映画「アーヤと魔女」大人あやつり 世界を変える

アーヤと魔女

「異色」ずくめだが、その伸びやかさに魅了されてしまう。宮崎吾朗監督による本作は、スタジオジブリ初のフル3DCGアニメーション映画。しかも、ヒロインは「まっすぐな優等生」ではなく、憎たらしい表情さえしてみせる。だが、それが小気味よい。吾朗監督は、父・宮崎駿監督による「ハウルの動く城」の原作者、英国の作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズの児童文学を繊細に、でもおおらかに映像化している。

アーヤ(声・平澤宏々路こころ)=写真中央手前=は、赤ん坊の時に親元を離れ、身寄りのない子どもが暮らす「子どもの家」で育った10歳の女の子。ある日、魔女のベラ(同・寺島しのぶ)と、悪魔を手下に従える小説家・マンドレーク(同・豊川悦司)に引き取られる。2人の家で助手として働き始めたアーヤは、魔法を学んで楽しく暮らそうと模索する。

アーヤは、「かわいそうな女の子」ではない。ベラに無条件で働くよう脅されると、「おばさんが私に魔法を教えてくれるかわりに、私がおばさんの助手になったげる」と言い返す。理不尽な扱いをされると、いたずらで対抗したり、取り入って有利な条件を引きだそうとしたりする。本名は「アヤツル」だが、小さな体で大人と渡り合い、「あやつろう」とする姿はたくましく、しかも魅力的に映る。物語を彩る音楽は、1970年代英国ロック風。少し戸惑いながらも、次第に気づく。アーヤの芯の強さは、過去のジブリ作品のヒロインにも通じるのだと。一筋縄ではいかない気配を漂わせたベラや、無愛想なマンドレークも、アーヤに振り回された時に見せる人間くさい反応から、次第に愛すべき存在に見えてくる。滑らかなフル3DCGで描かれていても、登場人物はぬくもりに満ちている。

細部にいたるまで描き込まれた、ジブリ作品ならではの映像も楽しい。雪道を走る車のタイヤにしっかりまかれたチェーン。裏庭にびっしりと植えられた薬草の数々。ともすれば見逃してしまいそうだが、妥協のないリアリティーは映像に迫力を与え、観客を自然にひきつけていく。

アーヤは魔女の下で働きつつ、持ち前のしたたかさと明るさで自分が生きる世界を楽しく、心地よく変えていく。周囲の大人も、まんざらではなさそうだ。無理もない。眉間にしわを寄せてにらみつける姿さえ魅力的なのだから。はっ、これって、既に「あやつられて」いるのかも。

大人と子どもの垣根を取り去り、誰でも笑顔にしてくれる映画だ。(久保拓)

アーヤと魔女(スタジオジブリほか) 1時間23分。TOHOシネマズ日比谷など。公開中。

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