アミマーさんが手がける三陸のニットブランドとは?

三陸発のニットブランド「テトリコット」は、ほっとするような優しい風合いの手編みが特徴だ。編み手は東日本大震災で被災した女性たち。宮城県南三陸町の避難所などで支援活動として生まれたニットは、あの日から10年を迎えるいま、プロの手仕事として注目されている。

ぬくもりあふれる手編みの帽子や手袋、バッグ――。テトリコットで扱う毛糸は、海外の有名ブランド向け素材も手がける「佐藤繊維」(山形県寒河江市)で紡績し、東北沿岸部の被災女性らでつくる「ハートニットプロジェクト」のメンバーに届けられる。女性たちは自宅などで一つ一つ手編みで製品を作る。

「テトリコット」(tetricot)という名前は、「te」(手)と「tricot」(フランス語で「ニット」)を組み合わせた。また、「tri」はラテン語で「3」を意味し、三陸地方のほか、佐藤繊維と編み手の女性、ハートニットプロジェクトの3者が「手を取り合うこと」を表しているという。

被災地の笑顔編み込んで

10年前、ハートニットプロジェクトを始めたのは盛岡市の松ノ木和子さん(69)だ。

震災直後から沿岸部の避難所などに毛糸を届け、被災女性らに編み物を教えた。自宅や家族、仕事を失いぼう然とする姿に胸を痛め、「手仕事を通じて生きがいを見いだしてほしい」と願ったからだ。避難所では男性らが、がれきの撤去作業などに出かけていく一方で、女性の多くは手持ちぶさたで過ごしていることも気になっていた。

「アミマー」の女性と佐藤さん(左)(佐藤繊維提供)
「アミマー」の女性と佐藤さん(左)(佐藤繊維提供)

「ニットでハートをつなごう」。そんな思いを込めて活動をハートニットプロジェクトと名付けた。作品は復興支援イベントで販売し、売り上げを全て「アミマー」と呼ぶ編み手に渡し、自立を支援した。

テトリコットの編み手である南三陸町の西城たえ子さん(71)は「編み物に心が救われた」と話す。慣れ親しんだ景色が津波によって一変した。ひどく落ち込みふさぎ込んだ時期もあったが、「夢中で編んでいる時だけは、心の空洞を埋められたんです」。

地道に販売を続けることで編み手の技術が向上し知名度も高まった。英国のブランド「マーガレット・ハウエル」からもニット小物の製作依頼があった。「今は、この帽子をかぶってくれるのはどんな人かしらと想像しながら編むのが楽しい」と西城さん。

「ボランティアではなく、ビジネスとして確立させたい」と松ノ木さんが模索していたときに、佐藤繊維社長の佐藤正樹さん(54)から賛同を得た。「東北の仲間として三陸産ニットを通じて新たな時代を作りたい」と佐藤さん。試作を重ね2019年にテトリコットが誕生した。商品のデザインなどの打ち合わせで、佐藤さんも定期的に南三陸を訪れている。「毛糸を前にすると、アミマーさんたちの目が輝く。この仕事に誇りを持っていることが伝わってきます」。1年あまりで納品した小物は680点にのぼる。

震災直後は避難所に毛糸を届けていた(松ノ木さん提供)
震災直後は避難所に毛糸を届けていた(松ノ木さん提供)

震災に傷ついた心を癒やしてきた編み物が「仕事」となり、自信や責任感を生み、より強く生きる力を与えてくれた。「これからも変わらないエネルギーを持ち続けたい」と松ノ木さん。復興した三陸で、アミマーの女性らが一流の職人として活躍の場を広げる姿を思い描いている。(読売新聞生活部 福元理央)

テトリコットに関する問い合わせ先は、サトウエススクエア(03・6805・0383)。

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