アーノルド・ローベル展…「がまくんとかえるくん」誕生の舞台裏

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仲良しのふたりのかえるの物語「がまくんとかえるくん」で知られる絵本作家、アーノルド・ローベル(1933~87)。その生涯を振り返る日本初の展覧会が東京・立川の「PLAY!  MUSEUM」で開催されています。

自由自在な作風

ローベルはロサンゼルス生まれ。生後間もなく父親が家を離れ、ニューヨーク州の母方の祖父母に育てられるなど、苦難の多い幼少期を過ごしました。病気がちで学校嫌いでしたが、間もなく絵の才能を発揮するようになり、ニューヨーク・ブルックリンの美術大学へ進学。若くして結婚し、子供ができたこともあり、卒業後はしばらく広告の仕事に携わっていました。

アーノルド・ローベル(1972 年頃)Courtesy of the Estate of Arnold Lobel. (c) Adam Lobel.

政府が推進した教育制度改革に伴い、アメリカの絵本市場が急速に拡大。ローベルもその波に乗る形で1962年、29歳の時に「マスターさんとどうぶつえん」という作品で絵本作家デビューを果たしました。この本がニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞を受賞するなど、アーティストとして当初から高い評価を得たのです。

『ふたりは きょうも』(1979)表紙下絵Courtesy of the Estate of Arnold Lobel. (c)1979 Arnold Lobel. Used by permission of HarperCollins Publishers.

会場には「がまくんとかえるくん」以外にも、ローベルの主要作品が初期作から紹介されており、その自由自在な作風に才能のえを感じます。

左・『ジャイアント・ジョン』(1964)試作本  Collection of The Eric Carle Museum of Picture Book Art, Gift of Adrianne and Adam Lobel, The Estate of Arnold Lobel.(c) 1964 Arnold Lobel. 右・『ふくろうくん』(1975)表紙下絵 Courtesy of the Estate of Arnold Lobel. (c) 1975 Arnold Lobel. Used by permission of HarperCollins Publishers.
『よるのきらいなヒルディリド』(1971)原画 Collection of The Eric Carle Museum of Picture Book Art, Gift of Adrianne and Adam Lobel, The Estate of Arnold Lobel. (c) 1971 Arnold Lobel.

「がまくんとかえるくん」ができるまで

「がまくんとかえるくん」シリーズは、順調にキャリアを積んだローベルが、満を持して発表した代表作です。1970年にシリーズ第1作の「ふたりは ともだち」を出版。72年「ふたりは いっしょ」、76年「ふたりは いつも」と続き、79年の第4作「ふたりは きょうも」でシリーズは完結しました。展覧会場でも大きなスペースを取ってこの作品の魅力と成り立ちを紹介しています。

『ふたりは いつも』(1976)「そりすべり」レイアウト Courtesy of the Estate of Arnold Lobel. (c) 1976 Arnold Lobel. Used by permission of HarperCollins Publishers.

子どもに優しい、この美術館ならではのシンプルで柔らかな風合いの展示が作品世界とマッチして心地よい。昨今のせわしない世情をしばし忘れます。

展示風景

一番のみどころは、作品の成立過程を追った「がまくんとかえるくんができるまで」のコーナー。ローベルのスケッチや構想ノート、ページ割り案などが展示されています。編集者との丁々発止のやり取りもメモ描きなどに残されており、妥協のない共同作業で作品が生み出されたことが分かります。絵本作家やイラストレーターを目指す人はもちろん、編集や制作に関心がある人にもぜひ見てほしいコーナーです。

「がまくんとかえるくんができるまで」コーナー

教科書にも取り上げられ、とりわけ知名度の高い「おてがみ」。最後にかたつむりが手紙を届ける場面は、当初の案では、がまくんがひとりで受け取る形でした。

この場面、最終的にはふたりでそろって受け取っています。作品の完成度を高めるために様々な試行錯誤があったのでしょう。

左・「おてがみ」のスケッチ、右・『ふたりは ともだち』(1970) Courtesy of the Estate of Arnold Lobel. (c) 1970 Arnold Lobel. Used by permission of HarperCollins Publishers.

ローベルは家にいることが好きで、家族を大切にしたそうです。妻のアニタも多忙な絵本作家で、ローベルは率先して2人の子育てにも取り組んだといいます。人生の終盤で同性愛であることを家族にカミングアウトし、家を出るという大きな出来事もありました。そして54歳の若さでこの世を去ります。そうした彼の精神世界や境遇が作品とどう関わっているのか、という視点で鑑賞することもできます。

会場ではアニメーション作家の加藤久仁生によるショートムービー「一日一年」も上映されています。「がまくんとかえるくん」の様々な場面を引用しつつ、オリジナルの要素と組み合わせた独自の作品。ローベルの遺族が作品を鑑賞して、「本人が作ったかのようだ」と驚いたほどの出来栄えです。

加藤久仁生「一日一年」2021年Courtesy of the Estate of Arnold Lobel. Frog and Toad Copyright (c) by Arnold Lobel. (c)Kunio Kato.

ファンにはたまらない、グッズコーナーも充実しています。あいにく厳しいコロナ禍の時期に開催がぶつかりましたが、会場には熱心なファンが訪れており、グッズもよく売れています。

グッズコーナー

同展は、ひろしま美術館(広島市)で2021年4月3日(土)~5月23日(日)、2022年春には伊丹市立美術館(兵庫県伊丹市)と、東北地方への巡回が予定されています。「PLAY!  MUSEUM」では「会期末まではまだあり、巡回展も予定されているので、タイミングや場所をみて来場を検討していただければうれしいです」と話しています。

(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)

「がまくんとかえるくん」誕生50周年記念 アーノルド・ローベル展

場所 PLAY! MUSEUM(東京・立川)
会期 3月28日(日)まで
3月7日(日)は、全館休館です。ご注意ください。
緊急事態宣言の期間延長にともない、3月5日(金)までの平日に限り、MUSEUM・PARK・SHOP・CAFEは営業時間を各1時間短縮します。3月8日(月)以降の営業時間については状況を鑑みた上でお知らせします。
詳しくは同展ホームページへ。

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