被災地の女性が作るガラスアクセサリーが輝く理由

花や水滴、月の光――。四季折々の自然などから着想したガラス製のアクセサリーはどれも繊細で優雅、独特の輝きを放つ。手掛けるのは、耐熱ガラスメーカー「HARIO」(東京)のアクセサリーブランド「HARIOランプワークファクトリー」。東日本大震災の発生から、まもなく10年。震災で一時、避難指示区域となった福島県南相馬市小高区に、生産拠点のひとつとなっている工房がある。

2月上旬、工房を訪ねると、女性たちが高温のバーナーでガラス棒を溶かし、ペンダントトップを成形していた。集中力が求められる細やかな作業。作り手のひとり、佐川美和子さん(32)は「根気が必要だが、それ以上にやりがいがある」と話す。

水滴をモチーフにしたHARIOランプワークファクトリーのアクセサリー(同ブランド提供)

「相馬野馬追」もモチーフに

工房は2016年6月に開設された。東京電力福島第一原子力発電所から20キロ圏内にある小高区。東日本大震災で避難指示区域となっていたが、同年7月の解除を見据えて、復興事業に取り組む「小高ワーカーズベース」の社長、和田智行さん(44)が、雇用の場を確保しようと、HARIOに協力を求めた。「HARIOとご縁ができたのは本当に偶然だった」と和田さん。知人を介し、同市にボランティアに来ていたHARIOランプワークファクトリーの職人を紹介してもらったことがきっかけになったという。

HARIOは震災時、茨城県内の工場が被災。停電により窯の中で固まってしまったガラスの活用策としてアクセサリー作りを始めていた。和田さんは「地域の将来を担う若者や女性が帰還したくなるような働く場になると思った」という。

アクセサリー作りに取り組む地元の女性たち(福島県南相馬市で)

工房で働く作り手は地元の女性など6人。皆、ガラス細工の経験はなく、HARIOで研修を受けるなどして、技術を習得した。月換算で平均1500個を手作りしている。現在の工房は、大きな窓があり、作業している様子が外から見える。和田さんは「女性たちが生き生きと仕事をしている風景を町の中に作りたかった」と説明する。

技術の向上に伴い、19年3月には工房のオリジナルブランド「イリゼ」を設立した。地域の伝統行事「相馬野馬追」や、3市町合併前の小高町の花「紅梅」などに着想を得たアクセサリーは、地域住民にも人気だ。工房には、イリゼの製品などが購入できるギャラリーショップを併設している。

ガラス棒をバーナーにあて、アクセサリーの部品を成形する

イリゼは、フランス語で「虹色に輝く」という意味を持つ。「使う人と作る人、双方が光り輝くようにという思いを込めた」と和田さん。ものづくりを通じて、今なお途上の復興を後押しし、地域を明るく照らしていくつもりだ。(読売新聞生活部 山村翠)

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