快適な日本のホテル、部屋に生理用品がないのが残念な理由

最近、経済的な理由から生理用品を買えない「生理の貧困」が話題になっています。政府は先月23日、困窮状態にある女性を支援するための交付金を拡充する方針を決め、交付金の使途に「生理用品の無料配布」も含まれました。今回は、海外の取り組みとも比べながら、生理用品を巡る問題について考えます。

なぜアメニティーグッズとして置かないのか

筆者は、仕事で地方のホテルに泊まることがよくあります。日本のホテルはどこもレベルが高く、快適で、各部屋には歯ブラシからヘアブラシ、綿棒、化粧水などがアメニティーグッズとして置かれています。そのなかでも筆者が一番うれしいのは、浴衣やパジャマが置いてあることです。というのも、筆者の出身国・ドイツのホテルには、パジャマは置いていないことのほうが多いのです。

ただ、そのように快適な日本のホテルに改善の余地があるとしたら、それは「生理用品をアメニティーとして部屋に置く」ことだと思います。日本のホテルに限ったことではないものの、生理用品をアメニティーとして部屋に置いてあるホテルが少ないからです。フロントに行けば、生理用品の用意はあるようなのですが、部屋にあらかじめ置いてあったほうが便利なのは言うまでもありません。

たとえば、「化粧をする際に綿棒や化粧水がない」のと、「生理の際に生理用品がない」のを比べてみた時に、どちらのシチュエーションのほうが困るかを考えてみると、より困るのは明らかに後者です。

それなのに、生理用品を常備していないところに、問題の根深さを感じます。排せつと同じく女性の生理も生理現象です。しかし、排せつの際に使うトイレットペーパーは、ホテルを含め、どんな場所のトイレにも備え付けられている一方で、生理用品が備え付けられていることは、まだまだまれです。

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トイレットペーパーはどこのトイレにもあるのに

以前、このテーマについて何人かで話をしていた時、こうした疑問を口にしてみたところ、ある男性が「生理用品は女性によって使いたいものが違うから、置いておくことが難しいのではないか」と語りました。確かにこれには一理あって、一概に生理用品といっても、女性によってナプキンだったりタンポンだったりと、使うものが違います。また、ナプキン派の女性の間でも、「自分はこのナプキンでないとかぶれる」といった事情や、「このナプキンでないと心地が悪い」といった好みの問題もあります。

しかし、それは「生理用品を置かない理由」にはならないと筆者は思います。というのも、トイレットペーパーにこだわっている我が家では、ラベンダーの香りの付いた肌触りの良いトイレットペーパーを使っていますが、だからといって、外出先のトイレにラベンダーの香り付きの肌触りの良いトイレットペーパーが置いていなくても、特に不満は感じないからです。「どんなものでもいいから、トイレットペーパーが置いてあればそれでいい」と思います。生理用品に関しても、「いつもはある決まったタイプのものを使っているけれど、出先で生理になってしまい、トイレに生理用品が常備されていて助かった」ということはあるはずなのです。

トイレットペーパーがどのトイレにも常備されているのに、生理用品が常備されていないのは、「排せつは男女共通の生理現象である一方で、生理は女性にしかない生理現象だからではないのか」と筆者は勘ぐっています。

海外で始まっている生理用品の無料配布

 「生理の貧困」は、何も日本だけの問題ではありません。コロナ禍により貧困にあえぐ女性が増加しているフランスでは、マクロン大統領が昨年12月、ツイッターで「生理の貧困」問題を取り上げ、国として対策を講じることを明言しました。そして、フランス政府は今年2月、大学生を対象にキャンパスや学生寮で生理用品を無料で配布することを発表。9月までに、すべての大学生に生理用品が行き渡るように取り組むとしています。

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これに先駆けて、「生理用品の無料配布」に舵(かじ)を切ったのは、スコットランドです。昨年11月、世界で初めて「生理用品の無料提供を定める法律」が成立し、日本でも注目を集めました。大学生が対象のフランスとは違い、スコットランドでは、「生理用品を必要とする人全員」が無料で生理用品を入手できるよう、自治体に法的義務が課せられました。これは、生理用品の購入によって生じる経済的な負担を全面的になくすことが目的で、女性は公共施設や学校などで生理用品を無料で手に入れることができます。

また、ニュージーランドのアーダーン首相は今年2月、「人口の半分を占める人たちにとって生活の一部である生理を理由に、教育の機会を奪われる若者がいてはいけない」と語り、同国では6月から、学校で生理用品が無料提供される予定です。その背景には、ニュージーランドの若者の12人に1人が、タンポンやナプキンなどの生理用品を買う経済的な余裕がなく、学校を欠席している事実が明らかになり、問題視されたことがありました。

生理用品の消費税率が大幅に下がったドイツ

一方、ドイツでは残念ながら、国の施策としての無料配布はまだ行われていません。ただ、昨年1月から、生理用品の消費税率が19%から7%に下がりました。それまで、「シャンパンやキャビアは税率7%なのに、なぜ生理用品はぜいたく品と見なされ、19%もの税率がかかっているのか」「生理用品よりもシャンパンやキャビアのほうが『必需品』だとする考え方はおかしい」といった抗議の声が相次いでいたのです。

抗議の中でも印象的だったのは、生理関連商品の販売などを手掛ける、ある企業のユーモアたっぷりのチャレンジでした。当時、生理用品の消費税率が19%なのに、書籍の税率は7%であることに抗議するため、その企業は「書籍の形をした生理用品」を発売したのです。その名も「The Tampon Book(タンポンの本)」で、サブタイトルは「Das Buch gegen Steuerdiskriminierung(税金差別に抗議するための本)」でした。本を開くと、確かに生理について書かれているページがあるものの、本の一部が箱になっていて、そこにタンポンが入っているというユニークな商品でした。このエピソードに関連して、「steuerfrei bluten(無税の出血)」「Red Revolution(赤い革命)」という言葉も話題になりました。ニッポンの感覚だとビックリするかもしれませんが、いかにもドイツらしいなと思いました。

日本では、生理用品はまだ軽減税率の対象にはなっておらず、10%の消費税がかかります。ただ、冒頭で書いたように、政府は生理用品の無料配布を決めましたし、既に東京都多摩市では3月17日から、市内の小中学校で生理用品を無料配布しています。

このように、世界で「生理用品は必需品である」という認識が少しずつ広まっています。この流れにのって、こうした認識が社会の隅々まで浸透することを期待したいです。

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サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト

ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住23年。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」
著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)、「なぜ外国人女性は前髪を作らないのか」(中央公論新社)。


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