スマホやめたい人におすすめのアイクロって?

国内で最も多い病気の一つが依存症だという。デジタル環境の進展に伴い、従来の人同士のつながりが希薄化。長引くコロナ禍でそのリスクも高まっている。暮らしに欠かせなくなった「スマートフォン」との向き合い方も課題のひとつだ。

画面を長時間、斜視や視力低下も

千葉県の高校3年生の女子生徒(18)は5月、学校での検診で初めて「斜視の疑いがある」と言われた。

高校入学後、目に違和感を覚えることが増えた。中学時代に1・5あった視力が1・0と0・6に下がり、乾きや疲れを感じる。

原因として思い当たるのはスマホへの依存だ。片道1時間の通学中、ほとんど動画を見て過ごす。「新型コロナで休校中は授業もスマホ動画で受けていた。1日のほとんどを画面を眺めて過ごしていた」という。

浜松医科大病院教授(小児眼科)の佐藤美保さんによると、スマホを長時間見続けることで急性内斜視を発症するケースがある。黒目が内側に寄り視線がずれる症状だ。

小さな画面を20センチ程度の近さで見続けると、両目は内側に寄った状態になり、長時間続くと目を動かす筋肉が固定されてしまうことがある。「5、6年ほど前から手術が必要な患者が増えてきたと感じる」

日本弱視斜視学会などが行った調査では、回答した医師371人のうち122人が「2018年の1年間で、スマホなどの使いすぎが原因とみられる急性内斜視の子どもや若い患者がいた」とした。深刻な事態として現在、実態調査をしている。

スマホの長時間使用で、目のピントが合いづらくなり手元がぼやける症状に悩む人も増えている。

みさき眼科クリニック(東京都渋谷区)院長の石岡みさきさんによると、「スマホ老眼」と呼ばれる症状だ。レンズの役割を果たす水晶体の厚さを変える毛様体筋が、水晶体を厚くした状態でこり固まり、ピント調節ができなくなるという。正確には「調節緊張」という症状で、加齢による老眼とは異なる。

石岡さんは「最近は『目が疲れた』と訴える20~30代が多くなった。スマホ普及前にはなかった」と指摘。「仕事でパソコンを使った後、休憩中にスマホを見ていたら、目が休まらない」と注意を呼びかける。

首や手にも負担

スマホを使う姿勢は首への負担も大きい。

成人の頭は平均で約6キロ、スイカほどの重さがある。東京脳神経センター(東京都港区)理事長の松井孝嘉さんは「スマホを見る時は約30度うつむく姿勢となり、首の後ろ側の筋肉に、直立時の3倍の負担が掛かる」と説明する。

患者を診察する松井さん。「スマホを見る時の姿勢は首への負担が大きい」と話す

首の後ろには自律神経が集まっており、この筋肉がこると副交感神経の働きが低下。全身のだるさや不眠などを引き起こし、うつ病の原因となることもある。「15分スマホを使ったら、イスの背もたれに寄りかかって手で頭の重さを支え30秒間天を仰ぎ、首の後ろの筋肉を緩めて」と松井さん。

片手で持ったスマホを操作するため、親指を動かし過ぎて手首がけんしょう炎を起こす人もいる。聖隷浜松病院(浜松市)手外科・マイクロサージャリーセンター長の大井宏之さんによると、手には筋肉と骨を結びつけるけんが通り、それを取り囲むトンネルのようなけんしょうがある。親指の使いすぎで、手首と親指側のけんとけんしょうがこすれ、炎症を起こすという。正式には「ドケルバン病」だが、最近は「スマホ指」とも言われる。

無意識にスマホに没頭することで、健康がおびやかされることもある。意識的に休憩を挟みながら上手に付き合っていきたい。

トイレで、電話中に目を閉じ休ませよう

スマホの依存を防ぎ、健康を守るためにはどうすればいいのか。とにかくスマホの画面から目を離す時間を増やすことが大切だ。

藤田眼科(千葉県我孫子市)院長の藤田博紀さんが提唱するのが、こまめに目を閉じる「アイクロ」という方法。「アイ・クローズド」をもじって名付けた。「周囲の安全を確認したうえで、短時間でいいから目を閉じる。日常生活の中には目を閉じても差し支えない時間が意外とある」と藤田さん。

例えば、トイレの中や電話中など特に視覚を必要としないときに、10秒間でもいいので目を閉じるようにする。涙の蒸発を防ぐほか、目を開けた後は自然とまばたきの回数が増えるため、涙の分泌が促進され、目の乾きを防ぐことができるという。

藤田さんは「狭い室内など遠くを見て目を休めることができない場所でもできる」と話す。

(読売新聞生活部 福元理央)

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