【ストーリー】
物語の舞台は、人類が消え、ロボットだけが暮らす自然豊かな世界・エデン。サラは世界にたった一人の人間として、ロボットにひそかに育てられる。エデンに隠された謎と、ロボットの両親の危機に直面した時、サラはどうするのか。
アニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」で知られる入江泰浩監督が手がけたNetflix(ネットフリックス)オリジナルアニメシリーズ「エデン」が、5月27日から全世界に独占配信されます。主人公の少女・サラを演じた声優の高野麻里佳さんは、今作が初主演。配信に向けた意気込みを聞きました。
大先輩・山寺宏一さんから学んだこと
――高野さんは、「デジモンアドベンチャー」や「ウマ娘 プリティーダービー」などの話題作に出演し、注目を集めています。これまで人気作品のキャラクターを数多く演じていますが、大作での主演に緊張しましたか。
今まで声優としていろいろなキャラクターを演じる経験をしてきましたが、いつも私は「作品の一部である」という意識でいました。今回、初主演させていただいたことは、とても感慨深いのですが、自分としては「一つの作品を彩るスタッフの一員である」と意識していたので、それほど大きなプレッシャーは感じませんでした。

――主人公のサラは、赤ちゃんの時にロボットに拾われ、育てられるという経験をしていますが、演じた感想を教えてください。
台本を読んで驚いたのですが、サラはロボットに育てられていても、ごく普通の少女なんです。大人への階段を上る前の少女、というイメージなので、役作りとしては、自分が幼少期に持っていた「自分は何でもできる」という気持ちを思い出しながら演じました。
――サラとの共通点は?
それが全然ないんですよ(笑)。サラはとても前向きで、自分の考えていることをはっきり言えて、興味が湧いたことには真っすぐ自分を貫き通します。それに対して私は、石橋をたたいて渡るような、慎重に物事を進めるタイプなんです。だから、サラのような性格にとても憧れています。
――ベテラン声優の山寺宏一さんと共演していますね。アフレコ現場でのエピソードはありますか。
初めてお会いするので、非常に緊張していたんですが、優しい笑顔で朗らかに接してくださいました。収録の中で印象的だったのは、山寺さんの演じるキャラクターが水を飲むシーンで、ご自身の水筒にお水を注いで実際に飲んで演じていらしたことです。私は普段アフレコ中に水を飲むことはないので、「そのように演じることができるのか」と驚きました。「演技はこうすべき」という考えに、自分が知らず知らずのうちにがんじがらめにされていたんだと気付くことができました。
家族の大きなサポートが支え
――声優業だけでなく、ソロアーティストとして今年2月にCDデビューを果たしました。
勇気のいる決断ではあったのですが、「誰かに求められているならば、私が断る理由はない」と思いました。アーティストって、とても孤独な印象があるんです。アニメ作品のキャラクターを演じるのとは異なり、アーティスト像を自身で考えていかなきゃいけないというプレッシャーはあります。
――新しいことへのチャレンジですね。何が心の支えになっているのでしょうか。
声優になって今年で7年ですが、家族のサポートがとても大きいです。「声優という職業が大変だったら、いつでもやめていいよ」と声を掛けてくれるんです。家族が喜んでくれること、笑顔でいてくれることが私の原動力です。
実は、自分が演じていたり歌っていたりするのを自分で聞くのが苦手なんです。なぜかというと、私は自分のために演じているのではなく、誰かを喜ばせるために演じているから。そして、「自分が楽しくなかったら、人を楽しませることができない」と思っています。自分を楽しくすることが、結果的に人を楽しませる……。それがとてもうまく循環しているなと思っています。
――目標にしている声優はいますか。
幼い頃から大谷育江さんに憧れているんです。ピカチュウ(「ポケットモンスター」シリーズ)やトニートニー・チョッパー(「ONE PIECE」)を演じられますが、子供の時は、ピカチュウの声はピカチュウがやっているものだと思っていました(笑)。誰もが知っている国民的キャラクターの声を演じることが私の目標にもなっているので、大谷さんの存在はとても大きく、憧れています。
(取材/読売新聞メディア局 杉山智代乃)