スパイス嫌いの女子大生、10代で「印度カリー子」になった理由

スパイスショップや料理教室の運営など、多彩な活動を繰り広げるスパイス料理研究家の印度カリー子さん(24)。テレビ番組にも出演するなど、注目度が高まっています。どんな女性なのでしょうか。

2週間で重版決まるレシピ集

カリー子さんは今年1月に、自身9冊目となるレシピ集「一肉一菜 スパイス弁当」(世界文化社)を出版しました。スパイス4種をまぶした「鮭のバターソテー」や、スパイス入りのヨーグルトに漬けた豚こま肉を揚げ焼きにした「カリカリ豚こま」など、スパイスを使ったおかず約70品の作り方を紹介しています。

「一肉一菜 スパイス弁当」(世界文化社)より。(左から)鮭のバターソテー弁当、タンドリーチキン弁当

スパイスの効果や使い方を説明したページを設けたほか、おかずごとの冷凍・解凍方法の解説をはさむなど、分かりやすい内容が魅力です。「簡単に手に入る食材や調味料を使って作れる」などと評判を呼び、発売2週間で重版が決まりました。

カリー子さんは、レシピ提案のほかにも、スパイスセットの販売など、初心者に向けた活動に力を入れています。「スパイスは恋人。『明日は何を作ろう』と考えるだけで、デート前日のようにワクワクして朝起きるのが楽しみになるんです」。目を輝かせて語るスパイス愛にあふれた姿が印象的です。

スパイス嫌いの女子大生、魔法にかかる

スパイスとの出会いは、大学1年生の春。インドカレーにはまり、週に2、3回は食べに出かけていた姉のために、スパイスカレーを作ってあげることにしました。

元々香りが強いものが苦手で、難しそうなイメージもあったため、スパイス料理を作るのは避けていたそう。ところが、いざ挑戦してみると、三つのスパイスで簡単にチキンカレーが完成したのです。

「スパイスをほんの少し振りかけただけで、本格的なカレーの香りが鍋から漂ってくる。それはまるで魔法のようで、『なんの変哲もない見慣れたキッチンから、とんでもないものが生まれてしまった!』と感動しました」

おいしさを超えた感動を味わい、カレー作りに没頭する日々が始まりました。その一方で、スパイス製品は初心者にとって「親切でない」と感じていたといいます。

スーパーなどの売り場には、スパイス各種の使い方や特徴についての説明書きがなく、瓶が整然と並べられているだけ。複数のスパイスを少しずつ試してみたいと思っても、売っているのは1瓶サイズの製品ばかりでした。複数買うと1000円以上かかるなど、「お手軽にそろえられるもの」とは言いがたかったからです。

カリー子さんは、製品の買いづらさが敬遠される大きな原因ではないかと分析。使い切りのスパイスセットを作って友人や親に配ったところ、もう一度作ってほしいという声を多くもらいました。需要を確信し、製造委託先などを急いで探して1年もたたないうちにネット販売にこぎつけました。

「10代でも作れる」がアピールになる

販売を急いだ理由について、「どうしても10代のうちに始めたかった」と、カリー子さんは振り返ります。

自身がそうだったように、スパイス料理は作るのが難しそうと思われがちです。料理歴の浅い10代の学生でも作れるとアピールすれば、主婦や料理好きな人も手を伸ばしやすくなるのではないかと考えたのでした。レシピなどを掲載するブログも開設。インパクトのある名前で活動しようと、「印度カリー子」という名前を選びました。

予想は当たり、初心者や主婦を中心にスパイスセットは売り上げを伸ばしました。翌年には東急ハンズなどにも製品を卸すように。人気の高まりを受けて、2019年には製造を委託している障害者施設が、スパイスのためだけの工場を新設することを決めました。それをきっかけに、カリー子さんは同年秋、ネットショップを法人化しました。

スパイスはダイヤの原石

自身は、19年に東大大学院に進学。この春まで、食品科学の観点からスパイスの効果について研究していました。「スパイスは健康にうれしい効果が期待され、科学的な研究も進んでいます。10年後、20年後にはもっと需要が高まるはず」とカリー子さん。

スパイスを「ダイヤの原石」と表現し、「発展途上の分野なので、磨けば磨くほど新しい魅力を見つけることができて、ずっとわくわくしています。一人でも多くの人がスパイス料理を楽しめるよう、これからも啓発活動を続けていきます」と力を込めました。

(読売新聞メディア局 森野光里)

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印度カリー子(いんど・かりーこ)
スパイス料理研究家

 1996年生まれ、仙台市育ち。スパイス初心者のための専門店「香林館」代表取締役。東京大学大学院で、食品科学の観点から香辛料の研究に取り組む。スパイスセットの商品開発・販売をするほか、大手企業とのレシピ開発・マーケティング、コンサルティングなど幅広く活動している。著書に「おもくない! ふとらない! スパイスとカレー入門」(standards)、「ひとりぶんのスパイスカレー」(山と渓谷社)、「おいしくやせる! 簡単スパイスカレー」(青春出版社)など。

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