映画「アジアの天使」石井裕也監督が紡ぐ日韓ラブストーリー

アジアの天使

日本と韓国は、近くて遠い国。そんなフレーズが何度も頭をよぎった。「舟を編む」の石井裕也監督が、オール韓国ロケで紡いだラブストーリー。喪失感を抱えた日韓の男女が、言葉は通じないながらも、導かれるように引かれ合う。

妻と死別した作家の剛(池松壮亮=写真左から3人目)は、8歳の息子を連れて日本を離れ、ソウルで起業を計画する兄(オダギリジョー=同2人目)の元に転がり込む。片言の韓国語も話せない剛は、「必要なのは相互理解」と自分に言い聞かせる。

(C) 2021 The Asian Angel Film Partners

一方、ショッピングセンターのステージで、誰も聴かない歌を歌うのは、ソル(チェ・ヒソ=同右から2人目)。彼女はアイドルとしてデビューしたが、忘れられた存在。憂いの表情を隠せない。

心にぽっかり穴の開いた2人が、偶然出会う。ここまでは物語として目新しくないが、更に偶然の展開として、2人とその家族が、大都会ソウルから海辺の片田舎へ向かう短い旅を共にすることになる。最初はぎくしゃくしていた彼らが、互いに心を開くのにロードムービーはベストな形態だろう。道すがら、日韓二つの家族は、それぞれが抱える悲しみや悩みを共有し、心を通わせていく。

旅の途中で休憩する田園のあぜ道は、日本の農村とそっくりな風景。言葉は通じないが韓国は「近い」んだ。そのことが確かな実感として残る。さておき、物語のカギになる天使の表現には「むむっ!?」と声が出た。そこは見てのお楽しみ。(読売新聞文化部・浅川貴道)

アジアの天使 2時間8分。テアトル新宿など。公開中。

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