益若つばさ避妊リング公表から考える、日本でサヨナラしたい価値観

女性の人生に欠かせない「避妊」の話。正面から向き合いたいところですが、世間では「女性の避妊」について「当たり前」ととらえる人と、「隠さなければいけないもの」としてとらえる人がいます。まだまだ全面的にオープンな雰囲気だとはいえません。今回は、筆者の出身であるドイツの状況とも比べながら避妊について考えてみたいと思います。

避妊について誤解している人たち

先日、モデルでタレントの益若つばささんがユーチューブおよびテレビ番組で、避妊リング(子宮内避妊具)の「ミレーナ」を装着したことを公表しました。もともと生理が不安定で悩んでいたところ、友達に紹介され、装着を決意したそう。生理をコントロールできる避妊リングには多くの女性が関心を持っており、益若さんの公表を受け、共感の声が相次ぎました。その一方で、一部の人から益若さんに対し「性に奔放なんですね」などといった言葉もあったといいます。

生理痛に悩む女性が解決策を探っていくなかで、ミレーナにたどり着くことは、よくあることです。それなのに「性に奔放」などと勘違いする人がいます。

このことも残念ですが、それに加えて筆者が残念に思っていることがあります。それは、「避妊目的」で避妊リングを装着する女性や、ピルを飲む女性であっても、表向きは「生理痛を和らげるため」と言わざるを得ないような風潮のことです。

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「避妊具」はその名の通り、本来は避妊を目的とするものなのですから、使用の際に女性が「避妊のため」と言えないような雰囲気は、やはり理不尽だと思うのです。目的は避妊でも、生理痛の緩和でもよく、自由なはずです。

それなのに、女性が「避妊」を連想させる言葉を発すると、嫌悪感を示す男性(女性も)がいるのは、生理と同様に「今までこのテーマが公の場であまり語られてこなかった」ところに原因があるのかもしれません。

色んな避妊方法についてオープンに語ろう

筆者の出身地ドイツでは、カトリックの影響が強い地域もあり、かつては信仰深い人の中に「避妊は罪」と考える人さえいました。でもそれも、“今は昔”の話です。

現在のドイツでは、「セックスをすることは人間として自然」「でも妊娠してから、産むか産まないかを考えるのは無責任」だと考えられています。そのため、「避妊をきちんとすることは人間としての責任」というのが社会の共通認識です。

避妊は男女二人の問題であるという意識も強いため、ドイツで男性が「避妊をする女性」を非難することは聞いたことがありません。

ドイツではカップルが付き合い始めて日が浅いうちは、性病を防ぐ目的もあり、コンドームを使うことが多いようです。長く同じパートナーと付き合う安定感のあるパートナーシップの場合、途中で避妊方法を変えることを考えます。ピルを飲む女性もいますが、ピルには「飲み忘れ」の問題があるため、最近ドイツでは、肌に貼るパッチ剤や自分で挿入可能な避妊リングを使う女性が増えました(ただし、日本では認可されていません)。

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どの避妊方法にもプラス面とマイナス面があります。

パッチ剤は1週間ごとに貼り替えながら、3週間貼り続け、その後1週間は貼りません。ピルのように「毎日飲まなければいけない」というストレスはないものの、毎週決まった曜日に貼り替える必要はあります。またパッチ剤を腕の外側に貼る場合、避妊をしていることが周囲に分かってしまい、プライバシーが保てない可能性もあります。もちろん、おなかやお尻などの部位に貼ることもできますが、皮膚がかぶれる女性もいるようです。

ドイツでは「自分で挿入するタイプの避妊リング」を使う女性も

医療機関で装着してもらうタイプの避妊リングは、ヨーロッパでだいぶ前から一般的に使われています。3年~5年と長い期間にわたって避妊が可能であるため、「次の何年かは子供を望まない」という考えを持ち、「長いスパンにわたり避妊をしたい女性」に向いているといえるでしょう。一度、装着してもらえば、パッチ剤やピルの服用とは違い、自分でスケジュールを管理する必要がありません。生理の不調に悩んでいる女性にとっては、装着によって生理の不調が改善されるなどの利点があります。

「医師に装着してもらうため安心」と考える女性もいますが、ドイツでは、もっと手軽な自分で挿入できるタイプの避妊リング、中でも米国製の「ヌーバリング」が人気です。

メーカーのサイトによると、指でリングを押しつぶして膣に挿入し、21日間体内に入れたままにします。その後、自分でリングを取り出し、7日間リングをはずしたままにします。リングには2種類の女性ホルモン、エストロゲンとプロゲスチンが含まれ、ピルと同じように作用します。これの利点は、なんといっても「自分で挿入し、また取り出すこともできる手軽さ」にあります。

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筆者がドイツの婦人科のウェブサイトをチェックしたところ、「夜勤があるなど不規則な仕事スタイルの女性は、毎日決まった時間にピルを服用することが困難であるため、自分で挿入するタイプの避妊リングがお薦め」との記載がありました。

語り合う女性

昔と違い、今のドイツで避妊は「すべきか、否か」ではなく、「ライフスタイルに合わせてどのような避妊をするか」にスポットが当たっており、多くの人が避妊方法について情報交換をしています。避妊の仕方についてオープンに語れる雰囲気があるのです。

前述のドイツの婦人科のウェブサイトで「夜勤」に言及があったように、女性が各自「自分の仕事やライフスタイル」「自身の体質や性格」に合った避妊方法を積極的に追求している印象です。

筆者の友達のドイツ人女性は「石橋を叩いて渡る」タイプの性格ですが、「心配だから、私は(自分で挿入するタイプの)避妊リングとコンドームの両方を使って、大事をとって『ダブル』で避妊している」と話していました。また欧州出身の別の女友達は「避妊はいろいろ面倒だし、生理も面倒だから、子供は欲しくないし、そのうちヨーロッパで子宮の摘出手術を受けることを検討している」と語りました。

共通しているのは、この手のことについて割とオープンに話す人が多いということです。特筆すべきは、ドイツにも生理痛など生理の不調に悩む女性はいるものの、社会に「避妊は当然」だという考えがあるため、避妊具の話になった時、女性は「生理痛を緩和するため」などといった「オブラートに包んだ話し方」はしないのです。

日本のように「あくまでも生理痛を和らげるため」という「世間体」を保ちながら避妊具について語らなければいけないのはなんだかもどかしいなあ、なんて思ってしまいます。これは女性本人の問題というよりも、やはり「社会がそうさせている」部分があるのではないでしょうか。

女性が避妊具を使う理由として「生理痛を和らげる」は「アリ」だけれど「避妊」は「ナシ」という価値観とサヨナラできたら、男女ともにずいぶん楽になれるのになあ……と思います。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住23年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」
。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)、「なぜ外国人女性は前髪を作らないのか」(中央公論新社)。


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