントは、敷地面積に対する建築面積の割合を示す「建ぺい率」と、敷地面積に対する延べ床面積の割合を示す「容積率」だ。

たとえば、建ぺい率50%、容積率100%の場合、100平方メートルの土地に、平屋で建てられる延べ床面積は最大50平方メートルだが、2階建てだと床面積は100平方メートルまで確保できる。

「これが、地価の高い都市部で平屋が少ない要因」と、住まい選びコンシェルジュ協会の山田さん。建築費も、2階建てと比べると基礎や屋根が広くなって、工事が大がかりになるため、やや割高になりがちだ。

全ての部屋と窓がフラットになるため、防犯面やプライバシーの確保などにも配慮が必要。大雨などによる浸水にも、2階建て以上にしっかり備えておく必要がある。

山田さんは「平屋に限ったことではないが、立地に注意することが大切」と話す。

2階建て住宅は、人口増と都市集中を背景に広がったとされる。人口減と「密」回避が進む今は、平屋が見直される時代になのかもしれない。

 (読売新聞生活部・斎藤圭史) 

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