デニス・ホーはいかにしてデニス・ホーとなりしか

デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング(米)

香港ポップス界から生まれた21世紀のスター、デニス・ホー(何韻詩)=写真=の歌は、人の心を動かす。シンガー・ソングライターで民主活動家、同性愛者であることも公表しているこの全身表現者の世界を本作は探求する。ホーはいかにしてホーとなりしか。米国のドキュメンタリスト、スー・ウィリアムズ監督は、激動する香港の軌跡と重ねて映し出す。

1977年、香港生まれのホーは、11歳の時に一家でカナダへ移住。19歳で香港の歌謡コンテストに優勝したのを機に歌手の道に入り、歌姫アニタ・ムイの弟子として経験を重ねた後、才能を開花させた。同時代のスターのご多分にもれず中国本土にも進出したが、2014年、「雨傘運動」に参加し、逮捕されると状況は一変する。

キャリアや財産を危険にさらしても、理想のために行動し続けるホー。何が彼女をそうさせるのか。ウィリアムズは、本人や周囲の証言、ディスコグラフィーから浮かび上がらせる。カナダ時代に培った価値観。音楽を続ける意味に悩んだ日々。カミングアウトまでの逡巡しゅんじゅん。民主活動家としての世界への発信……。現実と格闘し、限界を突破するたび、彼女の世界は強度と深さを増す。それが音楽になって確かに伝わってくる。

香港の変転を照射すると同時に、人の生き方を問う映画。ギラつく世界より美しい夢を。そう願う人にとってホーの存在、その歌は絶対に力になる。コンパクトだが濃密な一本だ。(読売新聞文化部 恩田泰子)

「デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング」(米) 1時間23分。渋谷・シアター・イメージフォーラム。公開中。

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