夫の「カレーでいいよ」にイラッ!妻が怒る「で」の3つの問題点

毎日の献立に頭を抱える妻が、「今日の夕飯、何がいい?」と夫に聞くことがあるでしょう。ここで、夫は「カレーでいいよ」と気軽に答えると、地雷を踏んでしまう危険があります。読売新聞の掲示板「発言小町」には、夫の「で」に腹を立てる妻から、「『夕食は~“で”いいよ』という旦那」のタイトルで投稿がありました。なぜ、夫の「で」は妻の逆鱗げきりんに触れるのか、コミュニケーション研究家の藤田尚弓なおみさんに聞きました。

投稿したトピ主の「アウストラロ」さんは、夕食にカレーライスやおでんをリクエストする際、夫の「~でいいよ」という言い方に腹が立ってしまうといいます。具材を刻んだり、下ごしらえをしたりして、意外と手間のかかるカレーやおでんは、まるで手軽に作れるかのようなニュアンスを持つ「~でいいよ」と言われる料理に当てはまらないと、トピ主は主張。発言小町に「『~でいいよ』が通用するのは、カップ麺かお茶漬け、卵かけご飯くらいだと思いませんか」と怒りをぶつけました。

このトピには、90件を超える反響が寄せられました。トピ主に同調する意見が多く、夫の「~でいいよ」を経験した妻たちは、「カチンときますね」「イラッとします」などと不快感をあらわにしています。

「カレーでいいよ」と言い放った夫に、すぐさま、「『で』じゃなくて『が』ね」「それは簡単に作れるメニューじゃないよ」「『カレー作ってください、お願いします』でしょ」などと指摘し、言い方を改めるよう求める妻もいました。

「なんでもいいよ」は気づかい?

少数派ですが、トピ主の夫を擁護する意見もあります。「匿名男子」さんは、「手抜きができるカレーでいいよ、という意味ではない」ときっぱり否定します。「何が食べたいか聞かれ、特に思いつくものがなく、『なんでもいいよ』と答えれば非協力的となじられてしまうので、『(なんでもいいけれど)カレーでいいよ』と答えているだけ」と夫の気持ちを代弁します。

「ねこなめこ」さんも、「『強いて言えば』おでんやカレーであって、何が何でもそれが食べたいわけではないという意味で言っていて、別に却下してもいいんだよという気づかいなのでは」と説明し、トピ主をなだめます。

「~でいいよ」の三つの問題点

コミュニケーション研究家の藤田さんは、「~でいいよ」は妻の怒りを招く、使ってはいけないNGワードの一つと指摘します。「カレーでいいよ」「おでんでいいよ」「焼きそばでいいよ」などに加え、夏になると「ソーメンでいいよ」も登場します。藤田さんは、日常的に使われる「~でいいよ」の問題点を三つ挙げます。

〈1〉妥協・譲歩のニュアンス

「~でいい」は、その背後に別の本音があると、言われた人が推測してしまいます。つまり、「本当は望まないけれど、仕方なく」といった妥協や譲歩が透けて見えるのです。そのため、やや“上から目線”の印象があり、恩着せがましく聞こえてしまいます。

〈2〉期待や喜びの喪失

「~でいい」と言うと、その料理を作っても大して喜ばれないという印象を相手に与えてしまいます。期待値が低いことを事前に伝えているようなもので、作る側はモチベーションが上がらなくなります。せっかく作っても、「ありがとう」や「おいしい」という感謝や喜びを得られないと感じてしまいます。

〈3〉家事に対する低い評価

「~でいい」と言ってしまうと、家事に対する評価が低いという考えを伝えることにもなります。限られた時間とお金をやりくりし、食材や栄養バランスを考えて料理をしても、報われないと知れば悲しい気持ちになります。やるせない感情は次第に怒りへと変化し、爆発しかねません。

「で」を打ち消す言葉でリカバー

料理を作る妻の地雷を踏まないためには、「で」を「が」に変えて、「カレーでいい」を「カレーがいい」と言うだけ。たったこれだけで、言葉の印象はがらりと変わります。ただ、夫には、「で」が相手に不快感を与えるという認識がないばかりか、怒りや衝突に発展するというリスクへの警戒心も乏しいので、改めるのは簡単ではありません。実際、あまり深く考えずに、「カレーでいいよ」と使っているケースが多いでしょう。

「カレーでいいよ」と言われた妻の怒りはなぜ?専門家が説明します。写真はおいしそうなカレー

妻のイライラや怒りが爆発しないために、夫の対処法として、藤田さんは、「~でいい」の問題点を打ち消す言葉でリカバーすることを勧めます。三つの問題点について、それぞれを打ち消す言い回しの例を紹介します。

〈1〉妥協・譲歩の意味ではないと否定する

「〇〇でいいよ。というか、今日はどうしても〇〇が食べたい気分なんだ」

〈2〉期待値が低い・喜ばれないという気持ちにならないように付け加える

「〇〇でいいよ。というか、〇〇だったらうれしくなっちゃうなという感じなんだけど」

〈3〉能力・労力・手間などを低く評価しているわけではないと伝える

「〇〇でいいよ。というか、作るのが大変なのを知ってて、お願いしちゃってるんだけど」

藤田さんは、「コミュニケーションは相互作用で進展していくもの。一方が暴言を吐けば、相手の怒りに触れてしまいます。わずかであっても不快と感じる言葉の行き違いを放置すれば、取り返しのつかない対立になりかねません」と忠告します。

妻に日頃の感謝やねぎらいを言葉で伝えることが夫婦関係の満足度を高めるコツとも。藤田さんは、夫から妻にプレゼントしてほしいフレーズ例を教えてくれました。

「育児も大変なのに、手際よく食事を作れるって、実はすごいことだよね。俺には絶対無理だと思うから、本当に尊敬している。こんなにやってもらえるのは、当たり前のことじゃないし、とても幸せだと思っている。いつもありがとう」

使い慣れない言葉ばかりで、口が回らないという人もいるかもしれません。でも、練習を重ねれば、立て板に水のようにすらすら言えるようになるそうです。妻の怒りを収めるには、普段からの努力が必要なのです。

(読売新聞メディア局 鈴木幸大)

【紹介したトピはこちら】
「夕食は~″で″いいよ」という旦那

村上芽
藤田 尚弓 (ふじた・なおみ)
コミュニケーション研究家

株式会社アップウェブ代表取締役。早稲田大学エクステンションセンター講師。全国初の防犯専従職として警察署に勤務し、防犯関連のコミュニケーションデザインを担当。大学院客員教授、専門学校講師の経験を生かし、コミュニケーションをテーマとした講演、テレビのコメンテーター、コラム執筆、企業研修などを中心に活動。著書に「NOと言えないあなたの気くばり交渉術」「悪女の仕事術」(いずれもダイヤモンド社)など。

藤田尚弓オフィシャルサイト

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