「ドラゴン桜」(TBS系 日曜午後9時00)
元暴走族の弁護士、桜木建二(阿部寛)は、偏差値32の高校から東大合格者を出し、経営を再建する仕事を請け負う。自由な校風を理想に掲げる理事長たちの反対に遭う中、様々な事情や悩みを抱えた生徒たちに向き合う。
町工場の熱血社長から憂いのある刑事、偏屈な独身男に古代ローマ人――と、強烈なキャラクターを次々とものにしてきた。そんな役者人生を勇気付けてくれたのが、この男だった。
落ちこぼれの生徒たちを東大合格に導く、型破りな弁護士、桜木建二。「30歳代はがむしゃらにテレビ、映画に出ていたが、桜木と『ドラゴン桜』は、僕にとって打ち上げ花火のようだった。40歳代がドーンと始まった」
それだけに、50歳代半ばでこの作品に立ち返れることが感慨深く、心がときめく。
「またここから、何か面白いことをやるための起爆剤になるのでは」
2005年放送の連続ドラマの15年後を描く続編。長澤まさみが演じた生徒が弁護士になり、タッグを組む。“教え子”との共演に、「みんな厳しい芸能界で頑張っている。うれしいですよ」と、役を離れて目を細めた。
スマートフォンがなかった当時とは違う、今だからこその生徒へのアプローチに興味が湧いた。桜木は生徒を突き放すが、それは、我が子を千尋の谷からはい上がらせようとする獅子のよう。
「ただ強いだけではなく、その裏にある優しさを大事にしていきたい。そうでないと、決して伝わらない」
無我夢中で演じた前作が放送された後、周囲から大きな反響があった。「今作も学生に限らず、多くの人の勇気と活力になる作品にしたい」と願い、メッセージを送る。
「どんな状況でも誰にでも、道は開かれている。夢を諦めないでほしい」
見る者の心を揺さぶる深いまなざし。低く落ち着いた声が説得力を帯びた。
逆境を楽しみ、力に変えてほしい
Q 若い頃にかけられて覚えている言葉は。
A この世界に入ってすぐの頃、映画のカメラマンさんに「自分の身は自分で守りなさい」と言われました。何年もしてだんだん、何に対しても責任を持て、ということだと分かってきました。
Q コロナ禍で悩む学生へメッセージを。
A 時間がなければないほど、いろんなことができる。忙しく動き回っている時こそ、いろんな発想が浮かんでくる。僕もそう。大変な状況の人もいると思いますが、逆境を楽しみ、力に変えてほしい。
(文・読売新聞文化部 道下航 写真・田中秀敏)
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