「見るだけで涙」リトさんの葉っぱ切り絵アートの幸せな世界

傘を差してバスを待つカエルの親子、泣いているウサギ君を慰めるクマ君……。小さな葉っぱを切って作った「葉っぱ切り絵」の作品からは、動物たちの会話が今にも聞こえてきそうです。

葉っぱ切り絵アーティスト、リトさんの作品が「まるで絵本みたい」「優しい世界に癒やされる」などと女性たちの支持を集めています。リトさんは、発達障害のひとつである注意欠陥・多動性障害(ADHD)による過度な集中やこだわりを創作に生かし、5月には初の作品集も出版しました。

「バス、まだかな・・・?」と題した作品 リト@葉っぱ切り絵さんの作品集「いつでも君のそばにいる」(講談社)より 読売新聞 大手小町
作品集「いつでも君のそばにいる」(講談社)より

リトさんがSNSで葉っぱ切り絵の投稿をはじめたのは、2020年1月。作品集は、これまでに手がけた89作品を収録しています。

「バス、まだかな…?」と題した作品には、大人のカエルと6匹の子どもガエルが葉っぱの傘を手にバス停に並んでいます。「いつでも君のそばにいる」という作品では、目から涙がぽろりとこぼれたウサギ君に、森の仲間たちがそっと寄り添います。

「いつでも君のそばにいる」と題した作品 リト@葉っぱ切り絵さんの作品集「いつでも君のそばにいる」(講談社)より 読売新聞 大手小町
作品集「いつでも君のそばにいる」(講談社)より

ミリ単位の精巧な作業

12センチほどの大きさの葉っぱをミリ単位で切り抜いて、動物の表情や草木の揺れまで表現する精巧な作業には、驚かされます。優しい作風に想像力がかき立てられ、心が温かくなります。

リトさんは、1日1作品を作ることを心がけ、その日のうちにインスタグラムとツイッターに投稿しています。作品のテーマは、国内外のアート作品や絵本、動物の写真から想像したりしているそうです。ときには葉っぱの形からイメージをふくらませることも。

材料となる葉は、自宅近くの大きな自然公園で拾いためておき、枯れないように加工。まず画用紙に下絵を描いて、次に、葉の裏側に水性ペンで下書きします。動物の目など、小さな箇所からデザインナイフで切り抜きはじめ、最後にアウトラインを切り抜きます。たいてい4、5時間かけて仕上げるそうです。

「完成したら作品の大きさが分かるよう手に持って、空にかざして撮影するというのが僕のこだわり」とリトさん。手に持ったときに切り絵が自立するように作るのは難しく、切り方に工夫が必要だといいます。見る人が優しい気持ちになれるような作品作りを心がけているそうです。

投稿を重ねるうちに、世界中で評判となり、作品は海外のメディアにも紹介されるようになりました。18万人いるインスタグラムのフォロワーの8割は女性。「見るだけで涙が出て幸せな気持ちになれます」「寝る前に見ると、明日も頑張ろうという気持ちになります」などのコメントがさまざまな国や地域から寄せられています。

作品集を出版したリト@葉っぱ切り絵さん 読売新聞 大手小町
リト@葉っぱ切り絵さん

発達障害を公表する理由とは

発達障害であることを明らかにして活動しているのには理由があるといいます。

「もともと絵が得意だったわけでも、切り絵を勉強したわけでもありません。大学卒業後、サラリーマンとして約10年働きましたが、物忘れが多くて、何をするにも時間がかかって怒られてばかり。何で自分はこんなに仕事ができないんだろうと悩む日々でした」と振り返ります。

3年ほど前に病院でADHDと診断され、つらさの原因が分かって少し気持ちが楽になったといいます。会社を辞め、自分に何ができるかを考えた時、「ADHDの特徴でもある、細かい作業に集中しはじめると、周りの声も聞こえないくらい没頭できる自分にアートが向いているのでは」と取り組み始めます。まもなくインターネットでスペインの作家によるリーフアートを見て衝撃を受け、独学で葉っぱ切り絵を始め、現在に至ります。

「ひとりじゃないよ」と題した作品 リト@葉っぱ切り絵さんの作品集「いつでも君のそばにいる」(講談社)より 読売新聞 大手小町
作品集「いつでも君のそばにいる」(講談社)より

診断を受けたことで、自分の得意、不得意が見えてくるようになったというリトさん。「怒られ続けの人生で、自分はなんてだめな人間なんだって思ってきた僕が、場所を移すことによって、会社員時代のコンプレックスや弱みを強みにでき、輝けた。同じような境遇で悩んでいる人に、得意なことを生かせる場所があることを伝えたい」。待ってくれる人のために、これからも作品の制作を続けていくそうです。
(読売新聞メディア局 谷本陽子)

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リト@葉っぱ切り絵
葉っぱ切り絵アーティスト

1986年、神奈川県生まれ。2020年より独学で制作をスタート。インスタグラム、ツイッターに毎日のように投稿する作品が注目を集める。21年5月、作品集「いつでも君のそばにいる」(講談社)を出版した。

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