ジャニーズを襲うヤラカシとは? 関ジャニ大倉が迷惑行為を訴え

関ジャニ∞の大倉忠義さんが、5月10日、有料サイト内のブログでファンの迷惑行為について言及しました。マナーを守らず、過激な行為をするファンは「ヤラカシ」と呼ばれ、度々問題に。ジャニーズ事務所は公式ホームページなどを通じて注意しているものの、迷惑行為は後を絶ちません。どうして、あえて嫌われるような行為をするのでしょうか。

6月の舞台に向けて稽古中という大倉さんは、稽古場に来るファンがいることに言及。執拗(しつよう)に追いかけてくるファンのことを共演者に尋ねられ、情けなく思っていると明かしました。スタッフや警察が注意しても稽古場に来てしまうと記し、「アイドルが平穏に暮らせる世界ってあってもいいと思わないかい?」と問いかけました。

大倉さんが過激なファンについて苦言を呈するのは、初めてではありません。2018年11月にも、しつこく追いかけて周囲の一般の人に体当たりしたり、大倉さんのカバンに物を入れたり、いきなり手をつないできたりするファンがいることをブログで明かしました。「そろそろ限界」とつづり、ストレスや恐怖を感じていると訴えました。

ファンの間でマナーを守るよう呼びかけられていたものの、いまだにヤラカシが存在することに、多くのファンは激怒。「非常識な人がいて腹立たしい」「ファンは大倉くんのブログを一読すべき」などの声が相次いであがっています。最近、大倉さんはテレビ番組などで「脱退はない」と発言してファンを安心させていますが、嫌がらせが続いてアイドルをやめたくなるのでは……と心配になります。迷惑行為を繰り返す人は、もはや「ファン」とは言えないでしょう。

境目見失い、リアルなコミュニケーション求める

応援しているタレントに対し、なぜ嫌われるような行為をするのでしょうか。ヤラカシの心理について、事業所向け産業保健支援を行う「エムステージ」(東京)の臨床心理士、小山拓哉さんは「小学生が好きな子にわざと嫌がらせをする心理と似ています」と指摘。心理学では人間の行動には「手段」と「目的」があるとされており、この場合「手段」は「注目されて自分のことを知ってもらう」、「目的」は「相手に好意を持ってもらう」が当てはまるといいます。

ほとんどのファンは、別世界にいるアイドルに対してこうした手段と目的は成立しないものだとわきまえます。ただ「一部の人は境目が分からなくなってリアルなコミュニケーションを求めてしまい、屈折した行動に出てしまうのでは」と小山さん。ファンの一人として大勢の中に埋もれてしまうぐらいなら、迷惑行為だったとしても、注目されて特別な存在になりたいという心理が働くそうです。

確かに、SNSの普及などでアイドルとファンの距離感は近くなり、以前のようにアイドル=テレビの向こう側の人ではなくなりました。その分、現実とファンタジーがゴチャゴチャになってしまう人もいるのかもしれません。小山さんによると、大倉さんがブログに書いたことで、当事者は「目的が達成された」と喜びや優位性を感じている可能性があるといいます。

ヤラカシを「治す」方法として、小山さんは「その人が抱える原因による」と前置きした上で、例えば現実がつらくてファンタジーの世界に逃げている人には、カウンセリングなどを通じて改善の可能性があると説明します。

人気商売ゆえ、「寛大」にならざるを得ない

弁護士の藤岡朗以ろいさんは、「大倉さんが体験したという、カバンに物を入れる、いきなり手をつなぐといった行為も、過度な場合は迷惑防止条例違反として刑罰の対象になり得ます」と話します。ただ、ヤラカシが民事、刑事上の処分を受けた例が少ないのは、「人気商売ゆえ、アイドルや事務所がヤラカシに対して寛大な姿勢を取っているからでしょう」と強調します。だからこそ、ファン自身は自分の行動がボーダーラインを越えていないか、常に自問自答する必要があります。立件しなくとも、警察がヤラカシから事情を聞いて指導するなどして、ルール違反を抑える方法が考えられるといいます。

藤岡さんは「大倉さんが受けた行為が、男女逆だったらどうでしょう」と投げかけます。なるほど、女性アイドルが同様の行為を男性ファンからされたら、即問題になりそうな気がしてしまいます。迷惑行為が対男性アイドルだと何となく埋もれてしまうのは、「男性アイドルの悲しさ」と藤岡さん。2018年のブログで、大倉さんも「男女が逆ならいいのか」と憤っていました。

過激化するファンの背景として、藤岡さんもSNSの存在を指摘します。アイドルたちがSNSで発信しているものは「プライベート風」であると理解して線引きすることが重要で、藤岡さんは「真のプライベートに干渉したり、『SNSでプライベートをさらしているのに、私が近づいたら拒否するのはひどい』といったゆがんだ理論を押しつけたりするのは間違い」と話します。

相次ぐマナー違反、注意喚起は限界か

ジャニーズ事務所は再三、タレントの付きまといといった迷惑行為に注意喚起をしています。しかし、ファンが殺到して新幹線の発車が遅れるなど、マナーは改善していない側面も。こうした行為が続くと、ルール違反者はごく一部であるものの、世間からは「これだからジャニーズファンは……」と冷ややかな目で見られてしまいます。

記者も以前、あるジャニーズグループを新幹線の主要駅で目撃したことがあります。彼らの後ろには、携帯を掲げて動画を撮りながら追いかけるファンが大勢いて、ぎょっとしました。SNSでの「共有欲」も、こうした追走に拍車をかけているような気がします。

ファンの常識や倫理観に訴えるのではなく、ファンクラブの脱会、法的措置の徹底といった強い措置以外に解決のすべはないのかもしれません。声をあげた大倉さんの勇気を尊重すると同時に、「身勝手な行為で推しの笑顔が見られなくなってもいいのか」ということを今一度問いたいです。

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山村翠 (やまむら・みどり)

読売新聞東京本社生活部に在籍。中学生の頃に先輩のバックで踊るKinKi Kidsの堂本光一さんを見て沼に落ち、20年以上、ジャニーズを応援。ジャニーズのコンサートや舞台を取材・執筆し、タレントにインタビューをするほか、プライベートでも様々なグループの公演に足を運ぶ。

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