黒木華 主演映画「先生、私の隣に座っていただけませんか?」 

現実か妄想か 不倫夫を翻弄

漫画家夫婦の不倫騒動をユーモアとスリルを交錯させながら描く「先生、私の隣に座っていただけませんか?」(堀江貴大監督)が公開された。主演の黒木華は、夫と自分の「不倫」を描き、夫の心に波紋を広げる妻役。どこまでが現実で、どこからが創作か。観客をも翻弄ほんろうする役どころを巧みに演じている。(久保拓)

黒木演じる佐和子と俊夫(柄本佑)は、結婚5年目の夫婦。俊夫は編集者の千佳(奈緒)と不倫中だが、ばれていないと信じている。しかし、佐和子の新作漫画の原稿を読み、登場人物が自分たちそっくりで、己の不倫をそのままなぞるような展開だと気づき恐れおののく。

「佐和子さんは口に出して思いを伝えるのが得意ではなく、同時に仕事に対してストイックな人。だから、2人の共通点の漫画を介して自分なりに伝えるんです」。自分も人見知りだったため、佐和子の控えめな性格は理解できるという。「ただ、私は思ったことがすぐ顔に出るので、分かりやすいですけどね」

佐和子(黒木華、右)と俊夫(柄本佑)は平静を装い、漫画を通して不倫について対話する (c)2021『先生、私の隣に座っていただけませんか?』製作委員会

本心を明かさぬ佐和子のミステリアスさと、慌てふためく俊夫の滑稽さが見る者を引きつけ、現実世界と、佐和子の漫画の中で描かれているドラマが交錯する。後者で、佐和子は夫の不倫に気づき、自分が通う自動車教習所の先生(金子大地)にひかれていく。それは現実のようでも妄想のようでもある。「見る人によってとらえ方が全然違う。脚本を読んだ時、そこが面白いと思いました」

漫画に描かれたドラマを演じる時は、少し声のトーンを上げて感情が表に出やすいようにしたが、極端に演じ分けたりはしていない。「俊夫さんが考える佐和子さんの『枠』からはみ出すと、それは『うそ』になってしまう。現実なのか妄想なのか分からないよう心がけました」

「いつも『こう動こう』とは決めずに撮影現場に入るんです」=宮崎真撮影

自身は31歳、堀江監督は33歳、共演する柄本は34歳と、同世代が集まった。「感覚がすごく近いから、一緒に作っている感じが強くて。大学の映画学科にいた頃を思い出しました」。カメラが回ると、柄本は完全に俊夫になりきり、「ただ俊夫さんの反応を楽しむだけで演じられた」という。

山田洋次監督の「小さいおうち」の演技で、第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞を受賞。日本アカデミー賞では既に3度、最優秀助演女優賞を受賞しているが、「私ってそんなにうまいほうではないので」と意外な言葉を口にする。「自分のやり方とかこだわりも全くないんです。自分でできることってすごく限られていると思うから」

でも、だからこそ、現場では共演者の動きなど、「その場で起きるものを感じて演じ続けたい」という。今後は、世界中でネット配信される映画やドラマに出演してみたいと話す。「やれることはなんでもやってみたい。そんな性格なんです」

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