「夫が…」という断り方はアリ?気がのらないお誘いを断る言い訳

気が進まない飲み会やイベントを断る際、「仕事」や「家族」を理由に断ることは昔から市民権を得ています。女性だと「夫」を理由に気ののらないイベントを断るというのもよくある話です。専業主婦が少なくなってきている今の時代、「夫が外出はダメって……」というような断り方をする女性は少なくなっている印象ですが、「その日は夫の用事があって……」というふうに、断る際にさりげなく「夫」を登場させる手法は今も健在です。もちろん、本当にたまたまその日は夫との用事があった可能性もありますが。

コロナはお誘いを断るための無難な言い訳?

コロナ禍になってからは、「仕事」や「夫」以外に「コロナ」も、何かを断りたい際の「無難な理由」となりました。「本当にコロナを恐れて断っている」場合と、「コロナ禍でなくても興味のなかった内容のお誘いだけれど、コロナを理由に断る」という2パターンがあります。たとえ後者であっても、コロナを理由に断るのは角が立たない言い訳ですし、特に責められるべきことではありません。

ただ、これからも長く付き合っていきたい相手の場合は、無難な言い訳をするよりも本気でぶつかっていったほうが後々困らないと思います。たとえば、「コロナ禍であること」を理由に元から興味のなかった内容のお誘いを断ったとしましょう。もしかしたら、コロナ禍が明けた時に同じ内容のお誘いが来るかもしれません。でも、「コロナ」という言い訳は成り立たないため、別の言い訳を用意しなくてはなりません。そのように色んな言い訳をしながら断っていくうちに、相手もゆくゆくは、「あ、この内容の遊びには興味ないんだな」と気付くことになるでしょう。

でも、時間をかけて相手が気付くまで待つよりも、多少キツく聞こえても「実はその内容の展示会はあまり興味がないんだ」などといった具合に自分の本音を明かしたほうが「わかりやすい」のは確かで、そのほうが相手と風通しの良い関係が築けるかもしれません。

社交の断り方 ドイツでは

筆者の出身のドイツは、モノを直球で相手に伝えるお国柄です。それが友達同士ならなおのこと。しつこいぐらいに相手に「私はこういう考え方!」ということを伝えます。そのため、たとえば気が進まない内容の遊びやイベントに誘われると、「行けない理由」を割と直球で伝える人が多い気がします。

議論する女性

筆者が日本に住むドイツ人の友達をあるイベントに誘ったら、「そのイベントに5000円はちょっと高いわね。申し訳ないけど、私はそのイベントに5000円も出す気にはなれないわ」と直球で理由を告げられたことがありました。でもおかげで、「この人はこういう内容のイベントに、5000円は出したくないんだな」ということがはっきりと分かったので、その後その人と付き合っていくためのヒントになりました。

またある時は、別の欧米人の友達を米軍関係のホテルのイベントに誘ったのですが、「内容は楽しそうなんだけど、私は米軍には反対だから、米軍関係の催しには参加したくないんだ。ごめんね」と断られました。このように本音を言ってくれると、相手の(時には政治的なことも含む)考え方が分かるので、理由を伝えてくれたことをうれしく思いました。

ドイツでは相手に理由を伝えることで、相手に反論され、そこから議論に発展することもあります。でも元々議論好きな文化ですから、議論は必ずしも悪いことだとはとらえられていません。相手と良い関係が築けている場合は、むしろ関係が深まることもあります。

ところで前述の「夫を言い訳に誘いを断る」のは、ドイツだとちょっと難しいかもしれません。ドイツの既婚女性の場合、女友達とも家族ぐるみで付き合う傾向があり、女友達も自分の夫と交流があったりするので、迂闊うかつに「夫が……」という言い訳を使えないのです。

筆者の場合「夫が…」を使わないのは「女のプライド」

 振り返ってみると、筆者がドイツで子供時代を過ごした1980年代、母親たちの会話の中で“Ich muss zuerst meinen Mann fragen.”(和訳「まず夫に聞いてみないと」)というフレーズがよく出てきました。これは言い訳として使われていたというよりも、日常生活のささいな事でも、まずは夫に相談して夫の了解を得てからでないと妻は動けないという事情が、当時まだあったのだと思います。筆者は物心ついたころ、「何でもかんでも『夫に聞いてみないと』と言うのは本当にカッコ悪いな」と思いました。

そんなことを覚えているせいか、筆者は何かを断る時に極力「夫が……」とは言わないようにしています。それは「女のプライド」が許さないというのもありますが、もしも夫が筆者の知らないところで「妻」を理由に色んな事を断っていたら嫌だな、と思うからです。実際に夫が妻をダシに色んなことを断っていないかは分かりませんが。

日本とヨーロッパでは人との付き合い方が違うので、一概にこれが正しいとは言えないのですが、世の中がコロナに見舞われている今、やはり本音で付き合っていける人間関係こそ大事にしたい、なんて思いました。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住23年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」
。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)、「なぜ外国人女性は前髪を作らないのか」(中央公論新社)。


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