映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」ゆがんだ社会に一撃

プロミシング・ヤング・ウーマン(米)

女性主人公が、レイプされたことを苦に自殺した親友のかたきを討つ。単なる復讐ふくしゅう劇ではない。スリラー、ホラーに、甘いラブストーリー。毒気のある喜劇、冷徹な悲劇。全てをミキサーに投入して高速回転させたよう、と言うべきか。ゴクリと飲めば苦みで一気に目が覚める。「Me Too」時代の最先端で男と女を挑発する、荒ぶるエンターテインメントだ。

脚本・監督は、英国の女優、プロデューサーのエメラルド・フェネル。先の米アカデミー賞で女性として13年ぶりに脚本賞を射止めたのは記憶に新しい。

29歳のキャシー(キャリー・マリガン=写真)は、医大で学ぶ前途有望な女性――プロミシング・ヤング・ウーマン――だった。が、7年前に中退。コーヒーショップで働き、恋人も友人もなく、両親と実家に暮らす。実は裏の顔が。セクシーないで立ちで夜な夜な盛り場に出没しては泥酔したフリをし、そんな彼女を自宅に連れ込んでレイプしようとする男に、キツい一撃を見舞っているのだ。

奇行の理由は、ともに医師を目指した幼なじみが、学内パーティーで酔い潰れた末にレイプされたこと。犯人は「人気者」の男子学生。被害の訴えは学部長や弁護士にもみ消され、親友は命を絶った。怒りの炎に今も火をくべ、キャシーは身一つで、生傷をつくりながら世直しにいそしむ。矛先は、過去の事件の関係者4人へも。だが、医大の同級生で小児科医となったライアン(ボー・バーナム)と再会後、予定外の恋に落ちてしまう。計画を続けるのか、それとも――。

(C)2020 Focus Features, LLC.

爽快さも救いもない復讐劇を、ポップでメルヘンなパステルカラーでキラキラに彩ってみせるフェネル、恐るべし。キャシーの昼間の装いや戦闘モードに入る部屋は、年齢に不釣り合いなほどガーリー。時を止めたような少女的甘さに身を浸す彼女は、頭脳明晰めいせきでも、たぶん壊れている。のっけからそう思わされる。

ゆがんでいるのは、キャシーが罰する者も同じだ。「ガキだった」と言い訳する主犯はもちろん、「泥酔する方にも落ち度があった」などとのたまう、女友達や女性学部長ら。「いい人」に見える彼ら、彼女らは、自身のゆがみに気づかない。

アンタもそうでしょ? こちら側にも矢が飛んできたようで、がくぜんとする。「こうあるべき」と凝り固まった物差しにあてはめ、誰かを傷つけていないか。キャシーが最後の戦いに赴くクライマックス、色んな意味で瞳孔が開きっぱなし。この衝撃に身を委ねないなんて、あり得ない。(山田恵美)

プロミシング・ヤング・ウーマン(米) 1時間53分。TOHOシネマズ日比谷など。公開中。

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