他人を許せない正義中毒「私は間違ってない」の自信はどこから?

コロナ禍に感染対策をおろそかにする厄介者は許さない――。新型コロナウイルスの感染拡大以降、世の中の秩序を保とうという「正義感」から、「マスク警察」「自粛警察」「帰省警察」などが現れました。“取り締まり”がエスカレートし、傷害事件に発展したケースもあります。正義の味方はヒーローなのに、なぜ、“コロナ警察”は恐怖や迷惑の対象として疎まれるのでしょう。このほど「私は正しい その正義感が怒りにつながる」(産業編集センター)を著した日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介さんに聞きました。

次のターゲットは「ワクチン接種」

新型コロナの感染拡大とともに、行政の自粛要請に応じない人や店舗へ攻撃する風潮が強まりました。マスクを着用していない人を見つけてはどなりつけたり、時短営業に応じない店を中傷する貼り紙をしたり、県外ナンバーの車を傷つけたりする嫌がらせが相次ぎました。

このような過激な行為は収まりつつありますが、最近でも、ウレタン製のマスクを認めず、感染防止効果がより高いとされる不織布マスクの着用を強いる「ウレタンマスク警察」や、店舗などに入る前に消毒をしているかどうかを監視する「消毒警察」が話題になるなど、新たな「警察」の火種は常にくすぶっているようです。

安藤さんは「次に狙われるのは、ワクチン接種をしていない人。『ワクチン警察』が現れる可能性があります。すでに『ワクチン接種済み』をアピールするシールやバッジが販売され、攻撃から身を守る自衛の動きがあります」と話します。

「ワクチン警察」が現れるかもしれません。接種しない人を激しく攻撃する可能性があります。
画像はイメージです

「正義」の名の下に見つけた「はけ口」

コロナ禍に次々と「警察」が生まれる背景について、安藤さんは「同じ人が違う『警察』になって繰り返している傾向があります。今回は『マスク』、次は『帰省』、その次は『飲食店』というふうに、攻撃する格好のターゲットを探しているためです」と説明します。

「間違っているから、教えてあげよう」という正義感の根底には、「~すべきだ」「~であるはず」という期待や、信念が裏切られた「怒り」や「憤り」の感情があるといいます。ただ、「マスクを着用しないのはおかしい」「こんな時期の帰省はやめるべきだ」という怒りや憤りが、そのまま「マスク警察」や「帰省警察」を生んでいるとは限りません。

「夫婦げんかでイライラ」「上司の叱責しっせきにムシャクシャ」といった日頃のうっぷんを、上手に解消できずにため込んでいる人もいます。安藤さんは「発散されない怒りを抱えた人が、『正義』の名の下にはけ口を見つけただけ。夫婦げんかでいらだちを抑えられない上司が、職場で部下につらく当たるようなもの。八つ当たりや憂さ晴らしです」と指摘します。

「マスク警察」や「自粛警察」の過剰な“取り締まり”に、「関係ないやつは黙ってろ」「なんでお前が言う?」といった反発がある一方で、インターネットの掲示板やSNSでは、「よくぞ言ってくれた」「スカッとした」などと持ち上げる声も少なくありません。

憂さ晴らしも「正義」を盾にすれば称賛されると知り、次第に「正義中毒」に陥ってしまう人がいます。安藤さんは、「正義」は〈1〉気持ちがいい〈2〉社会との一体感が得られる〈3〉わかりやすい――という三つの要素を持っているため中毒性が高いといいます。ただ、どんなに理屈が間違っていないとはいえ、正論ばかりを主張していては周囲から嫌われてしまいます。

あなたも「正義中毒」かも?

自分が「正義中毒」に陥っていないか、安藤さんが簡単なチェック方法を紹介してくれました。以下の10項目のうち、いくつ当てはまるか数えてみてください。

□ニュースサイトのコメント欄に意見を投稿したことがある
□自分の意見を言うことは不得意ではない
□SNSで誰かに意見したことがある
□子どものしつけができていない親が多いと感じることがよくある
□ニュースなどを見て、世の中に怒りを感じることがよくある
□迷惑行為をしている人に直接注意をしたことがある
□マナー違反、ルール違反をしている人が気になる
□人に何か注意することは平気なほうだ
□会話中に相手の間違いを正したいと思うことがよくある
□親の言うことをよく聞いたほうだ

当てはまる数が3個以上あったら、「正義中毒」の危険があります。

【3~4個】 軽度の正義中毒。自覚がないかもしれませんが、自分の関心がある話題になると、頑固なほど関わろうとしていませんか。少し身を引いて、考えを見直すことも大切です。

【5~7個】 中程度の正義中毒。正義感からつい言ってしまって、後悔することがあります。誰かを攻撃することで、自分を保とうとしてしまいます。正義を振りかざしてしまいがちな、SNSなどから距離を置きましょう。

【8個以上】 重度の正義中毒。誰でも構わず、正義の名の下に強く攻撃しています。憂さ晴らしに正義を振りかざしていませんか。周囲の理解を得られず、焦りを感じているようなら、専門家の助けを借りてでも自らを見つめ直す必要があります。

以前なら当たり前だったことが、コロナ禍で我慢を強いられたり、新しい方法で取り組まなければならなかったりします。行動変容が必要とはいえ、とまどいやいらだちを感じる人もいるでしょう。

「他人を許せないと怒りをぶつける人は、自分自身に対しても許容度が低い傾向があります」と安藤さんは分析した上で、「在宅勤務だと仕事がはかどらない、いつまでたってもテレワークに慣れない、がんばっているのに結果が出せない……。そんな自分を許せず、怒りを覚えるのです」と説明します。

安藤さんは、怒りを発散させるターゲットを探すよりも、自らを認める価値観を見つけることを勧めます。「コロナ禍の今だからこそ、オンラインの様々なサービスを活用してみたり、これまで尻込みしていた新しいことに挑戦してみたりするといいでしょう。ライフスタイルの変化は、生き方や考え方を変えるきっかけになります」

(読売新聞メディア局 鈴木幸大)

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安藤 俊介 (あんどう・しゅんすけ)
日本アンガーマネジメント協会代表理事

アンガーマネジメントコンサルタント。心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。アメリカから導入した理論と技術を、教育現場や企業などで講演、研修、セミナーを行っている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)など。

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