映画「子供はわかってあげない」少女と実父 ひと夏の再会

子供はわかってあげない

冒頭、カメラは主人公の少女・美波(上白石萌歌=写真)にぴったりと寄り添う。真夏のプールで泳ぐ姿を主観映像や水中撮影で描く。学校の階段を一段飛ばしで駆け上がる姿を延々と見せる。水の中の心地よさ。軽々とした体からはじけ出る若い力。今は暑いだけの夏が、子供の頃はあんなふうに気持ち良かった。忘れていた感覚が、少女の肉体を通してありありとよみがえってきた。

田島列島の同名漫画を「横道世之介」の沖田修一監督が映画化した。夏休みの少女の成長を描いた、輝くような青春映画である。

美波は高校2年。アニメおたくで水泳部所属。好きなアニメを父親と見て一緒にエンディングテーマを歌い踊るほど家族とは仲がいいが、実は幼いころ離婚して家を出た実父(豊川悦司)がいた。あるとき、アニメが縁で書道部の門司くん(細田佳央太かなた)と友だちになる。彼女は門司くんの兄が探偵だと聞き、実父捜しを依頼。見つかった実父は新興宗教の教祖で今は海辺の町にいるという。夏休み、美波は実父に会いに行く。いつまでも帰って来ない彼女を心配し、門司くんが跡を追う。

(C)2020「子供はわかってあげない」製作委員会

若者たちに寄り添う前半。沖田監督は珍しく長回しの移動撮影を多用し、テンポよく物語を進める。美波が実父に会う後半からは、沖田監督らしい「」が描かれる。例えばテーブルを挟んで向き合う実父と美波。彼らを左右対称に真横から捉えた構図が何度も出てくる。人間関係の距離感が、2人の実際の距離を強調した構図で表現される。だがお互いの気持ちが通じていくにつれ、距離は同じでも、2人の間にある空気はだんだんと優しく、温かくなっていくように見える。

構図だけではない。カットとカットの間。セリフの間。それらを積み重ねてオフビートなリズムを作ることで、微妙な感情を描き、ユーモラスな雰囲気を醸し出す。森田芳光監督の影響もあるが、雰囲気はより柔らかく、沖田監督独特の間になっている。

海辺のシーンでは、青い空や海に美波の焼けた肌の色が映える。子供らしくはしゃぐ彼女の明るさがまぶしい。そしてラスト。学校の屋上で、美波と門司くんが正座して向き合う。緊張すると笑い出してしまう美波は、笑いながら涙を流して門司くんに気持ちを打ち明ける。奇妙に見えて、しかし真っすぐな少女の気持ちを、上白石が実に見事に表現する。カメラは向き合う2人を真横から映す。2人の「間」のりんとした美しさに深く胸を打たれた。(編集委員 小梶勝男)

子供はわかってあげない(アミューズ、日活ほか) 2時間18分。公開中。

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