マグロやクルマエビ…高級鮮魚があなたの食卓に届く理由

卸売市場の水産仲卸などが、個人向け販売に力を入れている。コロナ禍で飲食店やホテルなどの需要が激減。苦境を打開しようと、これまで店頭に並ぶことが少なかった高級な鮮魚を通販サイトで扱ったり、市場の食材を使った弁当などを販売したりしている。

魚づくし弁当、キッチンカーで販売

4月初めの平日昼、東京都港区の商業ビルの駐車場。キッチンカーで販売される魚づくしの弁当「市場のお魚ごはん」(850円税込み)を購入しようと、会社員らが列を作った。ホタテの炊き込みご飯にその場であぶったスズキなどをのせ、サケのマリネ、ノリのつくだ煮、ホタテのみそ汁もつく。30代の女性会社員は、「近くに魚の弁当を扱う店がなかったので重宝している。本格的な食材なのでおいしい」と話す。

弁当を扱うのは東京・豊洲市場の仲卸、倉田商店。産地から市場に集められた魚は仲卸を通して日本料理店やすし店などに販売されるが、コロナ禍で需要が落ち込んでいる。移動販売で鮮魚を扱う仲卸が少しずつ登場しており、同社は弁当の提供に取り組む。

キッチンカーでの営業を支援するメロウ(東京)と連携し、週5日ほど、昼はオフィス街で弁当を、夕方から夜にかけては住宅街で家庭向けの総菜を販売する。旬の食材を相場が安い時に多めに仕入れ、冷凍するなどして原価を安くしている。倉田商店社長の倉田俊之さんは「魚に付加価値をつけて一般にアピールしたい。魚食の広がりにもつながれば」と話す。

倉田商店のキッチンカーはこの日、ホタテの炊き込みご飯、スズキのソテー、ノリのつくだ煮などを詰めた弁当にホタテのみそ汁を付けて販売した(東京都港区で)

良質な魚介を扱う通販サイトも充実してきた。市場での通常価格よりも安く扱っている例が多い。

東京都のIT企業が運営する通販サイト「いなせり市場」は、豊洲市場の東京魚市場卸協同組合に加盟する水産仲卸約50業者の商品を扱う。2018年のサイト開設当初は10品程度だったが、現在は100品ほどに増え、料亭で扱うようなマグロのさくやクルマエビなどが販売されている。

昨年から始めた詰め合わせセット「鮮魚BOX」は、その日の旬の魚を仲卸が選んで詰める「お楽しみセット」だ。魚をさばいて楽しみたいという人の注文が目立ち、リピーターも出てきたという。

食品通販を手がける食文化(東京)が運営する「豊洲市場ドットコム」は、鮮魚の取り扱いを本格化させた。仲卸約10業者が参加し、商品はホタルイカやウニなど様々だ。今年2月下旬からは、当日朝までに注文すると、その日のセリにかけられたばかりの鮮魚が届く「豊洲きょう着く便」を始めた。当日到着の対象は都内8区だが、順次拡大する予定。担当者は「市場で買ったばかりのような鮮度を実感してもらい、豊洲の魅力を知ってほしい」と話す。

コロナ禍、生産者の支援にも

こうした動きは地方でも出ている。

広島市の水産卸「広島魚市場」は昨秋、個人向けの販売サイトを開設した。地元産のカキが中心で、生産者を支援する狙いもある。担当者は「今は広島県内が中心だが、県外にも力を入れたい」と話す。

福島県の郡山市総合地方卸売市場では、車に乗ったまま魚介などを購入する「ドライブスルー市場」を昨年6月から週1回開催する。需要の落ち込みを受けて水産仲卸が中心となって取り組み、マグロのお刺し身セットなどが人気だ。

市場流通ジャーナリストの浅沼進さんは、「卸売市場は近年、開放スペースを設けるなどして一般向けに販売する動きがあり、販売先も多様化しつつある。コロナ禍で消費者に積極的に売ろうという動きが加速し、今後さらに広がっていくのでは」とみている。

(読売新聞生活部 小野仁)

あわせて読みたい

Keywords 関連キーワードから探す