推しのために徳を積む、推し活で人生が変わる理由とは

アイドルやアニメのキャラクターなどを熱狂的に応援する「推し活」に熱中する人が増えている。人を前向きにさせ、生活に潤いをもたらすパワーがあるようだ。

「推しのユーチューブを見続けるうちに『動画編集がやりたい』と思って専門学校に通い、広告の撮影などを行う会社に転職できました」

2人組のユーチューバー「水溜りボンド」推しの牧美幸さん(24)は、推し活で人生が変わった。友人も増えたといい、「周囲から『行動力がある』と言われるが、推しのおかげ」と声を弾ませる。

関西ジャニーズJr.の7人組「なにわ男子」の大橋和也さんを推す藤田紗希さん(25)は、グループが活動拠点を置く関西での勤務を希望し、関西ジャニーズJr.がよく公演を行う大阪市内の劇場の近くに住んでいる。接客をすることもあるが、「ちょっと困ったお客様に対しても、柔和な大橋くんは優しく対応すると思うと親切になれます」。

チケット当選願い日々善行

推し活をする人の行動のベースに「徳を積む」という考えがある。「コンサートでいい席が当たるように」「推しにふさわしい人間になりたい」といった願いのため、日々善行を積むことを指す。

牧さんは水溜りボンドが2019年の台風15号直後に千葉県でイベントを行った際、5万円程度寄付した。「今後、イベントのチケットが当選するなどいいことがあるかなと思って」。水溜りボンドの一人が同県出身だったことも、“社会貢献”を後押しした。

戦隊ヒーローが好きな佐藤華奏かなでさん(26)も電車で積極的に席を譲る。「職場や家でイライラしても『せっかくためた徳がなくなる』と怒りを抑えています」

「ライブチケットの当落を待つ間は朝早く出勤したり、コンビニでお釣りを募金箱に入れたりします」。ジャニーズJr.の7人組「Travis Japan」の松倉海斗さんを推す内田悠乃さん(27)も丁寧な暮らしが徳を積むことにつながると信じている。

立ち位置忘れない

一方、トラブルもある。K―POP好きの女性(30)は「グッズ購入や韓国旅行などに数十万円使ってしまい、家賃の支払いが危うくなった」と明かす。「コロナ禍で推しの舞台を見る、見ないで友人ともめて不仲になった」と話すのは俳優を推す女性(35)。

18年秋には人気男性アイドルを見ようとファンがホームに殺到し、新幹線の発車が遅れたこともあった。

「ジャニヲタあるある」の著者で、自身もジャニーズファンのみきーるさんは「『友人は何度もライブに行っている』など他人の動向が気になりますが、競わず、自分の立ち位置で応援することが大切」と助言する。自分の考えを他人に強要したり、制限なく推し活にお金を使ったりしないように気を付けたい。

ファンタジーが心を豊かに

全心連公認プロフェッショナル心理カウンセラーの浮世うきよ満理子まりこさんに、推し活の効果などを聞いた。

「推しは自分を投影し、共感できる存在だから応援したくなります。例えば、頑張り屋の人は努力型アイドルに感情移入するなど、ハマる理由は容姿だけとは限りません。

コロナ禍でリアルな喜びが少なくなる中、空想(ファンタジー)で心を満たす人もいるでしょう。推しは空想の世界にいるからこそ理想を当てはめられます。心理学ではこのようなファンタジー性は心を豊かにするとされています。

仕事に精を出したり、身だしなみを整えたり、推しは外面や内面を磨くきっかけになります。推し活には人生100年時代を楽しく生きるヒントがあるかもしれません」

(読売新聞生活部 山村翠)

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